敵情視察も多いという「ローソンスマホペイ」

ローソンが4月23日から5月31日までの期間限定で、都内3店舗のローソンで実証実験を行っているセルフ決済サービス「ローソンスマホペイ」を試してみた。商品をピックアップしたその場でスマートフォン決済し、レジに並ばずに買い物できる快適さは、一度体験したら元に戻れそうにないほどだった。

平均4分の買い物時間が1分で終わる

ローソンが事前に社員による買い物にかかる時間を比較した実験では、通常のレジ決済は入店から退店まで4分かかっていたが、「ローソンスマホペイ」だと1分で終わったという。行列に並ぶ顧客のストレス解消だけでなく、店舗にとっても、単純に4倍の売り上げアップが期待できるシステムだ。実際に使ってみた印象では、買う商品があらかじめ決まっていれば、数十秒で買い物するのも可能だと感じた。

体験した店舗は東京・品川区の「ローソンゲートシティ大崎店」。オフィスビルのゲートシティ大崎イーストタワーの3階にローソン本社があり、店舗はその1階にある。JR大崎駅と直結していることもあり、利用客は周辺のオフィスビルで働くビジネスパーソンが多い。

なかには黒のスーツを着た2人連れのビジネスパーソンなど、明らかに同業他社の社員による敵情視察といった雰囲気の人も見かけた。「ローソンスマホペイ」は、それだけ注目度の高いシステムなのだろう。

まずは、事前にローソン公式アプリをダウンロードする。課題があるとすれば、この会員のID登録で少し手間を要するところくらい。アプリを立ち上げて店舗に近づくと、「店舗チェックイン画面」が自動で表示される。無線のBluetooth信号をスマホで読み取ると、地図と「入店する」のボタンが自動表示される仕組みだ。入店方法は、Bluetoothのほか、QRコードを読み込む方法も用意している。

「入店する」を押せば、自動でスマホのカメラ機能が立ち上がり「商品スキャン画面」が表示される。あとは店内で商品をピックアップしてバーコードを読み取り、表示された商品と金額を確認して「カート」ボタンを押していけばいい。決済画面の「Apple Pay」「楽天ペイ」「クレジットカード」のいずれかの支払い方法を選択すれば、買い物は終了となる。

なお、「ローソンスマホペイ」では酒やたばこ、店内で調理するものは対象外。対象となる品揃えは「ローソンゲートシティ大崎店」の場合、約3500アイテムだという。

退店時の専用機がボトルネックか

退店するときは、決済後に表示されるQRコードを専用機に読み込む必要がある。筆者は、この手順がボトルネックになるのではないかと危惧していた。店内でせっかくレジに並ばずにセルフ決済できても、結局、退店時の専用機の行列に並ぶ必要が生じるのではないかと。

担当者にこの点を質問すると、専用機がなくてもシステムとしては成り立つとのことだった。ただ、顧客が商品をそのまま店外に持ち出す抵抗感を緩和するためや、逆に、店員が「ローソンスマホペイ」で決済した顧客を見分けるために用意しているのだという。

決済画面で決済した時点で支払いは完了しているので、本来であれば専用機は不要だ。しかし、「万引き」と間違われないかという顧客の不安を解消するためと、「万引きではない」と店員が見分けるための退店の記録として設置している。そのほか、顧客が商品を袋詰めするスペースとしても機能する。担当者は「実証実験でさまざまなデータを検証して今後に生かしていく」と語る。

実際に専用機で時間がかかることはなかったが、ピーク時の専用機の課題がクリアすれば、文字通りスマートな買い物を体験することができた。奇しくも筆者は最近、都内のオフィス街にある別のナチュラルローソンで昼時の行列に遭遇してしまい、周囲にコンビニがなかったこともあり、100円の商品を買うためだけに10分ほど並んだ経験をした。担当者も、その店舗の昼時の混雑を把握していた。

周辺で働く人は、高層ビルのエレベータの乗り降りを含めれば、昼の休憩時間の多くを無駄に過ごしてしまうのではないかと感じた。そんなストレスから解消されるだけでも、「ローソンスマホペイ」のメリットは大きいだろう。

ローソンではこの下期にも、効果が見込める実店舗への導入を検討するという。実証実験では、片手でスマホを持つため、複数点の買い物では、かごや袋をひじに抱えなければいけないという課題も浮上してきたというが、実際に使ってみれば、顧客と店員の双方にとってメリットが享受できるシステムであることは間違いない。(BCN・細田 立圭志)