小学校の「朝の読書」で読まれた本10年連続No.1

「たくさん本を読む子に育ってほしい」という思いとは裏腹に、我が子はゲームやスマホに夢中で…と心配な気持ちのお母さん、お父さんも多いのでは?

「子どもに本を読ませるにはどうしたらいいのか?」そんな質問に「かいけつゾロリ」シリーズの原作者・原ゆたか先生は「無理に読まなくたっていいよ」と言います。さてその真意は?

出版不況に加えて、「1か月で一冊も本を読まない」という人の割合がおよそ半数を占めるなど、読書量の減少が叫ばれる中、小学校の「朝の読書」で読まれた本10年連続No.1という圧倒的人気を誇っているのが、原ゆたかさんの『かいけつゾロリ』シリーズです。

『映画かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ』©2017 原ゆたか/ポプラ社, 映画かいけつゾロリ製作委員会

1987年発売の第1作のから丸30年で60冊以上。劇場版アニメーションの最新作『映画かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ』も現在公開中です。

「どんな話なら小学生に面白いと思ってもらえるのか?」。

常にそう考えながら、ほぼ年に二冊というペースでシリーズを書き続けてきたという原さん。

「大人が読ませようとする本や映画なんて面白いわけがない! 子どもたちは敏感にそう感じ取ります」。

大人が押し付けるのではなく子どもに選ばせてあげること――そこに本を読むことを「楽しい」と感じてくれるヒントがあるようです。

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  • 『映画かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ』©2017 原ゆたか/ポプラ社, 映画かいけつゾロリ製作委員会
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  • 『映画かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ』
  • 『映画かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ』©2017 原ゆたか/ポプラ社, 映画かいけつゾロリ製作委員会
  • 『映画かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ』©2017 原ゆたか/ポプラ社, 映画かいけつゾロリ製作委員会

シリーズ30周年記念の映画はゾロリが過去にタイムスリップ

――『映画かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ』ですが、ゾロリが過去にさかのぼり、過去の原作シリーズにも出てくるゾロリママやゾロンド・ロンの若き日の姿が描かれていて、子どもたちはもちろん、かつてシリーズのファンでいまは親となった大人も一緒に二世代で楽しめる作品になっていますね。

「僕も、むかし本を読んでいた人たちにも楽しんでもらえたらいいなと思っていたので、よかったです。

これまで映画は僕が書いた本を原作にしてきたけど、どうしても親御さんたちには「本か映画どちらかでいいね」と思われてしまったようなんです。

本当は演出も違うし、話も少し変えたりしているんだけど…。そこで前作の映画から、映画オリジナルの脚本にしてもらいました」

――そこでゾロリが過去にタイムスリップするというお話に?

「脚本の吉田玲子さんはゾロリのTVシリーズでもいいお話を書いてくださっていた方の「何か書いてくれないかな?」とお願いしたら『バック・トゥ・ザ・フューチャー』みたいに過去に戻って若き日のママに会うというお話を書いてくださったんです。

そのアイデアは面白いし、私が本で書かない部分だなと。あんまりいいお話を書かれて「本より映画の方が面白い」って言われたら悔しいんだけど(笑)」

――原作でもゾロリが亡くなってしまった大好きなママへの愛が何度も描かれていいますね。

今回の映画でもママの思いや胸の「ZZ(ダブルゼット)」マークなど、いろんな秘密が明かされていくという物語で、30周年記念作品にふさわしい、感動的な作品だと思いました。

「私も見ていてウルっと来ました。若い頃のゾロリママの声を演じた百田(夏菜子/ももいろクローバーZ)さんも、これまで声優をやっていなかったのが「なんで?」と思うくらい素晴らしくて、見ていてキュンキュンしました。

好きになっちゃうくらいで(笑)、「ゾロリ、ママを好きになっちゃダメだよ!」って思いながら見ていました。深い愛――ママへの愛、ゾロンド・ロンの愛など、複雑な愛のドラマになっていてよかったです。

「ZZ」マークに関しては、僕自身、最初からあの秘密を考えていたわけじゃなくて、何気なく書いていたのですが、長く続ける中で、ある日「あれ、このマークって…」と気づいて「これはすごいこと思いついた! みんな驚くぞ!」と思って、もしもいつか本を書き終える日が来たら、最後のネタにしようと思っていたんです。

ただ、このネタで本を一冊書くのは難しいと思ったので、今回の映画で使っていいよと渡したんです。

『映画かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ』©2017 原ゆたか/ポプラ社, 映画かいけつゾロリ製作委員会

シリーズを長く続ける上で、悩んだこと

――「もしもいつか本を書き終える日が来たら…」とおっしゃいますが、先生ご自身で、このシリーズの終わりを意識することはあるんですか?

「僕はもともと、作家じゃなくて絵描きだし、作家さんの作品に絵を描いている時にストーリー自体にもいろいろと考えを言っているうちに「物語を書いてみてください」と出版社に言われて始まったのがこのシリーズです。

夢中で書きはじめましたが、10冊くらいで「もう書けない…」と思った時期もありました(笑)。

でも幸い、映画が好きだったから、自分が好きな映画を子どもたちにわかるように設定を置き換えたらどうなるか? と考えたりしてやってきました。

『ズッコケ三人組』シリーズ(那須正幹原作)の50巻を超えたいという夢はあったけど、30作を過ぎたあたりで「50作も書くって大変だ…」と思いました。

夢中で書いていたので、最近、30周年、60作と周囲に言われて、こんなにやってきたのか…という自分でも驚いている感じです。

子どもたちも成長とともにゲームが好きになったり、釣りが好きになったり、汽車を好きになったり、それぞれ趣味ができてきます。

昔の『小学三年生』みたいな子供向けの総合誌がどんどんなくなっていくのも、今の子どもたちは、全ての情報はほしくない、好きなものの情報だけ知れたらいいという状況に変わってきましたね。

オールマイティにみんなが好きなもの、みんながこれなら読みたいと思うタイトルを作るのはなかなか難しいですよ(苦笑)。

パターン化したように、ゾロリさえ出てくればいいという作品にしたくないんですよ。マンネリ化せずに違うやり方で面白いものができないかを毎回模索しています。

――「ゾロリ、どうなるの?」と心配になる子どもたちも多いかと思います。

「今全国で30周年の展覧会を巡回しています。そこにおいてあるコメントを書いてもらうスケッチブックに、たくさんの方が「もっと読みたい」と書いてくれるんですよ。

サイン会でも「ゾロリを素敵な花嫁と結婚させてあげてください」と言われたり、みんな心配してくれる(笑)。

以前、50作目の『はなよめとゾロリじょう』を書いた時、ゾロリが幸せに結婚するラストを考えたんです。

でも子どもたちに「幸せに暮らしましたとさ」というラストで終わらせていい? と聞いたら、みんな「ダメ!もっと続けて」って……(笑)。

「ゾロリが面白い」と言ってくれる子どもたちがいる間は、頑張ろうかと…。まだいくつかネタはあるのでね(笑)」

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