「ジョジョの奇妙な冒険」で知られる漫画家・荒木飛呂彦が90年代に発表した短編『死刑執行中脱獄進行中』が舞台化!

死刑宣告を受けた男が入った監獄。その施設は脱出しようとすればするほど男を処刑しようと蠢きだす。其処はただの監獄か、処刑室か……という強烈なストーリー。

主演は、ダンサー、俳優として、魅力的を放ち続けている森山未來。

公演初日を前に、この舞台を企画し、構成・演出・振付を務める長谷川寧と、長谷川と縁がある漫画家・東村アキコさんの対談が実現しました。

荒木先生のマンガが舞台化されるのは初! 衝撃的な企画

――ではまず、今回の東村さんとの対談企画のいきさつから、お伺いしていいですか。

長谷川 もともと僕が、東村さんのマンガが好きだったんです。それで某誌のインタビューを受けたときにその話をしたら、編集の方が東村さんに会う機会があるということだったので、公演をご案内させてもらい、観に来ていただいて。

東村 そっか、それでか 

長谷川 で、この仕事場の壁に貼ってありますけど、冨士山アネットで『家族の証明∴』を再演(11年)したときに、フライヤーにイラストを描いていただいて。そのときに「お手伝いできることはありませんか?」と言ったら、数回、アシスタントとしてお手伝いさせていただいたんです。

東村 器用そうな感じだったから(笑)。

長谷川 で、今回、マンガ原作の舞台をやるにあたって、先生とお話ができればと思い、対談をお願いしました。そしてこの間、先生の『海月姫』が映画化されたときに、別のルートから依頼があったので振付を担当して。打ち上げでお会いしましたよね。

東村 「おぉ!」とか言ってね。

長谷川 「あぁ、覚えてましたか」って。

東村 いや、そりゃ覚えてるけどさ。「久しぶり、なにしてた?」みたいな感じで。

長谷川 先生が、荒木先生ともお知り合いだということで、その打ち上げの席で『死刑執行中脱獄進行中』を舞台化する話をしたら、「じゃあ行くよ〜」と言ってくださって。もともと、舞台もたくさん観てますよね?

東村 うん、観てる。演劇はすごく好きなので時間の許す限り、わりと観に行くほうではあるんですけど。で、マンガ原作だと気になって観たいと思うほうで。

今回はやっぱり荒木先生のマンガが初舞台化というのがすごいと思っていて。

荒木先生のマンガって非常にゴージャスだし、そういう意味では舞台的というか。私は宝塚とかも好きなんですけど、華美で濃いじゃないですか。

そういうものって映画やドラマとかだとできないけど、舞台って縛りもそんなになく好き放題やれるのが、観ていて楽しい。

そういう意味で、荒木先生のマンガが舞台化されるのは、演劇ファンであり、荒木ファンの私からすると、奇跡のコラボみたいな衝撃的な企画だと思いましたよ。

今回の原作は短編なので、それをどこまで膨らませていくか。

長谷川 東村さんは、自分の作品を舞台化したいと言われたことはないですか?

東村 ない。舞台にならないんじゃない? 

いろいろなものとかぶるからね。基本パロディだから。

長谷川 自分で、これは舞台化できそうと思うものはあるんですか?

東村 うーん。今やってる歴史もの(『雪花の虎』)はやりやすいかなとは思うね。

長谷川 確かに。そうか。

東村 でもまぁ、コメディだからね。コントをずっと長くずっとやってる感じだから、舞台は難しいかな。舞台ってほら最後は誰かが死ななきゃいけないじゃん?

長谷川 なにその偏見(笑)。

東村 誰かが死ななきゃ盛り上がんねえな、みたいな。それか、死んでから始まるみたいな。

長谷川 いったい、どんな舞台ですか(笑)。

東村 私のマンガにはそういうのがないから、やっぱり薄くなるというか。

それとは違うワイワイやってる感じの方向だと、それこそ三谷幸喜的なものになるわけで。それはもうすでにいっぱいあるから、私なんかが入っていく余地はないんだけど。

長谷川 でも、最近はゲームまでが舞台原作になっていたりするから、すごいですよね。

東村 要するに企画を通すのが重要というね。キャッチーな話題になるやつなら、そこから先はどうとでも、ということなんだろうけど。

長谷川 だから僕、今回の企画は通ると思ってなかったんですよ。そう、だってもう見るからに通らなそうじゃないですか。

東村 荒木先生のツボは、凡人のわれわれには本当にわかんない。だから、アタックしてよかったんじゃないの。

長谷川 舞台化の話は初めてですって。だからいいところに目をつけましたね、っていう話だったんでしょう。

東村 みんな、恐れ多くてやらないだろうしね。アンタ、よう言うたわ。

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