朝ごはんの店はD区
北投中継市場はA区が野菜、B区が精肉と生魚、C区が雑貨、そしてD区が美食と分かれている。私の目的はもちろん、一番奥にあるD区の朝ごはんだ。
明るい仮設市場のグルメエリアをひと回りしてみると、旧市場にあった店がそっくり移動してきている。これはうれしい。
そして、旧市場でも仮設市場でも、人気店の行列は相変わらずだ。
私は前回、旧市場を訪れたときには臨時休業中で食べることができなかった魯肉飯の店「矮仔財」の行列に並んだ。
土曜日の朝とあって、20人ほどが列を成しているが、今回はなんとしても食べたい。
並んでいる間に注文用紙が配られる。目当ては魯肉飯。煮玉子はプラスしたい。
でも同じ鍋で煮込まれている大腸もかなり美味しそうだ…。待てよ、やっぱり野菜もあったほうがいいかも。考えている間に自分の順番がやってくる。
この店のカウンターで異彩を放っているのが魯肉を煮込む寸胴鍋だ。赤黒く焦げたような鍋には濃厚な煮汁がグツグツと湯気を立て、その中で豆腐や肉が徐々に煮汁と同じ色に染まっていく。
鍋のフチにこびりついた黒い焦げや脂は、どれだけタワシでこすっても落ちないぐらい何層にも重なって、鍋の中身が間違いなく美味しいことを主張している。
ヤン君いわく、こういう店はけっして鍋を洗わないそうだ。
日本の鰻屋さんがタレを継ぎ足すのと同じように、煮込み汁は店の財産。
継ぎ足すことで不動の味が受け継がれ、さらに日々加えられる豚肉や卵のエキスが旨味を増していく。
待望の魯肉飯
やっと朝ごはんにありついた。白米の上に盛られた魯肉はこれ以上ないくらいの艶を放っている。
魯肉と同じ色に煮込まれた大腸はとろりと柔らかく、口に入れると噛む前に溶けてしまいそうだ。千切りのショウガが甘い味付けのアクセントになっている。
さすがの人気朝食店。私とヤン君は一人前だけ頼んで2人でシェアし、腹五分目といったところ。
北投中継市場のグルメコーナーには魅力的な朝ごはんが凝縮している。次は何を食べようか?
(つづく)