子供の可能性を伸ばす上で、大事なこととは?

――今回やってみて、子供はやっぱり偉大だなと思いましたか?スゴい可能性を感じたりしましたか?

岩井 いや、偉大じゃない奴もいっぱいいますからね(笑)。

森山 (笑)

岩井 その比率的には……分かんない。大人も子供も変わらないですよ。

森山 出会う相手にもよるしね。

――表現することが苦手な子もいますしね。

岩井 でも、子供たちは自分がやったことが採用されると、だんだん自信がついていくんですよね。それはワークショップをやりながら感じました。

話はちょっと違いますが、城崎で子供の台本から作った芝居を観終わったあるお母さんが、「息子が書いた作文をいつも提出する前に直していたんですけど、やめようと思いました」って言われて。

そういう変化も象徴的だなと思ったし、世の中には自主規制がいろいろあるけれど、子供にはやっぱり直接経験させた方がいいんじゃないかなというのが僕の考えです。

面白くないときは「おもろない」ってはっきり言ってあげるのも大事なこと

――それが答えなのかもしれないですけど、子供たちの表現力や想像力を伸ばすためには、大人たちは何をすればいいと思いますか?

森山 岩井さんがワークショップの最初のころに言っていたことがすごく残っていて。それは僕も似たような感覚なんですけど、子供に何かをやめて欲しいと思ったときに、子供よりデカい人間として上から「やめて!」「やるな!」って言うのではなく「俺がイヤだから、やめて!」っていう言い方をした方がいいんじゃないかということでした。それって、考え方として随分違うと思うんです。

それは別に同じ目線に立つとか、立たないとか、そういうことじゃなくて、大人からの躾という感覚じゃないところで子供とつきあおうとしている表れですよね。

そのニュアンスがあるからこそ、たぶん子供と対峙している岩井さんが面白かったりしたんですけど、そういうニュアンスは非常に大事な気がする。

子供がやることを全部「面白い、面白い」って言う優しさもあるかもしれないけど、同じ人間として、面白くないときは「おもろない」ってはっきり言ってあげるのも大事なことだと思います。

岩井 大人や親って社会のふりをするじゃないですか。「誰々に怒られるよ」とか「どこどこじゃダメだよ」とか。まあ、そういう伝え方をする事案もあるでしょうけど、自分がイヤだと思ったときに「自分がイヤだ」って言う大人はあまりいないですよね。

でも僕は、仲よくするときもあまり子供は子供という感覚ではなく、同じ目線でいて、邪魔なときははっきり「邪魔」って言いますね(笑)。

――大人気ない(笑)。

岩井 「大人気ない」って言うけど、僕はそっちの方がいいと思ってます。表現者は、時と場合によりますけど、子供に「オマエよりワガママな奴がこの世の中はいるんだよ」っていうことを知らせるためにいると僕は思っているので。

森山 ああ、言ってた、言ってた。それ、いいね(笑)。

岩井 「俺のワガママ、なめんなよ」っていうね(笑)。親にももうちょい、その意識があってもいい気がしますね。全員には当てはまらないかもしれないけど。

森山 ひとつひとつのルールなんて、対人が変わったり、お国柄が変わったり、文化が変われば、全部変わるものですしね。あてになんないですよ。

対談からも読み取れるように、無限の可能性を秘めた子供たちとワガママな(!?)大人たちのコラボは、前代未聞のワンダーワールドを見せてくれそう。

今回のこの舞台は、子供もゆったりと鑑賞できる席が設けてあり、親子で楽しむこともできる。

子供たちと3人大人が生み出したこの画期的な芝居で、あなた自身の感覚も研ぎ澄ましてみては。

 

映画ライター。独自の輝きを放つ新進の女優と新しい才能を発見することに至福の喜びを感じている。キネマ旬報、日本映画magazine、T.東京ウォーカーなどで執筆。休みの日は温泉(特に秘湯)や銭湯、安くて美味しいレストラン、酒場を求めて旅に出ることが多い。店主やシェフと話すのも最近は楽しみ。