撮影:鈴木啓太
芸人・藤井隆が音楽業界で新たなチャレンジを見せてくれそうだ。
2000年に『ナンダカンダ』で歌手としてデビューして以来、数々の大物ともコラボし、良質なポップスを発信。音楽ファンもうなるほどのセンスに定評がある。

そんな藤井が、ついに、音楽レーベル「SLENDERIE RECORD(スレンダリー レコード)」を昨年9月に設立。椿鬼奴、レイザーラモンRGとユニットLike a round! round! round!を組み、『ナウ・ロマンティック』のカバーでメジャーリリースを果たした。

続いて、11月に配信された新曲『kappo!』では、作詞作曲も手がけるなど精力的。音楽という異なる舞台で活動する上での様々な葛藤、周囲のスタッフに対する思いを真剣に語る! そして、デビュー曲『ナンダカンダ』は、実は…。

 

あえて“いいとこどり”で、レーベルを設立

――9月にレーベルを立ち上げられました。1年ほど前から構想を練られていたそうですね。

藤井:真面目な話で言うと、そんな簡単じゃないですよね。ぬるくないですし。なんですけど、今回に関しては、“いいとこどり”をすればいいんじゃないかなという思いがありました。

ついつい二の足を踏んでしまう保守的なところがあるんです。違うと思ったらやらないといったことは、今までたくさんあるんです。

――今回は、とにかくやってみようと。

藤井:悔しいとか辛いとか思うことも正直ありますよね。例えば、プロモーションをする時に「そんなことはさておき」と言われてしまうことがあるんですけど、関わってくださる方々に申し訳ない。今後のことを考えてすごく大事にやってくださっているのに。でも、そういうことで二の足を踏んでいるよりはね。

――誠実な気持ちからの二の足踏みなんですね。

藤井:椿(鬼奴)さんとR(レイザーラモンRG)さんがホントに音楽を好きな方たちですし、すごく正直。僕を笑かそうとかでなく「音楽で食べていけたらサイコーです(キメ顔)」と言えちゃうんです。眩しいくらいに純粋。そういう二人と、イベントを3年近く毎月やらせていただいて、”音楽好きやなぁ”ということが再確認できました。

次、音楽の仕事をやるならば、今までいろいろ教えてくださった方たちのイズムは落とし込んでいきたいなと。それは究極、簡単に言うと「自分が全責任を取ります」ということが一番早いかなと思いました。

――かっこいいですね。

藤井:いえいえ。でも、それが一番ズルくないですよね。飲みこまなきゃいけないこともありますけど、それは自分が「飲みこみます」という決定をすれば進んでいける方を取りました。

 

笑われてもいい。「やる」と決めた!

――芸人としてだけでなく、俳優としての舞台の仕事など多忙かと思います。その中での音楽活動は、並大抵の気持ちじゃ出来ないですよね。

 

藤井:サポートしてくださる方、信頼できるスタッフがいるからです。

例えば、作詞作曲しますとなった時、楽器が出来るならば伝わりやすいけど、僕はその手立てがないから、自分の口で伝えていく。そういうことも、ひとりじゃないから出来ているだけ。レーベルも、Rさんと椿さんがいてくれたから出来た。それ以外でもイベントで関わってくれているアーティストの方々がいてくださるから進んでいっている。

――周りへの恩を忘れないという気持ちが伝わってきます。

藤井:死ぬほどもらったから(笑)! さすがに忘れないほどのボリュームをいただいているだけのことです。

――そういう背景があっての、レーベル名「SLENDERIE RECORD」(=細く長くという意味)なんですね。

藤井:ええ。いや、でも分かってるんです。自分が打ち出す音楽は、マーケットがないのも知っているし。一方で、すごく楽しみにしていましたと言ってくださる方がいるということが、ほんっとにありがたい。そういうことが照れくさかったりしてたんですけど、もう「やる」と決めたので、ありがたく頂戴するし、笑われてもいい。

――評価は気になりますか?

藤井:周りはすごく真剣にやっていただいているから、僕だけテレビタレントとしてふざけちゃいけないと思ったり。かと思えば、アーティストとしての写真を撮りましょうと言われたら、それはそれで居心地が悪かったり。分かんないよ~となっていた時期もありました。

それをひっくるめて、都合よく「そうなんです、タレントで~す」「レーベルヘッドなんです」と使いこなせるというか。自分がそこを楽しめたら、どんな評価をされても構わないと思えたかな。

吉本の中のサテライト感!?

 

――周囲の意見に左右されすぎると、まいりますよね。その中で、今田耕司さんの『ナウ・ロマンティック』をカバーされた経緯は?

藤井:僕はもちろん当時から好きな曲でしたし、Rさんも好きだったし、椿さんもよくカラオケで歌っていました。何かカバーでとなった時に、確かRさんが『ナウ・ロマンティック』が歌いたいですねと言ったと思うんですけど。3人が「わ~!」と意見一致したんです。

――芸人仲間の反応は?

藤井:どうやら、ここ数年、僕は好き勝手やってると思われているみたいで(笑)。「あなたは、なんでそんなに好きなことしかやってないんですか? 吉本の中の、そのサテライト感はなんですか?」と社内の人に言われて。なるほどね~と(笑)。でも、今回、先輩方にCDを持っていったら、笑って受け取っていただけました。周りの先輩方も優しい方が集まっているから許してくださってるだけで、勝手にやってんやろなと思います。

――以前は違うスタンスでしたか?

藤井:僕はスタイルを変えているつもりはないんです。最初から恵まれていて、意見を聞いてくださる方が多かった。「これをやりなさい。もう決まってる」と言われたのって、覚えている限りでは1回しかない。しかも『ナンダカンダ』を出す時。嫌だと言っても、「リリース日は決まってる!」って。

――音楽活動の始まりは、意外な流れだったんですね。ご自身の中で、ビジョンがしっかり見えている?

藤井:ん~、自分ではそう思わないんですけどね。映像で浮かんでいることがあります。例えば「大宇宙歌戦争」というライブイベントを諸先輩方に説明する場がありまして。「マザーアースの杉本彩さんが来て、ご自身の発光を頼りに僕たちは生きていて…」と説明してたら、「よう真顔で言うなぁ!」と先輩方に言われましたね(笑)。