画面を裏返して接続できる2 in 1 PC dynabook R82、開発の舞台裏とは

2015.10.6 13:26配信
タブレットとしても使える2in1のPC、dynabook R82

キーボードがあるベース部とディスプレイ部が取り外せて、しかも裏返しにしても接続できる「リバーシブルドッキング」ができるPCは用途が広い。東芝のdynabook R82は、そんなユニークなPCの一つだ。12.5インチのディスプレイ部だけの重さは699gとびっくりするくらい軽く、これだけでWindowsタブレットとしても十二分に活用できる。このPCとしてもタブレットとしても使える2 in 1マシンの開発に携わった東芝のビジネスソリューション事業部 商品開発部 古賀裕一 部長と、マーケティングを担当する国内営業統括部 国内マーケティング部 マーケティング企画担当 夷隅嘉晃 グループ長に開発の舞台裏を聞いた。

●裏返して着脱するにはいろんな工夫が

──Windowsタブレットにもなるdynabook R82ですが、目玉の機能は何でしょうか。

古賀 2 in 1として使った時の面白さを最大限に考えました。やはり、表裏いずれでも画面部とベース部を接続できる、リバーシブルドッキングが目玉ですね。画面をぐるっとキーボードの後ろに回すタイプだと、タブレットとして使っているときに、キーボードが押されて気持ち悪いんです。そこで、リバーシブルドッキングをサポートしよう決めました。

──裏返しても画面を脱着できるというのは、おもしろいですね。技術的にはどんな工夫があったんですか。

古賀 脱着用のコネクタを二つにしました。電気信号をUSBで通すのではなく、専用のコネクタを経由することで、動作スピードを確保しつつ、ちょっとした機械的なショックで壊れないように工夫しています。具体的には100ピンのコネクタを表接続用、裏接続用と二つ用意しました。コネクタを一つにすることも可能でしたが、ちょっとした接続のアヤで壊れやすい、ということもあり、二つに分けました。ただし、ピン数を極力少なくするためにベース側にもコントローラを配置して信号系統を統合しています。

●着脱試験は手作業でやらなければ意味がない

──とはいえ、やっぱり脱着式だと、すぐ壊れちゃうんじゃないかと心配になったりしますが……。

古賀 実は、表裏5000回ずつ手作業で着脱試験をしています。このレベルでは全く問題はありません。機械に着脱を試験させる方法もありますが、それだとストレスのかかり方が一定になってしまい、実際の利用シーンでの耐久性試験にはならないんです。時々変な角度で差し込もうとしたりするのが人間ですから、やはり人の手でやらないとちゃんとした試験にはなりません。

──なるほど。実際の利用シーンに近い試験を行っているんですね。ところで、そもそもなぜリバーシブルにしたんでしょう。

古賀 まず、プレゼン時に使いやすいですよね。インターフェイスポートがそのまま使えるというメリットも大きい。タブレットのドッキングステーションのような使い方もできます。利用シーンが広く、様々な用途に使えるのが大きな特徴です。

──ベース部と画面部を無線でつなげば苦労もなかったんじゃないですか。

古賀 表示のみをタブレット側で処理するなら無線でもかなりのスピードが出ます。しかし、ベース側にメインボードをもってくることになりますから、通信ができる範囲でなければ全く使えないというデメリットがあるんです。また、電源供給をベース側にしたかった、ということがあります。企業向けモデルでは、セカンドバッテリーモデルも用意しています。その場合にはバッテリー駆動時間が倍になるが、そうしたメリットを享受するためにも、有線接続を選択したわけです。

●クラムシェルとしても遜色ない製品を目指した

──ノートPCのクラムシェルスタイルにもかなりこだわったとうかがいましたが。

古賀 2 in 1でありながら、普通のクラムシェルと遜色ない製品を目指して開発しました。まず、キーボード入力が普通にできること。そして、インターフェイスを充実させることです。いまだにRGB出力と有線LANの端子を持っているのが特徴で、タブレット側にも表示ポートとUSB端子をつけました。また、持ち歩くときにかっこよく見えることを重視しました。かっこよくしようとすると、堅牢性や重さの問題がでてくるのですが、可能な限りそれらを保持しながら、作ったわけです。

──薄く軽量でも基本性能はしっかりしているんですね。

古賀 タブレットとして使うことを考え、徹底的に軽くしようということで、12.5インチのWindowsタブレットとしては699gという超軽量に仕上げました。そのためにファンレスにしながら、パフォーマンスもしっかり出るよう設計してあります。CPUにインテルのCore M プロセッサーを採用し、熱があまり出ずにきっちりと性能を出せるぎりぎりのチューニングを施しました。仕事に使うには、普通のコアシリーズとそん色ないスピードが確保できました。

●ファンレスにするため放熱には徹底的にこだわった

──一口にファンレスといっても、パフォーマンスとの両立はかなり難しいんじゃないですか。

古賀 パフォーマンスを一切落とさずに熱を散らすというところに苦労しました。一部分だけ熱くならないよう放熱用のシートを入れて熱の均一化を図っています。温度が上がっても性能をやや落として熱を抑える、ということはほとんどしていません。東芝の考えとして、ベンチマークテストをやった時に、1回目も2回目も3回目も性能が劣化させてはいけないというものがあります。実際使っていて急に遅くなったというようなことはありません。

──放熱シートだけではなく、ほかにもいろいろと工夫したんでしょう。

古賀 設計する前に、徹底的に熱のシミュレーションを行いました。通常はスピードを確保するため、CPUの真横にメモリを置いたりしますが、いずれも熱を持つ部品なのでなるべく散らして配置しました。また、基盤の中に入っている銅をうまく使って熱を散らすなどの工夫もしました。同時に、放熱のための穴もないんです。

──ファンがないんだから放熱の穴ぐらいあけてもよさそうなもんですが。

古賀 穴を開けたら、ファンレスの気がしなくなっちゃうんです。それに埃が入るんじゃないかとの心配も出てきます。せっかくファンレスにするなら、穴をあけないような放熱設計を行いました。タブレットって、情報を見るだけ、の用途が多いじゃないですか。リラックスして使うシーンも多い。メールをひたすら読む時も、PCに向かわなくていい、という利点があります。そんな用途で、耳元に近いところでファンの音がすると興ざめ。ですから、ファンレスにはとてもこだわったんです。

●キーボードのうち心地も数値化して管理する

──ところで、R82に対するユーザーの反応はどんな感じですか?

夷隅 我々の意図通り、インターフェイスがしっかりしているなど、軽く薄いPCを実現しながら、そのために何かを犠牲にしていない、というお褒めの言葉をいただいています。キーボード部を外し、タブレット部だけで使うと軽いとの評価もいただいています。タブレットとの2台持ちをしたくない、PCとして使うときにもインターフェイスが充実しているほうがいいという人に評判がいいようです。

──やっぱりビジネス系のニーズがかなりの部分を占めるんでしょうか。

夷隅 PCは一頃、エンターテインメント用途で市場が膨らんだ時代がありました。ところが今は、その大部分をスマホが担っています。一方、ビジネスのニーズは堅調です。R82もビジネス用途を前面に出しています。もちろん、個人向けでは、依然としてエンターテインメント系の用途が市場拡大の要素になるとは思いますが、具体的にはなかなか難しいですね。

──本体の話に戻りますが、東芝のPCというとキーボードの打ち心地がいいというイメージがあるのですが。

古賀 感覚を数値化して管理しています。例えば、「F」というキーを押すとどのくらいキーボード自体がたわむかなどを数値化して管理しているんです。力いっぱい押すのはスペースキーとエンターキーだったりますよね。そういった利用に耐えるように管理して設計するんです。気持ちのいいキーボードにするため、東芝のPCだけでなく、他社のPCでも、いいものを計って、それを基準にしています。

──今後R82はどのように進化するんでしょうか。

古賀 薄型化、軽量化、堅牢性の向上についてはまだ改善の余地があります。SIMと組み合わせるなどの通信の利便性も考える必要があるでしょう。ただ、デタッチャブルにすると、どうしてもベース部を軽くできないんです。画面部がそれなりの重量がありますから、ベースが軽すぎると、向こう側に倒れてしまうんです。クラムシェルとして使う際に、ディスプレイを開く角度は120度ぐらい。ディスプレイ部を軽くすることでこの角度が大きくとれるようになります。全体で1kg以下にするのは非常にハードルが高いですけどね。

──難しそうですが、軽いデタッチャブル、楽しみです。本日はありがとうございました

(聞き手、文、写真、BCN 道越一郎)

いま人気の動画

     

人気記事ランキング