違っていた「真実」

「その夜は、泊まりじゃなくて0時近くにホテルを出ました。

初めて彼を独占している、って事実に興奮していて、柄にもなく自分のことをいろいろ話したことを覚えています。

彼は笑顔で聞いてくれていて、付き合えるなんて夢みたいと思いながら抱かれていましたね……」

「泊まりたいけど、明日は仕事で」と彼から言われた由里子さんは、それを信じホテルの前で別れました。

「離婚について、彼は何か言っていましたか?」と尋ねると、「聞きたかったのですが、『いい話じゃないから』って彼が言うのでそれ以上は踏み込めませんでした」と由里子さんは肩を落とします。

男性は「LINEは苦手だから」と言っており、送っても返事は難しいこと、用事があるときは電話がいいなど、連絡について“注文”があったことを由里子さんは覚えています。

それから数日後、サークルで顔を合わせた男性はこれまで通りの態度で特に親しげに接してくることもなく、それを見た由里子さんも付き合っているようなアピールは控えようと思ったそう。

「でも、彼と恋人になったことをどうしても誰かに言いたくて、サークルで一番仲のいい仲間に打ち明けました」

先日の飲み会にも参加していた仲間は、「あれからそんなことがあったの!?」と由里子さんの話を聞いて驚いていましたが、「よかったね」と笑顔で言ってくれたそうです。

男性が離婚していたことも話すと、「そんなこと全然言ってなかったけど、離婚したなんて自分から言い出すのもおかしいか」と納得し、サークルでは今まで通りの距離感でいくことも理解してくれます。

ところが、その2日後、この友人が由里子さんに電話をかけてきました。

「あの人、離婚してないみたいだよ」

真っ先にそう言われた由里子さんは、衝撃で体が固まります。

「◯◯さんの職場にたまたま私の友達がいるんだけど、職場では普通に既婚で通しているって。◯◯さんの同期にも聞いたらしいけど、先日は奥さんの誕生日だったってのろけていたらしいよ」

低い声でそう続ける友人は、「騙されてない?」と正面から由里子さんに尋ねました。