ファミマ×ドンキが共同運営する「ファミリーマート 世田谷鎌田三丁目店」が6月29日にリニューアルオープン

もしもファミマがドンキだったら── ドンキホーテホールディングス(ドンキ)とファミリーマート(ファミマ)が展開する共同実験店舗は、そんな「もしも」を現実にしたコンビニだ。ドンキの商品が置いてあるだけではない。衝撃価格、目を引かれる商品提案、競合を意識した品揃えなど、ドンキのエッセンスが狭い箱の中に凝縮されている。共同実験店舗の3店舗目となる「世田谷鎌田三丁目店」(東京・世田谷区)から、緻密な計算の上に成り立つ売り場の工夫を解き明かす。

ドンキのノウハウを狭い店内に凝縮

「ファミリーマート 世田谷鎌田三丁目店」は二子玉川駅から徒歩で20分、バスで5分の距離にある。売場面積は約43坪。来店客は地域の住民がほとんど。周辺にはドラッグストア、イートインコーナーが充実したローソンがある。

新業態ではあるが、看板の隅に小さく「PRODUCED BY ドン・キホーテ」という文字が記載されている以外、外観はほとんど通常のファミマと変わらない。何も知らない来店客であれば、入口の壁に沿っていくつかのワゴンが出ていて、「おや?」と疑問をもつかもしれない。

しかし、入口をくぐると、すぐに他のファミマとの違いに気づくことになる。正面に現れるのは、天井まで積みあがったお菓子の山。箱のまま大量に並べられた陳列や棚からぶら下げられた商品は、どこか駄菓子屋を想起させる。これはドンキではおなじみの来店客を足止めするスポット商品棚のファミマ版で、脇にはドンキで使われている什器と同じものがある。

コンビニの棚は同じ方向に平行して並んでいるのが一般的だが、このスポット商品棚は横ではなく縦向きに設置されている。ドンキは動線を複雑にすることで店内を回遊させる仕かけを得意としており、これはそのショートバージョンといえそうだ。

価格帯も幅広く 来店客の選択肢を最優先

一般的なコンビニだと、入口側の通路にはイートインコーナーや雑誌コーナーがあるが、世田谷鎌田三丁目店はリニューアルのタイミングで撤去。雑誌は売れ筋のみ残し、レジ前に移動した。代わりに並んでいるのは、洗面所やキッチンで利用する日用品、コスメ、ケーブルや充電器などの家電商材だ。

特筆すべきは、品揃えの多さだ。コンビニでこれらのカテゴリーのアイテムを購入するとき、選択肢はあまりない。来店客もこだわりのアイテムを購入するなら、コンビニではなく薬局やスーパーに行くだろう。しかし、世田谷鎌田三丁目店は集客装置であるイートインコーナーや雑誌を切り捨ててでも、こだわって買い物ができるよう選択肢の多さを優先させた。

ラインアップの強化には、選択肢を増やすこと以外に客単価を上げるという狙いがある。例えば、スマートフォン用のケーブルや充電器は数百円~数千円まで幅広く、目玉商品として売り出している、ドンキのプライベートブランド「情熱価格」の完全ワイヤレスイヤホンに至っては税別5980円と、普段のコンビニでは見ない値段だ。

食料品のコーナーには、ファミマとドンキが共同運営しているがゆえの特徴がある。例えば、飲料水は注意深くチェックすると、メーカー商品に交じって情熱価格の高コスパ商品があり、価格の幅が広い。

バリエーションがあるのは価格だけではない。おつまみに注目すると、コンビニによく置かれている少量サイズとドンキが得意とする大容量サイズの両方がある。

酒類や菓子類はリニューアル前の約2倍に増やした。女性客を狙ってとのことだったが、取材時はシニアの来店客が多い時間帯で「孫のために買っておく」というニーズも取り込んでいるように見受けられた。

店内を1時間回って印象的だったのが、普段はドンキに来ないような客層が自然に買い物をしていたことだ。元がファミマだから当然なのだが、圧倒的品数やユニーク商材に目を止めて珍しがる光景は、ドンキに慣れた若い世代ではもうあまり見ることのない姿のように思えた。

ドン・キホーテの坂元康之執行役員は「目的買いから衝動買いへ」と新業態の指針を語ったが、これはまさにドンキがリテール業界に逆風が吹く苦しい時代に店舗と売上を拡大してきた基本戦略でもある。筆者はファーストインプレッションで「駄菓子屋」を想起したが、これは戦略の上でもあながち間違いではなさそうだ。(BCN・大蔵 大輔)

「ウレぴあ総研」更新情報が受け取れます