このところ政治の世界では、消費税を中心とした政局で賑わっています。大多数の国民にとっては、政局で動く政治家を見て、うんざりしていると思うのですが、気付いていない政治家ばかりなのか、気付いていても国民のことなど考慮していないのか、相変わらずの状況が続いています。根本的に「消費税率のアップ」は手段であり、税収の安定や税収を増やすことが目的のはず。しかしいつの間にか「消費税率のアップ」自体が目的になっているのが不思議なところです。税収やら予算やらについて触れたサイトなどでは散々語られているのですが、消費税を導入して以降、国の税収は落ち込む傾向にあります。今回の消費税率のアップにより、部分的に安定した税収が増えたとしても、それ以外の税収が落ち込んでしまっては、1000兆円にも膨らんだ政府の借金返済どころか、増えつつある社会保障費に充当することすらままならないでしょう。

こうした閉塞した時代に出てくるのが“英雄待望論”です。分かりやすく言えば、「どこからか誰かが現れて、いろんな問題を一気に解決してくれないかな」ですね。現状で該当しそうなのは、石原慎太郎東京都知事か、橋下徹大阪市長くらいでしょうか。まぁ、小沢一郎代議士ではなさそうです。ちょっと前には「もしかしたら、やってくれるかも」と、期待した国民に民主党が担ぎ出されましたけれども、完全に期待外れに終わりました。そして国民に「この人ならなんとかしてくれるのではないか」と思わせてちょうど総理大臣に就任した漫画が、小学館のビッグコミックスペリオールで連載中の『総理の椅子』(国友やすゆき)です。海外を旅して日本に戻ってきた青年、白鳥遥(しらとり はるか)が、国会議員のボランティアを皮切りに政治の世界に足を踏み入れ、議員になって活躍していくストーリーです。これだけですと単なる青年のサクセスストーリーなのですが、白鳥は「日本を戦争に巻き込んでいく」野望を持っています。

なぜ彼がそんな野望を持つに至ったのか。
バックパッカーとして海外を見聞した時に、各地の戦争や内紛を見て、彼なりに人間の本質を悟ったことも原因なのですが、それ以前にダムで水没した白鳥の故郷で、なんらかの事件が起きたことが暗に示されています。外見では清廉潔白を装いながらも、底なしの腹黒さを持つ主人公は、青年誌ならではのキャラクターでしょう。議員にスキャンダルの火種を持ち込んだのも白鳥なら、議員を自殺に追い込んだのも白鳥。総理大臣の遺言をでっちあげたり、結婚したばかりの新妻を始め、何人もの人間に自らの手で危害を加えています。また現段階では明確にされていないものの、故郷のダム建設の折にも、近親者を含めて人を殺してきたようです。