「何これ?」なメニューの数々に目移り
一通り机回りで遊んだところで「あぁそうだ、飲み物頼もう」と思い出し、メニューを開いたらびっくり。見たことのない珍しいものばかりなんです。
松葉を燻して香りをつけたラプサンスーチョンという紅茶や、モンゴルの遊牧民のお茶からインスピレーションを得た乳茶など、ページをめくればめくるほど目移りして決められない…。
なんとか選び抜いて注文したのが「キャラメル・ヴァニラ」というフレーバーの紅茶。キャラメルの香ばしさとヴァニラの甘味が優しくて、心が休まります。
店主の渡邊さんによると、メニューはあえて珍しいものを多く揃えているそう。
「メニューの名前で1回、1口飲んでもう1回ひっかかるようなメニューづくりを心がけています。普通にオレンジジュースを頼んでも、予想通りの味で、何の驚きもなく流してしまいますよね。メニュー名はもちろんのこと、風味づけもスパイスが強かったり、すごく甘かったり、あえてちょうどいいラインを超えるくらいの癖が強い味にしてるものも多いです」(渡邊さん)
自由に読める「蔵書」の、幅広いセレクション
店内には読書館の名前にふさわしく、自由に読める蔵書が並ぶ本棚があります。ジャンルは絵本や旅本、画集や写真集など、バラエティ豊かでおもちゃ箱のような本棚です。
題名を見てなんとなく気になった本を手に取り、座席でゆったりと楽しみました。
「蔵書は僕の個人的なコレクションを持ち込んでます。部屋が本だらけだったので…(笑)。パッと開いてすぐに入り込めるような、どこから読んでも楽しめる本を中心にセレクトしているので、画集や写真集、絵本など、文学だと短編や詩集が多いです」(店主・渡邊さん)
安らぎと覚醒。不思議な時間で見つけたもの
しばらくすると、お店の雰囲気に感化されてか、色々な考えが頭の中を巡ります。
これからどんな人生を歩みたいか考えたり、普段あまり辿り着かないような哲学的な思考になったり。そしてこの場所では、まとまりのない考えも、そのまま許されるような感覚がしました。
「自分の中にこんな感情や思考が眠っていたんだ」と静寂の中で驚いたときは、視界スッキリしたようで心地が良かったです。リラックスしつつも、自分の中で眠っていた部分が起こされるような感覚。瞑想やヨガ、サウナの後の爽快感と似たものを感じました。
こんな風に自分と向き合う時間も、忙しい現代社会では忘れてしまいがち。とても不思議で貴重な時間でした。
定期的に「アール読書館」に帰ってきたい
ボーンという古時計の音で我に返り時計を見ると、あっという間に2時間が経過していました。
「すごく有意義な時間が過ごせたなぁ…」と清々しい気持ちでお店を後にしました。都内にこうして心が安らぐ場所があるということ自体が、心の支えになる気がします。
「お店の今の雰囲気とスタンスは守っていきたいです。時代が進めば進むほど、より必要とされる場所なんじゃないかと思っているので。今後の企画として、飲食物じゃないメニューを増やしてみたいなと漠然と考えています。今もお手紙セットは用意しているんですが、こういったメニューのバリエーションを増やしたいですね」(店主・渡邊さん)
静かに本を読みたい人はもちろん、「最近余裕がないなぁ」と感じている人もぜひ行ってみてくださいね。