【コミック】熱く生きるために読みたい新撰組漫画3作品

2011.11.25 6:00

書籍、ドラマ、映画の題材となるなど未だに依然高い人気を誇る“新撰組”。幕末という混沌とした時代を必死に生き抜いている若き志士たちの姿を丁寧に描いたコミック3作品をご紹介。

今年も残り一月余り。国内外共に激動の一年だったことは、誰しも否定できないだろう。大きな出来事の一つに、“アラブの春”と呼ばれる北アフリカの連続した政権崩壊がある。昨年末にチュニジアで起こったデモは政権崩壊へとつながり、エジプトやリビアへ波及、他の周辺諸国にも影響を与えている。一年が経とうとしているが、未だ収まる気配が見られず、不安定な世界情勢の先行きが、更に不透明なものになりそうだ。兵器や武器がゴロゴロとして、まさに血で血を洗う争いが続いているが、日本でも150年程前は江戸から明治への転換期であり、全国各地で内戦状態が続いていた。そこで勇名を馳せていたのが新撰組(新選組とも)である。

多摩で天然理心流の道場を開いていた近藤勇を中心に、若い男達が将軍警護の名目で京へと上る。当初の目的とは異なってしまったものの、会津藩お抱えの新撰組を結成し、治安維持のために刀を振るって東奔西走。しかし彼らの努力も虚しく、徳川幕府の崩壊と共に、新撰組の隊員達も一人また一人と命を落としていく。まさにドラマチックな展開と悲劇のヒーローがてんこ盛りだが、そんなところに引かれる人も多く、小説にドラマに映画にと新撰組が取り上げられる。

『アサギロ~浅葱狼~』

アサギロ~浅葱狼~』(ヒラマツミノル)は、そんな新撰組を描いた漫画の一つで、小学館の「ゲッサン」創刊号から連載開始した作品だ。主人公はおそらく沖田惣次郎(後の総司)と思われるが、彼と共に近藤勇も存在感を示している。沖田は剣の天才ながらも無邪気な子供のように描かれており、一方で近藤は道場主として威風堂々たる大黒柱の貫禄を見せている。連載は沖田が天才の片鱗を見せるシーンから始まり、やや年月を飛び越えて山南敬助、土方歳三、永倉新八、藤堂平助らが集いつつあるところ。それぞれのキャラクターは従来の形を踏襲しているものの、どこか突き出したところを持たせている。個人的には永倉新八が格好良く描かれており、沖田にあっさり負けてしまうのは山南同様だけれども、道場に草鞋を脱ぎ主要なキャラクターとしてちゃっかり居場所を確保している。バレーボール漫画の『ヨリが跳ぶ』、プロレス漫画の『アグネス仮面』など、スポーツ漫画で迫力あるシーンを連発してきた作者が、この『アサギロ~浅葱狼~』でも存分に力量を発揮。天賦の才を持つ沖田惣次郎が、わずか12歳で介錯の刀を振るい相手の命を絶つ場面は、ヒヤリとさせるものがあった。その後は刀を振るう場面こそないものの、竹刀でも木刀でも無類の強さで圧倒していく。また近藤勇も若くして道場を継いだ後、彼の人柄によるのだろうか、食客に門弟にと人が増えていく。その懐の深さは、まさに一時代の傑物を思わせるところがある。こうなると土方歳三も、と思いたいところだが、一応活躍する話はあるが、どこか陰の存在に甘んじている。土方ファンにとっては悔しいかもしれないが、女性にモテる色男ではあるので、今後の活躍は期待できそうだ。

 

『新選組刃義抄 アサギ』

スクウェア・エニックス社の「ヤングガンガン」連載中の『新選組刃義抄 アサギ』(作画:蜷川ヤエコ、原作:山村竜也)。こちらは新撰組の中でも沖田総司、藤堂平助、斎藤一の若き隊員3人の視点で描かれた作品だ。連載が始まったばかりの『アサギロ~浅葱狼~』が多摩の時代であるのに対し、『新選組刃義抄 アサギ』は新撰組結成後を中心に描いている。つまり“若き”と言っても主人公は20代になっているのだが、その若々しさは作品中でも存分に表現されている。
この作品で注目したいのは新撰組内外の人間関係だろう。新撰組も一枚岩ではなく、近藤勇を中心にしたグループもあれば、芹沢鴨を祭り上げる一派もある。もちろん倒幕を目論む志士達は、新撰組を目の仇にするが、それでも心情まで対立しているようには思えない。それぞれのキャラクターが、混沌とした時代を必死に生き抜いているのは、痛々しく思うこともある。漫画は沖田の回想により、京都に滞在するところから話が始まる。少し史実にそれた強引な展開もあるが、それだけに沖田達の若さや、近藤、土方、山南らの年長者としての立場がたのもしく感じられる。

 

『月明星稀~さよなら新選組~』

そして新撰組を描いた漫画でも残念な作品が『月明星稀~さよなら新選組~』(盛田賢司)だ。なぜ残念かと言えば、掲載誌であった小学館の「ヤングサンデー」の不振もあったのだろう、突然連載が終了してしまったためである。
新撰組と言えば、局長の近藤勇、天才の沖田総司と共に欠かすことのできない存在が土方歳三。激動の時代を生き抜きながらも、最後まで新撰組の看板を背負い、北海道で銃弾に倒れると言う劇的な人生は、まさに男も女も惚れてしまいそうな人物だろう。その土方歳三の生き様を、これでもかと言うくらいに余すところなく描いている。先の2作品に比べて、明確に主人公を土方の1人としているので、読んでいて感情移入しやすいところも特徴ではないか。
作者は剣道漫画の『しっぷううどとう』『花蓮女学院高校男子剣道部』、江戸時代を舞台にした『電光石火』などを手がけており、個人的には刀ものを描かせれば指折りの漫画家ではないかと思っている。それだけにこの『月明星稀~さよなら新選組~』の終わり方は残念だ。せめてあと1年続けていれば、多少早足になったかもしれないが、十分な完結まで持っていけたのではないかと思う。

世の中の持つ閉塞感は今も変わらない。しかし150年前は新しい時代に向けて足を運んでいこうと考える人達が少なからずいた。新撰組の隊士達の多くは壮年どころか青年の半ばで命を落としていくが、彼らの生き様は多くの人の心を打つものがある。さて今の時代、刀を振るうのは論外としても、彼らに匹敵するような人生を生きるにはどうしたら良いだろうか。

あがた・せい 約10年の証券会社勤務を経て、フリーライターへ転身。金融・投資関連からエンタメ・サブカルチャーと様々に活動している。漫画は少年誌、青年誌を中心に幅広く読む中で、4コマ誌に大きく興味あり。大作や名作のみならず、機会があれば迷作・珍作も紹介していきたい。

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