“猫は家の外に出たい”は間違い

「猫って散歩させたほうが良いですか?」の質問に対し、鈴木先生はきっぱり「しないほうが良い」と答える。

移動しながら捜し物をするのは犬の習性であって、待ち伏せ型で狩猟する猫とは違うというのだ。

猫を飼っていない人に多いのが、「家にずっと閉じ込めておくのはかわいそう」という思い込み。筆者も何度か耳にしたことがある。

しかし鈴木先生はこれも「外の空気や景色には興味がない」と否定する。

『猫医者に訊け!』では、猫にとって一番幸せなのは「毎日決まった時間に同じことをする」ことだと書かれている。

退屈しのぎに散歩へ連れて行ったり、自由に外に出られるよう扉を開けておく必要などないのだ。

外へ出たために車にはねられ死んでしまう猫は、年間30万頭いるというショッキングな推測値がある。

これは保健所で一年間に殺処分される犬と猫の総数(約13万頭)、その2倍以上にあたる。

「猫を閉じ込めておくのはかわいそう」という人間の思い込みがどれだけの悲劇につながっているか、見つめ直すきっかけを本書は与えてくれる。

猫の行動理由を早とちりしてはダメ!

猫の行動や価値観について人間が誤解しているのは、なにも「外に出すのが幸せかどうか」だけではない。

たとえば猫が喉をゴロゴロ鳴らすとき。

一般的には「嬉しい」「リラックスしている」と認識されているが、実はそれだけではないという。

鈴木先生によれば、猫のゴロゴロ音は「要求」のサイン。つまり病気で具合が悪いときでも、楽にさせて欲しいという意味でゴロゴロ鳴くことがあるそうだ。

同様に、猫が人をぺろぺろ舐めてくるのは「愛情表現のため」という常識も正しいとは限らないらしい。

たとえば肩こりの薬やメンソールを人が塗っていると、その臭いが嫌で消し去りたいため舐めてくるケースも考えられるという。

鎮痛成分の入った肩こり薬を猫が舐めて中毒症状を起こした報告もあるそうで、猫を飼っている人は気をつけたい。

ほかにも『猫医者に訊け!』では「鈴を付けるのは大きなストレスになる」「猫が水を嫌うというのは単なる先入観」など、目を覚ましてくれる話がいくつも紹介されている。