ところで皆さん、こういった2地域居住や田舎暮らしは、ある一部のお金持ちでしかできないと思っていませんか? 確かに田舎に居住地を用意しなければいけませんし、往復の交通費・光熱費もかかってきます。年間の出費で考えるとそれなりの負担になることは想像がつきますね。

でも、もし、年間40万円で“田舎の生活”を手に入れることができたら?

そんなワクワクするシステムがあるのです。19世紀半ばにドイツをはじめ欧州で庭が持てない都市生活者のために、郊外に市民農園をつくる動きがありました。それをクラインガルテン、日本語で「小さな庭」と呼んだのです。

本場欧州では、菜園だけでなくコミュニティ形成の場として重宝され、クラインガルテンを利用することで、生活の質が向上したり、健康的に過ごすことができたのです。

クラインガルテンと市民農園の大きな違いは、ラウベ(簡易宿泊施設)が併設されているかどうか。クラインガルテンでは、ラウベに滞在して自分の時間を堪能し、菜園づくりを楽しみながら地域住民とも交流するのです。つまり、都心に家を持ちながらも地方に“ジモト”を作ることができるのです。

「笠間クラインガルテン」HPより

同書では、茨城県にある笠間クラインガルテンを詳しく紹介。同施設は、全体で4ヘクタールあり、宿泊施設つきと日帰りの2タイプが用意されています。

ラウベのついたタイプは1区画300平方メートルもあり、その中に約30平方メートルのラウベ1と約100平方メートルの菜園、芝生を用意。ラウベにはキッチンを始め、風呂、トイレ、ロフトがあります。利用期間は1年単位(4月~翌3月)となっており、最長5年間の更新が可能となっています。

なにこれ、すごく楽しそう。広々としたスペースにロフト付きの家。悠々自適に過ごすには申し分の無い環境です。で、この宿泊施設付きタイプの料金は、年間で411120円。日帰りタイプは、区画30平方メートルとなり、年間の利用料金は1280円となります。

「笠間クラインガルテン」HPより

笠間市の農政課の深澤さんは「基本的な料金は40万円ですが、ここと居住地を往復する交通費や光熱費などがかかります。聞いてみると年間120万円程度はかかっているようですね」と語っているので、利用料金+αがあるようです。ただ、田舎生まれ、田舎育ちの都会生活者の私にとって、これはなかなかそそるシステム。

思い切った田舎生活が難しく、中期的に滞在する2地域居住にも手が届かない私としては、素直にクラインガルテンを利用してみたいと思いました。実際に自分が田舎暮らしにマッチするのかどうかを試すにも絶好の機会かと。まずはゆるく田舎暮らしを体験。

調べてみると全国にこのクラインガルテンがあるようですので、気になった方はお近くの施設に問い合わせてみては。『ドラマW 山のトムさん』のハナ(小林)とトキ(市川実日子)のように友人と一緒にクラインガルテンを利用してみても良いですね。田舎暮らしを考える皆さん、いかがでしょうか。

<参考書籍>
『多縁社会―自分で選んだ縁で生きていく。』篠原聡子著(東洋経済新報社)