なかには、夫婦でお店をやっていて休むに休めず「パパの育休どころか、ママも最低限の産休をとっただけ」というパパママもいます。

よほど高所得で、まとまった貯蓄でもない限り、自由なはずの自営業パパでも育休取得はけっこう難しいのが現実。

そういえば、「育休をとった」と話題になる男性は、本人が売れっ子の芸能人であったり、妻がハイキャリアでかなり稼いでいたりと、希有なケースが多い印象もあります。

このように、いったんパパたちの事情に目を向けてみると、日本で男性の育休取得が広がらない背景には、一般家庭のパパママの努力だけでは如何ともしがたい問題が多く絡んでいることが見えてきます。

男性にも積極的に育児参加してほしいものですが、平日は深夜まで残業で、子どもと関わりたくてもなかなか関われないというパパも少なくありません。

やはり状況を大きく変えるには、国や企業の抜本的な取り組みが不可欠なのでしょう。

実際にパパが育休を取得すると…?周囲の視線がけっこうキツイ!?

もちろん、なかには少数ながらこれらの壁を乗り越えて育休取得にチャレンジするパパもいます。

実際に育休をとったパパの体験談として参考になるのが、『経産省の山田課長補佐、ただいま育休中 』と『男が育休を取ってわかったこと』の2冊です。

前者は、経産省のキャリア官僚である山田正人さんが、第3子の誕生を機に、2004年11月から一年間の育休をとった体験や思いを著したもの。

後者は、皮膚科医の池田大志さんが、子どもが生後6カ月頃の2010年の5月からの半年間、育休をとった体験談を綴ったものです。

いずれも、育児に慣れていないパパの奮闘記として楽しく読める部分も多いのですが、キャリアを中断することへの葛藤や苦悩も綴られていて、壁の高さを思い知らされます。

また、特に、女性たちも含めた周囲の視線がつらかったというエピソードが印象的でした。

たとえば山田さんは、育休中、保育園の送り迎え時に先生にいつまでパパがお迎えに来るのかと聞かれたり、健診で「今日はお母さんは?」「ママは離乳食を作っていってくれないの?」と言われたりと、「育児はママがするもの」という世間の意識に違和感や苛立ちを感じたと語っています。

池田さんも「娘と一緒にスーパーに出かけると、周囲の人にじっと見られることが頻繁にあった」と、周囲の目が気になったことを綴っています。

二人の著者が育休をとったのは数年前のことなので、最近では多少社会の状況や雰囲気が変わっている可能性もあります。が、実際の育休取得率を見ても、大きな変化はなさそう…。

「育児はママがやるもの」という意識や思い込みは、男性にはもちろん、意外と女性の側にもあるんですよね。

育休をとっているパパや、園の送り迎えをしているパパ、専業主夫のパパを見かけたら、ママ友にするように気さくに声をかけて手助けしてあげるなど、ママたちの意識の変化も必要なのかもしれません。

現状では男性の育休取得には数々の現実的な壁があるのは事実ですが、まずは一人でも多くのパパが「育児って大変そうだけど、楽しそう。育休とってみたい!」と思えるようになるといいですよね。

<参照>
厚生労働省「「平成 28 年度雇用均等基本調査」の結果概要
厚生労働省「Q&A~育児休業給付~

京都在住ライター。私大文学部を卒業し、会社勤めを経てフリーライターに。東京都内で活動した後に、京都市左京区に引っ越し出産。その後は京都で子育てをしながらライター業を続ける。インタビュー・取材記事をはじめ、カルチャー、ヘルスケア、生活などのジャンルで幅広く執筆。