日本未発売のトランセンド「Wi-Fi SDHC Card」

スマートフォンやタブレット端末が普及し、デジタルカメラで撮った写真を眺めたり、メールで送ったり、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)でシェアしたりする人が増えている。

こうした使い方をするとき、非常に便利なアイテムを手に入れた。トランセンド製Wi-Fi搭載のSDメモリカード「Wi-Fi SDHC Card」だ。日本国内の発売に先駆けて評価サンプルで最新機能をいち早く試した。このメモリカード、日本での発売は、2月初旬を予定している。

●撮った写真をすぐにスマートフォンに転送

デジタルカメラで撮影していて、「撮った画像をすぐにスマートフォンに転送したい」と思ったとはないだろうか。スマートフォンやタブレットを仕事や趣味に活用しているけれど、搭載のカメラ機能にはちょっと不満があって、デジタルカメラは常に持ち歩いている「こだわり写真家」なら、そんな機会が多いはずだ。

デジタル写真は、スマートフォンやタブレットから「いつでもどこでもネットワークに接続できる」という強みを生かして、SNSへアップしたり、メールで送ったりできる。また、多くの最新スマートデバイスが、高精細な液晶を搭載しているから写真鑑賞が快適で、写真を簡単にレタッチできるスマートデバイス用のアプリが豊富だ。スマートデバイスと高精細なデジタル写真とは、間違いなく親和性が高い。

●まずはアプリを手に入れる

スマートフォンやタブレットに転送するときに重宝するのが、トランセンドの「Wi-Fi SDHC Card」だ。Wi-Fi対応、つまり無線LAN機能を使って、撮影データを簡単に転送できるのが、このメモリカードの特徴。この機能を使えば、Wi-Fi対応の端末へ撮影データを自動転送できる。対応する端末は、PCのほかiPhoneやiPad、iPod touch、Androidスマートフォンやタブレットで、無線で直接写真を送って保存できる。

Wi-Fiをスマートデバイスと連携するには、まずアプリのダウンロードが必要だ。英文の説明書はややわかりづらかったが、App Store/Google Play/Amazonの三つのマーケットにつながるQRコードが載っているのは、すぐにわかった。iPhoneでQRコードを読み取ると、簡単に専用アプリ「Wi-Fi SD」アプリを入手できた。もちろん、それぞれのマーケットプレイスで「Transcend Wi-Fi」などのキーワードから検索しても手に入る。

●簡単な設定ですぐに使える!

「Wi-Fi SDHC Card」のいいところは、なにしろ設定が簡単なこと。Wi-Fiや無線LANの設定と聞くと、煩わしいイメージが先行する人がいるかもしれないが、この設定は本当に簡単だ。カードをデジタルカメラのスロットに入れ、電源を入れる。するとiPhoneのWi-Fi設定画面では、「WIFISD」という名前のSSIDのアクセスポイントが現れる。

このアクセスポイントを選び、英文説明書に載っていた初期設定の8桁のパスワードを入力するだけで、デジタルカメラに入っている「Wi-Fi SDHC Card」と接続状態になった。あらかじめインストールした「Wi-Fi SD」を立ち上げれば、さっそく使える。パスワードはもちろん変更できる。

●デジタルカメラとの連携を試した

機能は大きく分けて、SDカード内フォルダの画像ファイルを参照してから作業を始める「Browse」と、撮影した直後にデータを自動的にスマートデバイスに転送する「Shoot & View」の二つ。

「Browse」は、「Wi-Fi SDHC Card」内の撮影データをサムネール表示し、好きな画像データを選んでスマートデバイス側に転送・保存できる機能。写真のできばえを確認しながら、厳選して転送できる。iPhone側でサムネールを表示するまでの時間が短く、快適に使えて、動画データも転送できた。

旅行などで大量に撮影しときなら、移動中や宿でゆっくり写真を選ぶときなどに活用できそうだ。また、Wi-Fi接続をオフにして、「Wi-Fi SD」から写真を開いて写真をタップすると、画面右下に「共有アイコン」が表示され、画像をここからメールで送信したり、Facebookにアップしたりできる。

もう一つの機能、「Shoot & View」は、撮影したデータをリアルタイムにスマートデバイスに転送する。アップル「iPhone 4S」とキヤノン「Powershot S95」で試したところ、1200万画素(ラージ・ファイン画質)のJPEGデータで、転送完了までの時間は10~15秒ほどだった。

ちなみに、「Browse」「Shoot & View」のいずれもJPEG、PNG、BMPファイルに対応している。デジタル写真はRAWで保存するのが常の私には少し残念だったが、RAW+JPEG記録に切り替えれば対応でき、JPEGデータだけの参照・転送ができる。RAWデータのまま転送するとしたら、何倍もの時間がかかるだろうから、利便性と速度に免じて妥協できるポイントだ。

●使い方が広がる高性能SDHCカード

アプリの操作は極めてシンプルで、初心者でも簡単に使える。SDスピードクラスはクラス10で、撮ってすぐの転送も小気味いい。スマートフォンとの相性は抜群だと感じた。

例えば、デジタルカメラが活躍する旅先での利用シーンを考えると、写真をすぐにスマートフォンに転送できたら、いろいろと便利だ。例えば、すぐにSNSにアップする。旅仲間のスマートデバイスへ転送する。道行く人に記念写真の撮影を頼んだり、三脚とリモコンを使ってセルフポートレートを撮ったりする前に、手持ちのスマートフォンに転送設定をしておけば、手元で写真写りが確認できる。

今回は試せなかったが、さらに便利そうなのが、「3台のスマートデバイスに同時に撮影データを転送できる」という点。誰かが撮影したデータをそれぞれのスマートフォンに一斉転送するという使い方ができる。これら以外にも、アイデア次第でいくらでも便利でおもしろい連携ができるはずだ。

連携機能ばかり追いかけてしまったが、通常のSDHCカードとしても優秀であることもつけ加えておきたい。容量は32GB、転送速度は「Class10」に対応し、一眼レフの高速連写やHD動画の撮影にも適している。新年早々、日本で同型製品が手に入るかはわからないが、もし店頭に並んだら、好調なスマートデバイス市場の勢いに乗って、2013年のアタリ製品になるに違いない。(ITジャーナリスト 市川 昭彦)