実に高校生らしい、甘酸っぱいセリフですよね。本書のキャッチコピーにも「まじめに、ゆっくり、恋をしよう」とあるように、佐条君の真面目でナイーブな心の揺動を、草壁君が不躾ながら直向きに汲み取っているところがまさに萌え!加えて、アホキャラ×優等生キャラという普通に生活していれば接点がないであろう、ふたりの関係が垣間見れるというのも腐女子にとっては嬉しい魅力のひとつですよね。

■昭和初期のレトロな雰囲気が黒髪要素をより際出させる!

続いて、投票結果で2位(9.4%)を獲得したのが「黒髪」。日本人にとっては切っても切れないパーツですよね。そこで、私が選んだコミックが『由利先生は今日も上機嫌』(著:木下けい子 大洋図書)です。

あらすじは、「創幻堂出版に勤める編集者・六車君の担当は我が儘で気紛れで、だけど才能溢れるミステリ作家の由利京一郎だ。真夏に焼き芋を、真冬に西瓜を所望されても、たとえいきなり刀を突きつけられても、尊敬する由利先生の作品のためならと今日も今日とて奮闘する六車君だったが、戀にはとんと奥手で……」といった、俺様小説家×天然ワンコ編集者のカップリング。

キーワードである黒髪は攻めの由利先生に当てはまりますが、この作品にはほかにも「スーツ(8.72%)」「和装(7.05%)」「サラリーマン(5.7%)」のキャラ属性がふんだんに盛り込まれており、そのどれもが投票結果のトップ10に入る人気の萌え要素です。

その上、舞台は昭和初期。新人編集者である受けの六車君は、偏屈な小説家である攻めの由利先生から原稿を受け取るためなら、巣鴨までくず餅を買いに行ったり、病気の介抱をしたり、ご飯まで作るという、まるで男嫁のように尽くす徹底ぶりを見せます。

にもかかわらず、あれやこれや難癖をつけて六車君を戸惑わせる由利先生は、いかにも昭和の文豪といった雰囲気で、和室に和服……。そして、日本古来の黒髪といった出で立ちは、昭和初期のレトロな雰囲気が漂う舞台だからこそ栄える魅力だと言えますよね。

「六車君、君は明日から焼き芋も西瓜も船宝堂のカステラも食べさせないつもりか? 君が淹れてくれないと茶も飲まないし、飯も食わないぞ、私は」

何とも駄々っ子極まりないセリフですが、年甲斐もなくそんな子供みたいな態度を取る由利先生に萌えないはずがありません。また、それを言われた六車君もさすが色恋沙汰に疎いだけあって、「先生は僕がいないとダメなんですか?」とキョトン顔。このように俺様と天然っぷりを露わにする彼らですから、ふたりの関係はむず痒くも初々しいカップルとして、思わずニヤけずにはいられませんね。