また、ゴーリーがヒレア・ベロック(1870-1953)という作家の作品に、何とも傑作な挿絵を描いたエセ教訓物語『悪いことをして罰が当たった子どもたちの話』(河出書房新社)という絵本も、中々面白いです。

 

<ジム 乳母からにげてライオンに食われた子の話>から始まり、<ヒルデブランド 通りかかった自動車におびえて理をさとされた子の話>まで、「悪いことをした子供には残酷な運命が待つ」という訓話を、ゴーリー風味で味付けしたお話が描かれています。

絵本の中の悪いことをした子供たちには、残酷な運命が待ちうけていましたが、実際に悪いことをし続けてきて大人になった私たちは、今もこうして死ぬことなく、生き続けていますよね……。大人の痛い所をチクチク突いてくる、たっぷりと皮肉が効いたお話です(笑)。

エドワード・ゴーリーの作品は、まさに「大人のための絵本」で、子どもには見せてはいけない残酷さも確かにあるのですが、ごく細い線で描かれたモノクロームの質感のイラストと、救いがないブラックで奇妙なストーリーが、心のどこかに引っかかって、何度でも読みたくなる魔力を持っているのも事実です。

「絵本や教科書には“お手本のようなあるべき姿”がいつだって描かれているけれど、実際そんなお手本に従って生きている人って、この世にどれだけいるのだろうね?」

ゴーリーはそんな風に、私たちにニヤリと笑いながら、語りかけているような気がしてなりません。