コミックス141巻の「星条旗を撃つ」では、この選挙にゴルゴ13が関わったストーリーが出てきます。ゴア氏(漫画内では“コア”氏)の得票だった200票が無効になっていたものを発見された時に、500メートル離れた場所から換気扇の隙間を通して投票用紙を狙撃ゴルゴ13を敵に回すことを恐れた民主・共和の両陣営は、ゴルゴ13の狙撃事実を封印、選挙結果を受け入れることになります。ここで注目されるのは、ゴルゴ13の狙撃技術の凄さと共に、影響力の大きさです。アメリカ大統領と言えども、ゴルゴ13の狙撃には恐れをなして、口をつぐんでしまうところに爽快感を感じる人も多いでしょう。突っ込みどころを探せば、換気扇の穴から狙えなかったらどうなったかとか、安易にカセットのメッセージを再生するのかおかしいとかもありますが、瑣末なことと見なしても良いでしょう。

他にも大統領選挙に関わる話として、コミックス120巻の「偽りの星条旗」や、コミックス155巻の「PKO プライス・キーピング・オペレーション」などがあります。どちらも大統領選挙への影響を心配した関係者の画策により、ゴルゴ13が活躍するストーリーになっています。また62巻の「ルーサー・キングの遺産」では、黒人候補の暗殺をゴルゴ13が依頼されます。キング牧師の後継者と目される人物が実は……との設定で、当初ゴルゴ13は胸に飾られたメダルを目標にして狙撃しようと考えますが、危ぶむ警備関係者よって外されてしまいます。しかしゴルゴ13は見事に目的を達しています。「ルーサー・キングの遺産」が連載されたのは1986年。オバマ大統領が就任したのが2008年ですから、ゴルゴ13によって黒人候補の大統領就任が20年遅らされたと考えるのも一興です。

今回のアメリカ大統領選挙では、現職のバラク・オバマ大統領、ジョセフ・バイデン副大統領に、共和党大統領候補のミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事、副大統領候補のポール・ライアン下院予算委員長が挑みます。さてどちらがアメリカ大統領になるのでしょうか。そしてそこに何らかの形でゴルゴ13が関わってると考えれば、政治に疎い人も興味がわくのではないでしょうか。

あがた・せい 約10年の証券会社勤務を経て、フリーライターへ転身。金融・投資関連からエンタメ・サブカルチャーと様々に活動している。漫画は少年誌、青年誌を中心に幅広く読む中で、4コマ誌に大きく興味あり。大作や名作のみならず、機会があれば迷作・珍作も紹介していきたい。