友人が思いついた「復讐」

筆者が引っかかったのは、離婚したと言いながらまだ結婚していることがバレて、それは謝ったけれど「離婚するまで待っていてほしい」のような言葉が男性から出なかった点です。

由里子さんのことが本当に好きなら、離婚を急ぐしその間も不貞行為になる肉体関係は避けてつながりを持とうとするはずで、そしてそもそも、こんなありえない嘘はつけません。

それを言うと、「同じことを考えていました」とうなずきながら、由里子さんも「好きじゃなかったと思います」とはっきりと口にしました。

男性の真意はわかりませんが、どうであれ「既婚男性に独身と嘘をつかれて交際を持ちかけられたこと」、「独身だと信じたからホテルに行ったこと」は変わらず、由里子さんのなかでは「許せない」という気持ちが膨らんでいきました。

「私以上に怒っていたのが仲間で、私が自分のことを好きなのを見破ってこんな嘘をついて体を利用したのでは、とずっと言っていました。

その通りならすごくショックだけど、自分でもその可能性が高いなとは思っています」

その夜の電話以降、彼はサークルに現れず、由里子さんのところに連絡もありません。

独身と嘘をついて由里子さんに付き合おうと言い、挙げ句にホテルまで行った「事実」は、バレてしまえば男性にとっては大きな恐怖であろうことは、想像がつきます。

「仲間が、『そこでアルバイトをしている友人に、あの人がサークルで独身と嘘をついて女性に手を出したって噂を流してもらった。これくらいのことはいいでしょう、本当のことなのだから』と言っていました。

そんなことをすれば、サークルの知り合いが同じ会社にいることがわかるし良くないよと言ったのですが、『その子が私と友達なんてわかるはずがないし、このまま泣き寝入りなんて悔しいじゃない』って、私より怒っていて。

大きな問題にならなければいいなと思います……」

ため息をついて、由里子さんは視線を伏せました。