試される親の生き方

たけるくん親子

――世の親御さんのなかには、まだまだ他人や社会からの批判を恐れて、子どもに合った選択ができないで悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

k「HSCを持つ親御さんが学校にニーズを伝えたりすることで、過保護とかモンスターペアレントのように思われてしまうこともあるようです。

モンスターペアレントは、学校に対して、自分の子どもの扱いなどのことを通して、自己中心的かつ理不尽な要求や苦情・非難を繰り返す親のことなので、子どもの気質や個性を理解して、子どもの気持ちに寄り添うものとは大きな違いがあるんですけどね」

――まったく逆ですよね。でも学校側にしたら、面倒な親だと思われることもあるかもしれませんよね。

だから、子どもの個性を見極めて、その子に合った生き方を選ぶ親のことを指す新しい名前があるといいかもしれませんね(笑) イメージアップのために。そうしたら、もっと勇気を出せるママも出てくるかもしれません。

k「そうですよね。お医者さんや学校の先生にこの子は神経質ですね、と言われたら、そうかもって思ってしまうし、傷つくし自分が間違っていると思ってしまいますよね」

――そういう意味で、親は試されますよね。子どもっていうのは、すごく親の生き方を左右する存在なのだな、と思いました。ブログのなかで、「生きることに真剣になろう」と思うようになったくだりがありましたよね。あの言葉は印象に残っています。

k「当たり前でふつうにしておけば、楽だったんですよね。私がそうで、周りに合わせて、全然、軸が自分になかった生き方をしてきたところ、たけるを通して、人には“あれは苦手”、“あれはできない”、“これはしない”、そういう魂があるんだということを知りました。

でも、今まで周りと合わせてきた自分が、周りとちがう生き方をしようとした時に、それはそれは、葛藤が生まれるわけです。自分という独自のアイデンティティを育てるのが、この社会ではいかにたいへんかということがわかりました。

それでも守らないと、と思うのは、やはりたけるは“ごまかし”がきかないからなんです」

――ご主人のブログに、「HSCは誰よりもいのちを大切にする」と書かれていました。すごくステキだなと思いました。

k「私もすごくそう思います。嫌なことを嫌と感じる力は、いのちを大切にする力というか。

きっと自分もあったかもしれないんですが、それを器用にごまかせてきたんですよね。でも自分の感覚に正直になって、ほんとは周りに合わせるのが嫌だったという気持ちを押し殺してきたのをやめたら、30代になって親とぶつかりましたね(笑)

私は本当に従順な優等生で、いい子だったので」

――”いのち”が輝くためには通らなくてはいけない道なのかもしれませんね。今日はどうもありがとうございました。

HSCの役割

HSCの子どもの感じ方は深くて強い、とkoko kakuさんはおっしゃっていました。

HSCの子どもは、HSCではない子どもには気づけないことに気づくことも、多いでしょう。だからこそ狭い集団のなかにいると、居づらさを感じてしまうのかもしれませんね。

けれど、学校というせまい範囲の全体に属さなくとも、広い意味での全体である社会のなかには、こういったタイプの人がいないと、困るのではないでしょうか。実際、HSCの子どもは人とは違った職業に就くケースが多いようです。

HSCという言葉を世に広めた本、エレイン・N・アーロン著『ひといちばい敏感な子』には、以下のようなくだりがあります。

考えてから行動する『少なからぬ少数派』の存在は、人類にとって大きなメリットです

出典『ひといちばい敏感な子

その子の繊細さには役割がある、と信じてその子に合った育て方をすれば、真の意味での多様性があふれた社会の実現につながるかもしれません。

その子が学校に行かない生き方を選んだとしても、今は、学校は行くもの、就職はするもの、といった、今まで信じられてきた価値観は少しずつ崩れてきている時代です。ホームスクーリングやフリースクールなどの選択肢も増えてきています。

無理に周りと合わせようとせず、子どもを真正面から見てあげると、他の子どもとはちがう、子どもの個性や良さが見えてくるかもしれません。

【取材協力】koko kaku
HSC子育てラボ」代表 心理カウンセラー。 9歳になる子どもと精神科医の夫はともに敏感・繊細気質(HSC/HSP)。

2018年3月に「HSC子育てラボ」を立ち上げ、HSCを育てるお母さんのサポートや、HSCの魅力や個性、才能がありのまま発揮されるよう、HSC概念の共有・拡散を目標に、夫婦で情報発信、勉強会などの活動をしている。 夫との共著書に『ママ、怒らないで。不機嫌なしつけの連鎖がおよぼす病』、 小冊子絵本『敏感な子の守りかた絵本』がある。