11歳の女子児童に「家に大きいお菓子があるから取りに行こう」と声をかけ、わいせつ目的で誘拐した都立高校事務員の男が逮捕されました。

例年のように今年もまた、子どもの誘拐を目的とした犯罪が発生してしまいました。

子どもが巻き込まれる犯罪は衝撃的なものも多く、親御さんや学校関係者の皆さんは、常に防犯の意識をもっていることでしょう。

皆さんはお子さんに対して、どのような防犯対策をされていますか?

“危険”の教え方にある落とし穴

例えば、

「暗い夜道は危ない」

「怪しい人には気をつけて」

「知らない人にはついていかない」

と子どもたちに教えていませんでしょうか。

また、防犯ブザーを持たせ、いざとなった時にはこれを鳴らすようにと教えているかと思います。

では、子どもたちはこの教えの意味をどこまで理解しているでしょうか。

暗い道は通らなくても人通りがなく死角の多い場所を通っていたり、いざ怪しい人が目の前に現れても、普段から「人を見た目で判断してはいけない」と教わっているため防犯ブザーを鳴らせなかったり、その深度は大人が思っている以上に浅いのかもしれません。

55%の子どもが引っかかるパターン

立正大学文学部教授で書籍『子どもは「この場所」で襲われる』の著者である小宮信夫さんは、子どもが巻き込まれる犯罪の特徴として、「騙されてついていくパターン」が多いと指摘しています。

警視庁が発表した「子どもを対象とする略取誘拐事案の発生状況の概要」(2003年)では、ここに中高生が含まれているにも関わらず、「甘言・詐言を用いて」犯行を行った被疑者はなんと全体の55%に。

これを小学校以下の割合で考えると、もっと数字が上がることでしょう。行き当たりばったりの犯行ではなく、用意周到な犯人もいるので、こういった甘言・詐言が使われるのでしょう。

「犯罪者は言葉巧みに子どもを誘い出します。犯罪者は子どもを騙すストーリーを練り上げたうえで、子どもに安心してついてこさせます」(同書より)

こういった犯人は巧みな誘いで子どもたちを狙います。なかなかこういった類いの犯人への対応を子どもに教育することは難しいもの。

防犯ブザーをはじめ、走って逃げる、大きな声を出す、その場に伏せるなどといった対処方法も教えられますが、これらはすべて犯罪がすでに始まってしまっている際の話。

防犯という意味では、こういった犯罪者と遭遇しない“そもそも”の部分のケアが必要ではないでしょうか。