<座談会>ホームシアターシステム担当者が集結 リビングのスピーカーが家庭の「音」の中心になる

2013.12.20 12:28配信
座談会には5社6人の担当者が参加

スピーカーやAVアンプを追加して、テレビの音をグレードアップするホームシアターシステム。各社のマーケティング担当者にお集まりいただき、最新のホームシアターシステム事情と、今後どのように進化していくのかを聞いた。

ホームシアターといえばこれまでは映画ファン向けの高級製品として注目され、主にテレビと接続して利用されていた。しかし、最近はテレビだけではなく、携帯オーディオやスマートフォン、PCなどのさまざまなプレーヤーと接続し、テレビ番組や映画だけではなく、音楽も楽しむなど、使い方が広がっている。

座談会に入る前に、各社のイチオシ製品からホームシアターシステム市場のトレンドをみていこう。今回、座談会に参加してくれたメーカーは、ソニー、デノン(ディーアンドエムホールディングス)、パイオニア、ボーズ、ヤマハの5社だ。

●いま、サウンドバーが熱い

テレビの前に設置するバータイプのスピーカーが人気だ。「サウンドバー」の呼び名で、シアターシステムを最初に発売したのはヤマハだ。そのヤマハが、10月中旬にBluetooth対応の「YSP-1400」を発売した。

「YSP-1400」は、テレビの前に手軽に置くことができるスリムなワンボディスタイルのシアタースピーカー。本体中央の8個の小型高音質ビームスピーカーから音のビームを発して、壁などに反射させることで、5.1chサラウンドを実現する。両端のスタンド部分にある8.5cm大口径ユニットのサブウーファーで、ワンボディでも迫力の重低音を再生する。

バータイプの「YSP」シリーズで初めてBluetoothに対応し、スマートフォンやタブレット端末などに保存してある音楽データをワイヤレスで再生して楽しむことができる。テレビの音はもちろんのこと、音楽を楽しむステレオにもなる一台だ。

パイオニアは、11月下旬にバータイプモデルを3機種投入した。最上位モデルの「SBX-N700」は、ホームシアターシステムとして、初めてディスプレイ伝送技術のMiracastに対応。また、Wi-Fi Direct、YouTube Send to TVに対応し、スマートフォンやタブレット端末に保存している動画や写真、YouTubeの動画などを、ワイヤレスでテレビ画面に映し出すことができる。

Bluetoothにも対応しているので、ワイヤレスで音楽を楽しめる。さまざまな機器とワイヤレスでつながるネットワーク機能を充実させたことで、家庭内の音楽・映像再生のハブとしても使うことができる。

もちろん、音づくりにも妥協はない。バータイプの本体に、ビルトインサブウーファー2基を内蔵して、バースピーカー1本でもパワフルな低音をつくり出す。さらに、付属のワイヤレスサブウーファーを使えば、迫力の重低音を楽しめる。

サウンドバーとサブウーファーのセットといえば、ソニーの「HT-ST7」がある。「HT-ST7」は、サウンドバーに計9個のスピーカーを内蔵し、そのうちメインの7個には、歪みのない伸びやかな音を再現する「磁性流体スピーカー」を採用した。サブウーファーは設置の自由度が高いワイヤレスタイプだ。独立駆動するデジタルアンプ「S-Master」を搭載し、リアル7.1chを実現した。

映画づくりの現場で培ったノウハウを生かして、映画制作者の意図に忠実な音場を再現するサラウンドシステム「高密度 Sound Stage」を搭載。このサラウンド効果を部屋のなかの広い範囲で体感できるように、独自の「波面制御技術」も採用した。これによってサラウンドのスイートスポットが広がり、寝転んでテレビを見ていても、サラウンド効果が崩れない音場を形成する。Bluetoothに加え、NFC(近距離無線通信)に対応し、スマートフォンの音楽を手軽に楽しむことができる。

●スピーカーの上にテレビを置くという新発想

テレビの前に設置するバータイプが主流になっているなかで、スピーカーの上にテレビを設置できる台座タイプのホームシアターシステムが登場している。その一つが、2012年9月発売のボーズ「Solo TV sound system」だ。小さなスピーカーで、バランスのよいしっかりとした音圧を生み出す研究開発に心血を注いできたボーズのDNAを受け継ぐモデルだ。

「Solo TV sound system」は、サラウンドを再生するホームシアターではなく、もっと気軽にテレビの音を迫力あるサウンドで楽しむテレビ専用のスピーカーだ。前面左右の外側のスピーカーをそれぞれ外向きに配置する独自の設計で、広がりのある臨場感たっぷりのサウンドを実現した。独自のデジタルシグナルプロセッサを搭載して自然な音質への最適化を図り、音量の大小にかかわらず、セリフなどの人の声をクリアに再生する。台座タイプなので、テレビの前面に設置するバータイプに比べて存在を主張しない点も特徴だ。

2013年11月には、デノンも台座タイプのスピーカー「DHT-T100」を発売した。「DHT-T100」には、通常の円形スピーカーよりも大きな振動板面積が得られるオーバルウーファーを搭載し、さらに大容量キャビネット構造を採用することで、サブウーファーなしでも豊かな低音を再現する。

リスニングモードは、「ボイス」「ミュージック」「ミュージックワイド」「ムービー」「ムービーワイド」に加え、夜間などに音量を絞っても明瞭で臨場感ある音を再生する「ナイトモード」を備える。Bluetoothに対応し、スマートフォンなどに保存してある音楽を、ワイヤレスで再生して楽しむことができる。

●これからのホームシアターシステムにBluetoothは不可欠

各社の製品をみていくと、Bluetoothに対応している製品が実に多いことに気がつく。家電量販店の実売データを集計している「BCNランキング」のデータでも、Bluetooth対応製品は市場の5割近くを占めるまでに拡大している。Bluetoothは、いまやホームシアターシステムの必須機能になりつつあるのだろうか。その解明も、各社のマーケティング担当者の座談会に委ねよう。

■参加者

・ソニーマーケティング(ソニー)

ホームエンタテイメントプロダクツマーケティング部 ホームオーディオ&エンタテイメントMK課 油井 薫マーケティングマネジャー

・ディーアンドエムホールディングス(デノン)

セールス&マーケティング APACマーケティンググループ 宮原 利温マネージャー

・パイオニアホームエレクトロニクス(パイオニア)

事業企画部 マーケティング部 マーケティング2課 覚前 克彦主事

・ボーズ

マーケティング本部 ブランドマーケティング部 硲 夏希担当部長

・ヤマハミュージックジャパン(ヤマハ)

AV・流通営業本部 企画室 藤井 陽介プロダクトマネージャー

同 臼井 彩プロダクトマネージャー

油井(ソニー) Bluetooth対応は、ホームシアターシステムが、リビングルームで幅広く音を楽しむためのスピーカーとして利用されるために必要な機能です。レコードやCDが減り、音楽のネット配信が増えているなかで、一昔前のように、リビングで手軽に音楽を鳴らすミニコンポのようなオーディオ機器の存在が薄れつつあります。そんななか、リビングでテレビや他のオーディオを1台で全てまかなえるホームシアターは、大変便利で、スマートフォンや携帯オーディオの音楽をワイヤレス接続できるBluetooth対応が、必須だと考えています。

覚前(パイオニア) 私もそう思います。加えていうと、「ホームシアターシステム」という呼び方だから、敷居が高いように受け取られるし、使うシーンも限定されるような印象を与えているのではないでしょうか。だからパイオニアは、あえて「リビングサウンドシステム」という呼び方で、リビングで音を楽しむためのスピーカーであることを前面に打ち出しています。接続できるものは全部つなぐことができて、音を楽しんでもらえるスピーカー。Bluetooth対応もそのための機能の一つといえます。

宮原(デノン) リビングに置くオーディオ機器は二つも三つも必要なくて、一つあればいい。そういうオーディオ機器として、ホームシアターシステムがあるということです。私たちオーディオメーカーからすると、リビングに進出していくために、テレビのスピーカーという姿を借りているともいえますね。

藤井(ヤマハ) 音楽をスマートフォンや携帯オーディオで楽しむ人が増えたことで、もっといい音で聞きたいというニーズは高まっています。一方、スマートフォンや携帯オーディオなどへの搭載が進んだことで、Bluetoothによるワイヤレス接続が一般的な機能になってきました。そうなると、スマートフォンや携帯オーディオの音楽をワイヤレスで転送して、高音質スピーカーで聞きたいという人も増えます。ですから、ホームシアターシステムがリビングのオーディオ機器になるためには、Bluetooth対応は重要な要素でしょう。

宮原(デノン) Bluetoothで接続というと、かつては電話用ヘッドセットを使用するイメージで、なかなかオーディオ機器には浸透しなかったのですが、スマートフォンや携帯オーディオで対応が広がった影響は大きいですね。Bluetoothによるワイヤレス転送時の音質も向上していて、高音質のサウンド圧縮規格も登場しています。当社の「DHT-T100」が対応しているaptXコーデックもその一つで、Bluetooth接続での低遅延とCDクオリティの高音質を実現しています。

覚前(パイオニア) ただ、Bluetoothで転送できるのは、サウンドデータに限られます。スマートフォンなどのなかには、映像コンテンツも豊富に保存されているはず。せっかくテレビとつながるホームシアターシステムなのですから、音だけなく、映像もワイヤレス転送ができて、テレビ画面で楽しめるようにしたいですよね。そうなるとBluetoothだけでなく、MiracastやWi-Fi Directといった機能も必要になってくるわけです。

臼井(ヤマハ) スマートフォンの存在は大きい。当社は「YSP-1400」専用のコントロールアプリ「HOME THEATER CONTROLLER」のiOS版とAndroid版を開発しました。このアプリには、「YSP-1400」の音量調整や入力切替えはもちろん、サラウンドプログラムの切替えや、視聴環境に合わせてサラウンド効果が最大になるように自動調整する機能などを備えています。Bluetooth対応に加えて、スマートフォンユーザーにより利便性の高い使い勝手を提供していくことも、これからのホームシアターシステムでは必要になってくるでしょう。

●ハイレゾ音源への対応など、いい音の追求には各社各様の味つけも

「音」といえば、最近は音楽CDを超える音質を実現した「ハイレゾリューション音源」が注目されている。ホームシアターシステムで音楽を聴くことが一般的になると、将来はハイレゾ音源の対応も必要になってくるのだろうか。

油井(ソニー) 当社は最新の「ウォークマン ZX1/Fシリーズ」でいち早くハイレゾ音源に対応して、「ハイレゾといえばソニー」を打ち出しています。歌と歌の合間のわずかな息づかいや弦楽器の弦の上を指が滑る音など、本来録音されているのに従来のCDや圧縮音源などでは再現できなかった音が、ハイレゾ音源なら失われずに聞くことができます。音の立ち上がりの際立ちや情報量の豊かさが明らかに違っていて、音楽のクオリティについての概念を変える感動が味わえるはずです。

宮原(デノン) ハイレゾをサウンドフォーマットの一つと捉えて、それに対応することが付加価値を高めるのは間違いありません。さらにつけ加えるなら、ジッター(デジタル信号の伝送時に生じる時間軸方向のずれや揺らぎ)による音の乱れを低減させるために、信号伝達回路を独立制御するなど、ハイレゾ音源が生きてくる高音質なオーディオ技術も求められてくるでしょうね。

油井(ソニー) レコーディング時のマスター音源は、CDを上回るハイクオリティなレベルで記録されている事が多く、それをCD化する際、CDが記録できるレベルに合わせてきたのが、これまででした。それがブロードバンドのインターネットが普及したことで、CD化せずに、限りなく原音に近いクオリティのままで配信できるようになってきたわけです。そうしたハイレゾ音源の音楽コンテンツがもっと増えていけば、「いい音で楽しみたい」というニーズが今以上に高まるはずです。そうすれば、毎日のテレビや映画・音楽も、ホームシアターを使って、いい音で楽しみたいというお客様がもっと増えると思います。

藤井(ヤマハ) クオリティの高い音を提供するためのアプローチには二つの段階があって、バータイプのホームシアターシステムが担うのは、その最初の段階だと思います。それはつまり、手軽にスピーカーを追加するだけで、それまで聞いていたテレビの音が劇的に変わるという体験を味わってもらうことです。

臼井(ヤマハ) ホームシアターシステムでテレビの音がレベルアップして、映画や音楽もこれまでよりいい音で楽しめるようになってくると、ユーザーは「もっとクオリティの高い音」を求めるようになるでしょう。そうなると、今度は本格的なオーディオシステムの出番で、クラシックやジャズ、ポップスなど、それぞれのジャンルにこだわった音づくりに関心を向けていただけるのではないかと期待しています。

硲(ボーズ) だからこそ、最初のきっかけとなるホームシアターシステムは、設置が簡単で価格も手頃なものでなければなりません。とにかくまずはリビングに置いて、それでテレビの音を聴いてほしいのです。ボーズの製品が、面倒な設定を排して誰でも簡単に使えるようにしているのはそのためです。特に何も設定しなくても、人間の耳で聞いて心地よいと感じる音づくりに力を入れています。

覚前(パイオニア) 音づくりには、いってみれば各社各様の味つけがありますよね。当社は、まず音の位相を揃えて、そのうえで音源制作者の意図をできるだけ忠実に反映する音づくりを心がけています。

油井(ソニー) 当社は、カテゴリー毎に顔となる熟年の担当エンジニアが柱となり、旬なコンテンツに加え、毎回同じリファレンスとするCD、BDを用い、耳で聴いて最終的なチューニングを施していきます。

藤井(ヤマハ) 最終的に人の耳で聞いて決める、というのは、各社とも同じだと思います。当社も製品ごとに担当者がいるのですが、なぜかどの製品も最終調整した音は、ヤマハが考えるナチュラルサウンドにまとまっています。このあたりがメーカーごとのカラーといえるでしょうか。

●家庭内で響くサウンドのハブとしてのホームシアターシステム

今後、ホームシアターシステムはどのような進化を遂げていくのだろうか。各社が考える今後の製品をたずねた。

宮原(デノン) デノンは、機能を優先するのではなく、ユーザーの使いやすさを突き詰めていくなかで、音質とのバランスを取っていくことが重要だと考えています。また、欧米では、ハイレゾ音源をストリーミング配信で楽しむ音楽サービスの人気が高まりつつあるので、そうしたニーズにも対応したいですね。

覚前(パイオニア) ホームシアターシステムに絞っていえば、ユーザビリティを高めて、より簡単に、より楽しく使っていただけるような製品を提供することで、日常のなかで音に包まれる体験を次のステップへとつなげていければと考えています。パイオニアはカーオーディオも手がけていますから、オープンエアで空気を振るわせて聴く音のすばらしさを、より多くの人に知ってもらいたいですね。

藤井(ヤマハ) ヤマハは、リビングに置いてもらえるデザインと、誰もが使えばわかる音のよさが、ホームシアターシステムには不可欠ではないかと思うのです。そのうえで、オーディオシステム全体についていえることですが、多様な音の楽しみ方に対応していく必要があるでしょう。ステレオでレコードをかけていた世代の方もいれば、音楽をスマートフォンにダウンロードしてヘッドホンでしか聞いたことがない世代もいて、世代ごとに音楽体験はずいぶん異なります。そうした多様な音楽体験に寄り添った製品の提案が求められていくのではないでしょうか。

油井(ソニー) ホームシアターシステム普及の鍵として着目しているのは、スマートフォン、4K、ゲームの三つ。音楽を聴くトレンドとして、スマートフォンで音楽を聴くスタイルが広まり、外ではヘッドホン、家ではBluetoothスピーカー、ということで、この二つの業界が活況です。ホームシアターも、Bluetooth対応モデルがシェアを伸ばしています。一方、テレビの環境として、更なる高画質化を提供する「4Kテレビ」の本格普及により、映像の精細感や画面の迫力に比べて音の臨場感がもの足りないと感じるようになるはず。加えて、7年ぶりのリニューアルを果たす「PS4」、人気ゲームの多くが、5.1chサラウンド音響で製作されると思われます。既に「PS3」のソフトでも、ゲームの世界を存分に楽しむには、5.1chサラウンドが必須とも思えるソフトも多数あり、これらが、益々いっそうホームシアターシステムへの追い風になると考えています。リビングで、テレビもスマホやPCの音楽も1台で楽しむことができるホームシアターシステムの良さが、一層広がると確信しています。

硲(ボーズ) ボーズとしては、生演奏の音の臨場感や気持ちよさを再現して味わってもらいたい、ということで一貫しています。CDが売れない時代といわれますが、音楽はみんな聴いているわけで、その聞き方がヘッドホンやモバイルスピーカーなどを使ったものになっている、いわば、音楽がパーソナライズ化されているのだと思います。ホームシアターシステムは、テレビまわりの音を切り口に、個人で楽しんでいる音を家族で共有する楽しさへと広げていく、家庭内のサウンド環境のハブになる存在なのではないでしょうか。そのための工夫を、これからも推し進めていきたいと考えています。

かつてはステレオやミニコンポなど、部屋の空気全体を振動させて音楽を楽しむオーディオ機器が多くの家庭にあった。いまは、インターネット配信の音楽を、スマートフォンや携帯オーディオに入れてヘッドホンで聴く経験しかもたない人が増えている。バータイプを中心にホームシアターが普及することで、部屋の空気全体から音を感じられる環境が、再び家庭に戻ってくるかもしれない。(フリーライター・榎木秋彦)

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