【酒場】盛りよし味よしキャラもよし! な立飲みコーナー大つか

さくらいよしえさんの“せんべろ”探訪、今回は大塚へ。固い絆を感じさせるアットホームなお店です。

立飲みコーナー 大つか

  (↑あやしげなお店と隣接してますが、外飲みもできマス)

 

 千円でべろべろーんに酔える店。

本日はJR大塚駅にやってきた。

ピンク色のネオンに紛れ込んでいるちっこい立飲み屋ゆえ、最初の一歩にはなかなか勇気がいった。

カウンターだけの店内には地元のおばちゃん、おっちゃん、

サラリーマンが一列でひしめき合う(平均年齢70歳らしい)。

まごまごしてるとハスキーなママが、

「みなさーん、奥に詰めたげてぇ。人類皆兄弟、はいお腹ひっこめんだよう」

と叫び、あっという間にスペースが生まれる。

ママは茨城県の海育ち。

初対面でも常連でも3年ぶりでも「あらあ、よく来たねえ」と

友達のおかんのようなキャラが変わらない。明るい。底抜けに明るい。

「あたしは田舎もんだもんで家庭料理しか作れないのよう」と言うが、刺身から煮物、

揚げ物、日替りの惣菜など盛りより味よしでオール190円。

  

 

 

(←右側がキャベツと豚肉のカレー風味。うまし。お金はボウルにキープ)

 

   (←ボードの日替りも190円)

  (←ぷりんぷりのイカしたイカ)

 

さて。

まずはイカ刺しと日替りのキャベツと豚肉のカレー風味を頼む。ともに大層旨い。

ジョッキ一杯に焼酎が入って出されるホッピーを堪能しつつ、

焼き鯖を頼めば香ばしく焼き上がった分厚い身が三切れも出てきた。

料理はママ担当。長年の相棒でヒロさんと呼ばれるおっちゃんの仕事は、

レンジでチンする目玉焼きとドリンク作りだ。

こちらは口数は少ないが、おもしろぼやっきーな人柄が味わい深い。

「ヒロさん、瓶のキャップがしまんないよう。どしたらいいの」

「あらヒロさん、目玉焼き噴火させちゃってまあ。こりゃ100円ね」

「ヒロさん、こちらホッピー中(ナカ)おかわりよう」

「ヒロさん、ヒロさん、ヒロさーん」

ママが何かを発令するたび、やる気のない感じでもっそりと現れ、

「けっ、ゆうこときかねえキャップなんか、ぶったたきゃあいいんだ」などと言いながら、

あっさり課題をクリアする。

 

そのあうんの呼吸を見ててっきり夫婦だと決めつけていた。

 

「結婚して何年ですか?」とある日聞いたら、ママが目を見開いて

「とんでもない。夫婦じゃないよう」と全否定し、

隣でヒロさんが「違うのよ」としれっと言うので、

こちらも変な気を遣って「ああ、長年のお友達なんですね」と丸くおさめようとすると、

ママはますます激しく首をふり、一方のヒロさんはにやにやと黙りこくるので、

まったく関係性が読めない…で、今に至る。

 

 

 

 

 

 

 

 

  (↑あったかうどんと角ハイ)


ちなみに今日は具沢山のあったかうどんが一番人気らしい。

「昨日のおつゆが残ったもんでやってみたの。

うどん、まだあるからお腹に余裕あったら最後に食べな。

湯気があるもんは落ち着くからねえ」とママ。

「ならフロでも湧かすか」とぼやっきーヒロさんが言って、案の定無視されている。

ホッピーに続いて300円の角ハイなどをペース良く飲んでいると、

ヒロさんがふと「ワインなんか好き?」と聞いて来た。ここでワイン…?

常連が「角ハイの次はワインかい? どんどん高級感出ちゃって困るなあ!」と言う。

チューハイとホッピーが定番の店に、ハイボールが登場したときは相当事件だったらしい。

「や、違うのよ。業者さんが売れるかもしんないからって置いてったのよ、ほれ」と

一升瓶の白ワインを皆に見せる。

「ほお、甲州ワインですかあ」と皆で覗き込む。

間もなく、お客一同にビールグラスに注がれた一口ワインが出され、

感想を言うというミッションになった。

 

「案外イケる」。

 

 

 (↑おすそわけの白ワインと塩辛)

 

というのが酔っぱらい一同の意見である。

酔っぱらいは大体なんでもイケるのだ。

問題は値段設定だ。

「これなら400円くらいとれるんじゃない」と誰かが言い、

「とれるとれる」と誰かが返す。完全に立ち位置が店側だ。

「だめだめ。300円でじゅうぶんよ。高くしたって面倒なだけだもん」とママが言う。

「一升瓶開けたら、なるたけ三日で飲んでって言うもんだから、四日目はあれだ、タダだ。

みんな何日目か聞いて注文したがいいよ」と言うヒロさんは、完全に立ち位置がお客側だ。

皆であはははと笑いあう。

白ワインを飲んだせいか、ママ手製の塩辛が食べたくなった。

「ちょっとまだ浅いンだよねえ。あと2、3日おくといい具合になんだけどねえ」

と言いながらママが冷蔵庫から塩辛のタッパを取り出す。

ここの塩辛は素朴でうまい。塩と鷹の爪と柚子だけの味付けだ。

小皿に取って「ヒロさーん、どうかね」と味見させる。

「うん、まあまあだな」指でつまんでヒロさんがじつにてきとうに言う。

「んじゃ出すかね」と言うなり「味見用」と称した塩辛の小皿が全員に回ってきた…。

もちろん白ワイン同様、おすそわけである。

ツレと二人で約二千円。愛とサービスに酔いしれながら店をあとにする。

それにしても、滋味あふれる二人三脚。

夫婦より友より、説明などいらぬゆかいなきずながあるらしい。

  ( ↑爆発しちゃったため100円になった目玉焼きとこちらも人気、こうなごおろし)


<この日のお会計(ふたり分)>

イカ刺し 190円

あったかうどん 190円

キャベツと豚肉のカレー風味 190円

目玉焼き 100円(ほんとは190円)

焼き鯖 190円

こうなごおろし 190円

角ハイ 300円

ホッピー 350円

ホッピー中(ナカ)220円×2

生ビール 400円
合計2,350円


【店舗情報】

大塚「立飲みコーナー大つか」

住所:東京都豊島区北大塚2−6−4

営業時間:14時〜23時半、日祝休。


 

文筆業。大阪府出身。日本大学芸術学部卒。趣味は町歩きと横丁さんぽ、全国の妖怪めぐり。著書に、エッセイ集「にんげんラブラブ交差点」、「愛される酔っぱらいになるための99の方法〜読みキャベ」(交通新聞社)、「東京★千円で酔える店」(メディアファクトリー)など。「散歩の達人」、「旅の手帖」、「東京人」で執筆。共同通信社連載「つぶやき酒場deep」を連載。

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