ドラマ『裏切りの街』より

男女は「ひょんなこと」から知り合って、「なんとなく」つきあうということがある。誰もかれもが激しい恋に落ちるわけではなく、そんな関係もあるのだ。いやむしろ、そのほうがリアルかもしれない。

映像配信サービスdTVで視聴ランキング1位を獲得し、現在も配信中のドラマ『裏切りの街』の智子(寺島しのぶ)と菅原裕一(池松壮亮)も、暇つぶしに出会い系にアクセスして知り合い、同じ沿線に住んでいるから「なんとなく」会った。

そして、そのまま2回ほど会って、3度目には体を重ねるようになった。それも「なんとなく」だ。ふたりは最後まで、お互いの本名すら知らない。

子どものいない40代前半の専業主婦と、恋人に食べさせてもらっている20代半ばのフリーター。

このふたりの性格は驚くほど似ている。何もすることがない、自分の存在価値がわからない、将来に見通しがない、そしてなによりがんばることができない。ないない尽くしである。

だからこそふたりは惹かれあった。強烈にではない。なんとなくだ。この人なら、なにもない自分を受け入れてくれると匂いでわかったのだろう。

菅原裕一は結婚こそしていないが、同棲しているのだから、これはダブル不倫のようなもの。お互いに自分のパートナーにバレたら困るのも共通項だ。

不倫している男女にとって、セックスとは何か

最初のセックスはうまくいかないものの、回数を重ねていく毎に智子はより一層その快感にのめり込んでいく。こうなると、不倫は止まらない。

長年、不倫の取材を続けているが、一般論としてここ数年、女性は自分の性を重視するようになった。

特に40代になると、若いころより性欲が増すので、夫とセックスレスだったり性的に不満をもっている場合は不倫に走りやすい。

その一方で、自己評価が下がるのも40代以降。「私みたいなオバサンなんて」とドラマの中で、智子も言っているが、女として見てもらえないのではないかという不安も抱えている。

若い男性は、「社会的に何者でもない自分」にコンプレックスを抱きやすい。そんな若い男性と40代の主婦が関係をもつのも珍しくはない。また、貧富の差が激しくなっている現代においては、40代男性だって社会的な不安や劣等感から抜けきれない人も多い。

そんな男性たちを許容し、包容力をもって接してくれるのは、「オバサン」である中年女性たちなのだ。中年女性といっても、数十年前の女性たちより、今はみんなずっときれいになっている。男性が、恋愛の対象として中年女性を選んでも不思議はない。

そんなふたりが肌を重ね合うとき、お互いに「受け入れてもらった」という安心感を得るのではないだろうか。