スマートフォンはひと通り普及したのか、ピークは過ぎたのか――そんな疑問が生じる数字が出てきた。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、2013年3月のスマートフォンの販売台数は、過去2番目に多く、季節需要を取り込んで非常に好調だった。キャリア別ではドコモが約4割を占め、そのドコモのイチオシ機種「Xperia Z SO-02E」と、「iPhone 5」の16GBモデルが人気を集めた。

スマートフォンの月間販売台数は、2012年12月まで継続して前年を上回り、伸び続けてきた。しかし、今年に入ってからは3か月連続で前年割れを記録。1・2月はほぼ前年並みで、3月は前年同月比92.9%と、前年を大きく下回った。これは、昨年3月の販売台数が非常に多かったためで(詳しくは<安売りも貢献? 売れに売れたスマートフォン、2012年3月の販売台数は前年同月の2倍に>を参照)、必ずしも売れ行きに急ブレーキがかかったわけでない。しかし、店頭の賑わいや3月半ばまでの数字から、前年は超えるだろうと予想していただけに意外だった。

●キャンペーンと端末代値引きの影響が大きかった2013年3月のランキング

キャリアショップを含め、3月中に筆者が訪れた複数の店舗では、「当日限定」「3月末まで」「チラシ持参者限定」などの期間・対象者限定で、「MNP一括0円」「機種変更一括xxxx円」「1台購入につき商品券○円分プレゼント」「セット購入でx万円引き/もう1台プレセント」といったキャンペーンセールを実施していた。学生とその家族を対象とした「学割」必須の場合とそうではない場合があり、後者ならほぼ誰でも利用できた。不人気機種や旧機種の端末価格の値下げや、MNP限定の高額キャッシュバックは、以前から行われている。しかし今春は、比較的新しい機種まで”安売り”の対象となり、各キャリアとも契約数の増加と販売台数の積上げに苦心しているようにみえた。

2013年3月の携帯電話全体の販売台数1位は、前月に続いてドコモのAndroid搭載スマートフォン「Xperia Z SO-02E」だった。2位と3位には、ソフトバンクモバイルとauの「iPhone 5」の16GBモデルが続いた。1位から3位まではわずか0.3ポイント差で、ほぼ同率1位といっていい。また、通常はキャリア・容量ごとに別々にカウントしている「iPhone 5」をキャリアごとに合算すると、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5」(13.7%)、auの「iPhone 5」(12.7%)、やや離れて「Xperia Z SO-02E」(8.0%)の順となり、年末商戦に続いてアップルの「iPhone 5」が制した。

ただし、「iPhone 5」はキャンペーン適用時の「安さ」で選ばれている感がある。KDDI(au)は、2月23日から「iPhone 5」の端末代をサポートする「WE ARE! auでiPhoneキャンペーン」を実施。MNPだけでなく、機種変更でも通常より安く買えるようにした。対するソフトバンクモバイルもiPhone向けキャンペーンを拡充し、イー・アクセス(イー・モバイル)のFDD-LTEネットワーク網を利用できる「ダブルLTE」の開始や、ネットワークの改善に関する取り組みなどを発表した。しかし、いったんauに傾いた流れは変わらず、3月に限るとソフトバンクモバイル51.9%、au48.1%と、ほぼ半々だった。3月31日までの累計では、ソフトバンクモバイルが55.9%と優勢を保っているが、auも44.1%まで追い上げている。

●ドコモは一括購入派にうれしい「ご愛顧割」対象機種が上位に食い込む

続いて、主要3キャリア、ドコモ・au・ソフトバンクモバイルのキャリア別月間トップ10を紹介しよう。なお、「iPhone 5/4S」については、最初から容量を合算して1機種としてカウントしている。

ドコモは、2月9日発売の最新モデル「Xperia Z SO-02E」が1位を獲得。機種に応じて一定の金額を最大24か月間割り引く「月々サポート」の代わりに、購入時に端末価格を割り引く「ご愛顧割・デビュー割」の対象となり、急に販売台数が跳ね上がった「GALAXY S III α SC-03E」が2位に、「Xperia acro HD SO-03D」が5位に食い込んだ。「Xperia acro HD SO-03D」は、2012年3月発売のかつての人気機種。LTEサービス「Xi」に対応していないなど、スペックはやや劣るが、従来のFOMAの料金プランとなるので、トータルでの割安感がある。

auは、前月までと同様、「iPhone 5」がトップ。シェアは再び4割を超え、2位以下との差が広がった。ソフトバンクモバイルも「iPhone 5」がトップ。「みまもりケータイ2」に続き、3位にドコモの「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」と同じ次世代ディスプレイ「IGZO」を搭載したAndroid搭載スマートフォン「AQUOS PHONE Xx SoftBank 203SH」が入った。

●地域差は健在? 大阪圏だけスマートフォン率が全国平均を大幅に下回る

携帯電話全体の販売台数に占めるスマートフォンの割合(スマートフォン率)は、2012年11月の80.9%をピークにやや下がり、ここ数か月は70%台後半で推移している。初めて5割を突破した2011年夏は、地域によってスマートフォン率にだいぶ差があった。直近の2013年3月の数値で比べると、四つの地域区分のうち、東京圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)、名古屋圏(愛知県・三重県・岐阜県)、その他は、全国平均の76.7%を上回り、大阪圏(大阪府・兵庫県・京都府)だけが全国平均を下回った。

大阪圏のスマートフォン率は、2010年12月以降、一度も全国平均を超えたことがなく、最大でも70%台前半にとどまっている。冒頭の「スマートフォンはひと通り普及したのか、ピークは過ぎたのか?」という疑問に対する個人的な見解は「ノー」。地域によってはまだ普及の余地はあり、端末代のサポート(割引)が適用されないと、5万~8万円程度にもなる本体代、高額なパケット定額サービス料に見合ったスマートフォンならではの魅力が伝われば、まだまだ伸びるだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。

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