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その後、映画・ドラマ・舞台とコンスタントに仕事を続け、2004年のNHK大河ドラマ『新選組!』の山南敬助役で堺雅人がブレイクしたのは周知の通り。三谷幸喜の作品らしく、あらゆる登場人物が生き生きと描かれていたが、なかでも堺雅人が演じる山南敬助はとくに格好良かった。そしてこの頃から、堺雅人の半笑いが世間でも話題になってくる。怒っていても半笑い、泣いていても半笑い、ついには、切腹する時も半笑いだったからだ。この時に自分の中では、堺雅人=半笑いの貴公子というイメージが……。もういいか。

堺雅人の半笑いというのは、言ってみれば、喜怒哀楽の増幅器のようなものだと思う。同じ半笑いでも、状況によって意味が変わってくる。“顔芸”と揶揄されることもあるが、楽しさだけでなく、それが哀しくも見え、怖くも見えるというのは、やはりすごい武器だ。

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2008年のNHK大河ドラマ『篤姫』で演じた家定は、それまでの堺雅人のイメージを集大成したような役だった。とぼけた発言や奇行が多く、ちょっと病んでいるようなキャラクターだったが、実際は思慮深く、将軍家のことを考えていた家定。その微笑みは、奇行を演じている時はやや怖く、篤姫(宮崎あおい)と心が通じてからは優しく見えた。平均視聴率24.5%を記録した人気の大河ドラマの中で、宮崎あおいと共に中盤を支えたのは、間違いなく堺雅人だったと思う。

そして、2010年に主演したのが、フジテレビ系の『ジョーカー 許されざる捜査官』。この作品を堺雅人の連ドラ初主演としている資料もあるが、前述の通り、深夜の連ドラではすでに主演を経験しているので、正確にはゴールデンタイムの連ドラ初主演ということになる。このドラマで堺雅人が演じたのは、昼間は温厚な刑事で、夜は法で裁けなかった凶悪犯に罰を与える制裁人の役。この二面性をもった主人公にも、堺雅人の半笑いは効果的だった。

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また、堺雅人が演じた伊達という刑事は、幼い頃に目の前で両親を殺され、その犯人を自ら刺した過去をもつ男でもあった。こうした過去をもった上で、昼間の温厚なキャラクターなどを演じていると、その半笑いがいろんな意味に取れて、さらに深さが増すのだ。ドラマのフォーマットは『必殺シリーズ』と似ていたが、堺雅人の魅力は十分に伝わった作品だったと思う。

ちなみに、法で裁けなかった凶悪犯に制裁を与える仕事は、大杉漣が演じる元刑事の三上と一緒に行なっていて、その三上が経営していたバーは『リーガル・ハイ』でもこっそり使われている。