藤井美菜

台本を読んだだけじゃわからない。韓国ドラマの“現場力”

――ソク・ジニは、地味なメガネ女子から一転し、同僚の片思いを軽やかにかわす美しいコメディエンヌに変身を遂げましたね。

「研究者としての部分と、華やかに変身をした後の両方をお見せできてうれしかったです。実は私の父は研究者なので、電話でいろいろ聞きました。ふだん顕微鏡やプレパラートに触れる機会はないので、参考になる人が近くにいてよかったです(笑)」

――特に印象深かった撮影エピソードは?

「韓国ドラマをガッツリとやらせてもらうのは3、4本目だったんですけど、現場って本当にアドリブが激しくて。特にミンギ役のポン・テギュさんは『もしかして自分で書いてる?』と思うほど、台本にないシーンを演じていました。日本のドラマにもアドリブはあるけど、ゼロから作り上げることはさすがにないので驚きました。テギュさんは台本を読み込む力のある先輩。常に作品を俯瞰で見て、どうひねったら面白くなるかを考えている方なので、そのアドリブ力はすごく勉強になりました。私が現場にいないシーンを後から見ると『どうしてこうなった?』と思うことがたくさんあるんです。たとえば、テギュさんと(主演の)パク・ジニさんが工場に潜入するシーン。二人とも葉っぱを頭にくっつけているのですが、そんな描写は台本にはないんですよ! 現場での『草むらで張り込むのだから、これはどうだろう』『このほうがいいんじゃないか』というやりとりが想像できて、楽しかったです。それまでの私は“まず台本ありき”で凝り固まっていて、台本ごと変えちゃおう、という発想に至りませんでした。現場でフレキシブルにコミュニケーションをとりながら演技を変えていく姿を目の当たりにして、すごい刺激になりました。ずっとアドレナリン全開でやらせていただいたなと」

――瞬発力を問われる現場のパワーの源は?

「食べ物ですね。日本だと食事はロケ弁ですが、韓国はケータリングが入ったり、お店で温かいものを食べられる時間がちゃんと確保されています。その時間はホッとできるのでありがたかったです。差し入れ文化もスケールが大きくて、カフェ・カー丸ごととか(笑)。現場でも温かいものをいただけることは、本当にうれしいです」

――10年前から韓国のドラマやバラエティに多数出演、『私たち結婚しました世界版』ではFTISLANDのホンギさんと仮想結婚をして話題になりました。韓国活動のキッカケはなんでしたか?

「『冬のソナタ』ブームの時に家族全員でハマり、その影響で大学の第2外国語に韓国語を選んで勉強し始めたのが出会いです。その後、勧められた日韓合作ドラマのオーディションで合格したのが初のお仕事。韓国語の勉強は好きでしたが、“世界が広がるかな”くらいの感じで仕事につながるとは思わなかったんです。そんな私が、観る側だった韓国ドラマの世界に足を踏み入れているなんて、人生って不思議だなと思います」

――日韓で活躍する俳優の先駆けになりましたよね。

「22歳当時に思い悩んでいたからこそできた選択だったんだと思います。周りに同世代のすごくすてきな女優さんがいっぱいいる中で“自分にしかない強みって何なんだろう”とあれこれ模索していた時期だったこともあって、思い切って飛び込めたんだと思います。それから10年、まだまだだとは感じていますが、今の私のちょっとした財産になっています。韓国語と韓国ドラマによって、本当によい出会いをさせていただいたと心から思っています」

>> 後編につづく

 

藤井美菜

藤井美菜
1988年7月15日、アメリカ合衆国生まれ新潟県出身。’06年、映画『シムソンズ』でデビュー。'08年、東方神起の『どうして君を好きになってしまったんだろう?』のPVに出演、日本と韓国を行き来して活動し、'12年からは本格的に韓国での活動を開始。人気バラエティ『私たち結婚しました 世界版』('13)ではFTISLANDのイ・ホンギと“国際カップル”で出演。現在に至るまで、日韓でドラマ、舞台、CMなど幅広く活動中。

 

[医療捜査ドラマ『ドクター探偵』とは]
ト・ジュンウン(パク・ジニ)は、優秀な医師だが、大企業の御曹司の元夫家族に妨害されて、娘と自由に会えない状況に追い込まれ、苦しい日々を送っていたある日、UDC(未確認疾患センター)にスカウトされる。UDCは、労働災害発生時に医学的立場から災害の原因となる物質と疾患の調査を実施、捜査権も持った独立機関のこと。そこで医師のホ・ミンギ(ポン・テギュ)や、証拠分析の要である分析チームのソク・ジニ(藤井美菜)といった個性的な仲間とともに、企業が巧妙に隠した秘密を暴き、被害者である労働者たちを救っていく。

組織的な情報隠蔽と情報操作。正社員雇用をちらつかせて危険な労働をさせたり、サービス残業を強いられて心身に不調をきたす者の増加。一向に改善されない職場環境を巡る物語は、現代を生きる全ての人に刺さる内容だ。2019年に韓国でオンエアされた本作だが、現在のコロナウィルスによる世界の混乱と重なるエピソードも。現代社会が抱える労働問題について考えるキッカケになるだろう。

特筆すべきはそのリアリティ性だ。本作は1992年から韓国で放送されている真相追跡番組『それが知りたい』のプロデューサーが初めて監督を手掛けたもの。地位や権力を持つものたちが長い間、隠蔽していた不正や忖度、悪の正体、それらに対して強く憤る国民の感情……。全て実話ベースの物語は、働く人々を守りたい、社会を変えたいと、心に強く訴えかけくる。

予告編:https://youtu.be/imk4HGnKr74

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