やかん入りマッコリとテーブルいっぱいのつまみ、2人で4,200円!
全州といえばマッコリ。そんなイメージが日本で定着したのは、筆者が『マッコルリの旅』(東洋経済新報社)という本を書いた2007年頃だったと記憶している。
全州市郊外の三川洞(サムチョンドン)にあるマッコリタウンの存在が日本でも知られるようになったからだ。
250メートルくらいの坂道の両脇にマッコリ酒場が10数軒集まっているマッコリタウンは、独特の業態で人気がある。やかん入りのマッコリを頼むと、20皿前後のつまみが付いてくるのだ。
やかんマッコリをおかわりすると、さらに質のよいつまみが追加される。
品数の多さをウリにする店、料理を3~4品に絞って質で勝負する店など、多少の個性はあるが、物価の高いソウルや釜山、あるいは外国から来た者にとっては、大変なもてなしに思える。
今回はタクシー運転手さん数人への聞き込みを参考に、「トゥヨイン」という店を選んだ。
2人用のセット(コップルサン)が38,000ウォン(約4,200円)で、やかんマッコリ追加は18,000ウォン(約2,000円)。
やかんはコロナ前に行った店と比べだいぶ小さいが、つまみがすごかった。
品数はざっと30。主役は、蒸し牡蠣、ヤンニョムケジャン、サムゲタン、カレイの揚げ焼きだ。一品一品が専門店級とはいえないものの、家庭料理水準は満たしていて、マッコリをガブカブ飲むにはじゅうぶんなつまみだ。
肥沃な穀倉地帯と滋養豊かな海の幸を産む干潟を擁する全羅道(全羅北道と全羅南道)には、農耕文化を基盤に米一粒、豆ひとつを分かち合って食べる美風が今も残っている。
テーブルいっぱいのつまみを供するマッコリ酒場も、そんな美風と無縁ではない。
全州をはじめとする全羅北道を訪れたら、ぜひマッコリ酒場を体験してほしい。
※取材協力:全羅北道 文化体育観光局 観光産業課
(つづく)