五郎丸歩

ラグビーというチームスポーツを愛し、ラグビーの神様から愛された男は常々「日本でラグビーを文化にしたい」と語ってきた。

『ラグビーワールドカップ2015』で日本が南アフリカに勝利した“世紀の大金星”以降の活況に五郎丸は目を細める。

「日本代表のジャージーを着たいと思う子どもたちが増えたことを本当にうれしく思う。『RWC2015』で多くの人がラグビーを知ってくれた。それから多くの方に応援してもらいました。私は出なかったが、『RWC2019』が大成功に終わって本当にありがたかった」

ここ最近の日本ラグビー界の進化には、五郎丸自身も驚いていると言う。

「日本のラグビーはこの数年で大きく変わりました。(フランス・クレルモンへ移籍した)松島幸太朗や(ニュージーランド・ハイランダーズへ移籍する)姫野和樹が海外でプレーし、海外で活躍している。私が小さい時には考えられないこと。日本ラグビーは年々世界レベルに上がっている」

これまで一番印象に残っているゲームという引退会見の定番質問を問われると、「日本のラグビーを変えた南アフリカ戦、大敗した次のスコットランド戦、ヤマハで入れ替え戦を戦ったのも……一番は選べません」と苦笑し、早稲田大のでの一番の思い出を聞かれると、

「また一番ですか……。早稲田に入学するまで日本一になったことはないので、『大学選手権』で(3度)日本一になったこと。また(2005年度の)『日本選手権』(2回戦)で社会人のトヨタ自動車に勝ったこと。この勝利は『RWC2015』に大きくつながったと思っている」と振り返った。

また、恩師エディー・ジョーンズヘッドコーチへの思いを質問されると、「間違いなく自分の人生を変えてくれたひとり。『RWC2023』で日本がエディーHCのイングランドと対戦すると決まったことは宿命を感じます。ラグビーの生まれたイングランドに勝てば、日本ラグビーの価値はさらに上がる」と口にした。

五郎丸歩 ©F.SANO

引退を発表したが、まだ現役のプレイヤーである。1か月後の『ジャパンラグビートップリーグ2021』開幕へ向けて万全の準備を進めている。

「コンディションはバッチリ。でも私だけではなく、全員がコンディションはバッチリだと思う。現役選手としてまずやるべきことはレギュラーを取ること。

今週末にはエコパでトレーニングゲームがありますが、まずはそこでしっかりしたプレーでみなさんへ感謝の気持ちを伝えたい」

後輩たちに何かを伝えていきたいなんて考えてはいない。五郎丸はいちプレイヤーであることを強調した。

「年下の選手たちに残すなんて考えていない。下も上もない。同じフィールドでやる選手。まずレギュラー争うのがプロとしてやるべきこと」

レギュラーを取れば、目指すはひとつだ。

「ヤマハが初めて日本一になったのは(2014年度の)『日本選手権』。『トップリーグ』はまだ取っていない。このタイトルを取ることがこのチームが大きくなる一歩や二歩になる」

最後に五郎丸は「本当にありがとうございます。ラストワンシーズン、全力で戦っていきます」と誓った。

ヤマハ発動機は12月19日(土)・エコパスタジアムでNTTコミュニケーションズシャイニングアークスとのトレーニングマッチを実施。

年が明けて1月16日(土)・ノエビアスタジアム神戸での『トップリーグ』開幕戦で神戸製鋼コベルコスティーラーズと対戦、翌週23日(土)・ヤマハスタジアム(磐田)でのNTTドコモレッドハリケーンズ戦でホーム開幕戦を迎える。

トレーニングマッチは入場無料。『トップリーグ』第1・2節のチケットは発売中。