「子どもが欲しい」という思いが人生の大きな岐路に

メーカーの人事部に勤める吉田佐香枝さんは、ママになってから2度転職を経験しています。

「仕事はハードながらやりがいがあり、上司や同僚にも恵まれていたのでかなり悩みました」としつつ、それでも新卒で入社した会社を退職した理由について、「忙しくなかなか子どもを授からなかったのが1つの決め手になりました」と吉田さん。

そのため、その時は転職を選ぶのではなく、少しゆっくりしながら、ずっとやりたいと思っていたことに挑戦する期間にしたそうです。

" 人生の夏休み " と銘打って過ごしていました。毎日が濃くて、本当に楽しかったですよ!」(吉田さん)

仕事を辞め、アメリカへ留学したほか、コーチングやキャリアカウンセリングの勉強、ボーカルレッスンなど興味のあることに次々トライした吉田さん。

「あくまでも結果論ですが、この時期があったから子どもを授かることができたのかもしれません。まさかその後、2児の母になれるとは思いませんでした。だからなおさら子ども達は大切に育てなきゃなって思っています。」と言う吉田さんは等身大のワーキングマザーでした。

キャリアダウン中?筒井さんの場合

小山さんを筆頭にゲストの皆さん全員が今のキャリアにたどり着くまでに数々のアップダウンを経ていますが、現在「キャリアダウン中」だという筒井陽子さんはまさにモヤモヤの渦中にいる当事者。

子どもを持つかどうかでパートナーとのすれ違いが生じ離婚、現在は職業訓練校に通いながら、性教育の支援や啓発活動に臨むNPOでの理事も務め、夏以降は会社員に戻る予定とのことです。

筒井さんにとって大きくターニングポイントとなった「子どもを産みたいかどうか」という問題は働く女性にとっては大きな関心ごとではないでしょうか。

2人のお子さんを持つ齋藤さんは30歳で結婚してから第1子を授かるまで約4年かかったそう。

「妊娠したと周りに報告すると『産むつもりがないんだと思っていた』と言われました。結婚した当初は『子ども作らないの?』と聞かれることもたびたびありましたが、そのうち『聞いたらまずいのかな』みたいに思われていたのかも。

結婚する際に、夫の家族とその話題を明確にしたわけでもないし、結婚して数年子どもができないと何となくはれ物みたいになってしまう風潮もありますよね」と問題のセンシティブさにも触れています。

妊活の経験を持つ小山さんの「子どもがほしいかどうか、パートナーと意見を交わすことは本当に重要」という言葉に、会場一同深く頷きました。

複業やリモートワーク、最近気になるトピックスについて参加者全員でトーク

イベントの後半はグループに分かれてのトークセッションが行われました。登壇者と参加者が混じりながらリアルな悩みや、関心のあるトピックス、イベントに参加してみての気づきなどを共有する場となりました。

あるテーブルで話題に上ったのは複業について。

先行きが不透明な時代だからこそパラレルキャリアも視野に入れたい、という声が上がった一方で、人事のキャリアが長い乾さんからは、「Aという会社に在籍しながら、Bという会社で複業する際に、B社での福利厚生を受けられるのか?とか残業代はA社かB社どちらが出すのか?などさまざまな課題が生じます。

本来契約書を交わして決めなくてはいけないことなんですが、何となく複業OK!という流れになってきている。これからもっと議論が必要な部分です」と鋭い意見が。

また、別のテーブルではリモートワークの是非について語りました。

働き方改革の一環で推奨されているリモートワークですが、マネジメントの難しさや勤怠管理や評価など課題点を実感している人が多いようです。

「できれば毎日満員電車に乗って通勤するのは避けたいけどリモートワークができるのはまだ遠そう」とワーキングマザーのリアルな声も印象に残りました。

このほかも、働きからやキャリアにまつわるトピックで会場は大賑わい。あっという間の2時間が過ぎ、イベントは閉幕となりました。

女性のキャリアについて考えるイベントや講演会が数ある中で、今回のイベントは、とても親しみやすくアットホームでリラックスした雰囲気にあふれていることが印象的でした。

主催の小山さんは、ゲストの皆さんとも「キラキラなイベントにはしない」と方向性について事前にしっかり固めていたとのこと。多様な選択肢に触れられる絶好の機会なので、次回以降の開催も期待しています。

システムエンジニア、携帯向け音楽配信事業でのシステム運用、マーケティング職を経て、妊娠・出産を機にフリーライターに転向。主に育児、教育関連の記事を執筆。子連れで楽しめるサービス探しと世界の子育て事情に興味津々の日々。ストレス解消はお酒と映画。