レースカーに隠された秘密

ニュルブルクリンク24時間耐久レースに出場するレースカーは、変わっているのは外見だけで、実は中身は市販車とほとんど変わらない。エンジンに至っては市販車のエンジンを多少改造したもの。ニュルブルクリンクは前述したとおり、一般道路に近いサーキットなので、そこにもてあそぶだけのGT向け大馬力のエンジンはいらないとの結論だ。

それよりも24時間無事に走りきってくれる信頼性について、辰己は「結局いきつくのは、試行錯誤して造り込んだ市販車の部品が、最高の信頼性を持っているということ」と言う。そしてそれがレース勝利への最重要ポイントだと考えている。

現にSUBARUは参戦してから、「6年連続完走」の快挙を成し遂げている。部品の一つ一つに最高の信頼性がなければできないことであることは間違いない。

「選べるなら、なるべく量産品を使う。レースのためだけに作られた部品は、24時間走っている中で、壊れないかハラハラさせるよ。量産品にはそれがないから安心だね」

このように辰己が言う意味を、筆者はこう解釈する。ノーマルパーツ(量産品)の性能に絶対の自信があるからレースに使う。それがドライバーに安心感を与えて、「この部品は大丈夫だろうか、あの部品は大丈夫だろうか」と、ドライバーが潜在的に感じるハラハラ感からくる操縦ミスを減らしてくれる。

確かに24時間保たない部品がどうやって、より様々な環境に置かれる市販車に使われて10年10万キロ以上、保つことがあろうか。
 

日本車の底力を結集。そこにドラマが……

左から、吉田寿博氏、辰己英治監督、佐々木孝太氏

今年のニュルブルクリンク24時間耐久レースには、現在はトヨタ、ニッサン、今年からはマツダもロードスターで参戦する。そして辰己はライバル関係にある日本他メーカー参戦を大いに歓迎している。

「例えば、トヨタさんはうち(SUBARU)より比較にならないくらい、でかい影響力をもっている。そのトヨタが参戦するというのは、実は日本の自動車メーカーが活気づく要素なんですよ。日本車ファンがいなかったら、レースはただ車が走っているだけの茶番劇にすぎない」

たしかに、その通りだ。見てくれる人がいなかったら、テストコースを走っているのと、全く同じつまらないものになるだろう。辰己は続ける。

「SUBARUの市販車ベースの車が24時間走り続けるそのドラマを楽しんでほしい。ただ車は『たすき・バトン』に過ぎない。人間のドラマがそこにあるんだよ。

裏方だけど、メカニックの活躍も是非見てほしいな。今年は12名中、6名を全国のSUBARUディーラーの現役メカニックから選抜した。普段はディーラーで整備を黙々とやっているメカニックが24時間のうち、たった1秒を削る思いで、タイヤ交換する生き様を見てほしいね。ドライバーもアスリートだけど、メカニックもアスリートである必要があるんだよ」