1980年代、とある舞台が上演され大きな注目を集めた。伝説的な劇団・東京グランギニョルの『ライチ☆光クラブ』である。

昨年の舞台より ©古屋兎丸/ライチ☆光クラブプロジェクト2011
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耽美かつ退廃的で、狂気に満ちたその世界観に魅せられた者は多く、2006年には漫画家の古屋兎丸が舞台を原作にオリジナル描写を加えた漫画『ライチ☆光クラブ』を発表。さらにそれから6年後の2012年、漫画版を原作とした舞台が上演され、舞台は即チケット完売、大いに話題を呼んだ。

9人の若者が織りなす純粋で暴力的な残酷劇(グランギニョル)は、30年近くの時を経て、舞台から漫画、そして再び舞台へと回帰したのだ。

そして2013年12月。

再び『ライチ☆光クラブ』が帰ってくる。昨年、紀伊国屋ホールで上演された舞台の再演である。

キャストは一部変更があるものの、メインとなる9人の出演者は変わらない。表の主人公であるゼラを演じるのは木村了。裏の主人公ともいえるタミヤを演じるのは中尾明慶だ。

二人はこの舞台の再演についてどう思っているのか。
 

「再演をやるって聞かされたのは、前回の舞台の本番中だったんですよ」という木村了。

「二つ返事でハイって答えたものの、いざこうやって動き出してみると今回はどうなるんだろうって楽しみですね」

ひょうひょうとした様子で語る木村だが、初演の前に原作漫画を読んだときは「これをいったいどう舞台にするんだろう」と思ったという。それほどまでに『ライチ☆光クラブ』の世界観は独特だった。

「本当にできるの? っていう心配はありましたね。共演者にしても明慶以外はほぼ初めての人ばかりだったし。だけど、これが舞台になって皆さんの前に出せれば必ず面白いものになるという確信もありました」(木村)
 

そう思ったのは木村だけではない。もう一人の主人公ともいえるタミヤを演じた中尾もまた、「漫画を先に読んで、これどうするんだって思いました」と当時の戸惑いを振り返る。

「正直言うと、たぶん自分では手に取らないタイプの漫画なんですよ。だけど読んでみたらすげーなと。こういう世界観も面白いなって思いました。ただ、演じるとなるとやっぱり最初は大変でしたね」(中尾)

役者として多くの経験を積んできた二人でさえ、困惑するほどの強烈な世界観。しかし木村と中尾は「だからこそ面白い」と果敢に挑戦し、役を自分のものにした。

そうやって上演された『ライチ☆光クラブ』は、原作の世界観を見事に表現しながらも、俳優陣の個性がしっかりと引き出された魅力的な舞台として完成した。