毎年、夏休み明けのこの時期になると、決まって話題にのぼるのが、子どもの学校の行き渋りです。
子どもに「学校に行きたくない」と言われると、多くの親は、驚き、とまどい、時には強い不安を覚えて、なんとか学校に行けるように焦る人がほとんどなのではないでしょうか。
一方、近年の不登校児の数はぐんぐん上がっています。昨年、過去最高を記録した裏には、2017年2月に施行された教育機会確保法の存在があります。
今までの不登校対策が、学校に復帰することが前提だったのに対し、今後は学校以外の教育の場(フリースクール、学童保育、デモクラティックスクール、ホームスクール)の意義を認め、休養が必要な子どもにはそれも認めるという風に大きく変化したのです。
とは言え、まだまだ大多数の家庭では、「子どもは学校に行くもの」という考えがデフォルトで、初めから学校に行かせない選択をするケースはまれですよね。
多くの親は、ある日、子どもが「学校に行きたくない」と言い出して初めて、学校が子どもの育ちにとって最適な場所なのか、ということを考え(疑い)始めるのでしょう。
そのきっかけとなる子どもの「学校に行きたくない」という発露は、言葉で表現されないこともあります。たとえば、学校に行こうとすると決まっておなかが痛くなったり、発熱したり。それは心の声が身体を借りて出たものなのかもしれません。
もしも、その子にとって、学校というシステムが過酷で、安心感が得られず、時間をかけても慣れることができないのであれば、それはその子の持って生まれた「気質」が原因なのかもしれません。
以前、こちらのインタビュー記事のなかで、HSC(Highly Sensitive Child とても敏感で感受性の高い子ども)という気質を持つお子さんをホームスクーリングで育てるkoko kakuさん、斎藤 裕さんに、お話を伺いました。
koko kakuさんがこのたび、本名で『HSCを守りたい』という書籍を刊行されました。
もともとは、自身も元HSCである夫の斎藤 裕さんから預かった原稿がきっかけで、やはりHSCのお子さんを育てていたり、自身もHSCだったというメンバー18人によるHSC書籍制作プロジェクトチームの強力なタッグのもと、出来上がった一冊です。
今回、再び著者のkoko kakuさんと、原案を書かれた斎藤 裕さんにお話を伺うことができました。書籍にこめられた想いや、子どもの気質に関わらず、子育てにおいて大切にしたいことを語っていただいています。
学校に行きたがらない子どもを守りたい
――まずは、書籍化、おめでとうございます。
前回は、HSCの気質を持つ息子さんとkoko kakuさんご夫婦の、一家庭という単位でのお話を伺いましたが、このように書籍になることで、かなり世の中に反響というか、HSCの認知度を高めることにつながったのではないでしょうか。
koko kaku(以下k)「ありがとうございます。もともとは、夫からHSCについての原稿を小冊子でいいから出版しないか、という話が何度か持ちかけられたことがきっかけでした。
夫自身もHSCで不登校経験があり、また精神科医として、HSCが自己否定感やトラウマを抱えることを予防したい、という思いや、HSCが自己肯定感で満たされて、生まれてきてよかった、と心から思えることへの願いがあったのですね。
ですが、書籍化するのはそう簡単なことではないですし、今は忙しいし、難しい、とスルーしていたんです。
ところが、しばらくすると、また書籍化の話が出てくるんです。そんなに書籍化する必要があると思うのならば、自分で動けばいい、と思っていましたが、ある時必要に迫られて、夫の原稿を読みました。
そこにはHSCの心の叫びが書かれていました。