先日開催された「第91回パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」。初開催は1900年代初頭と、アメリカ内でも古い歴史を持つ自動車と二輪車のレース。見事優勝を勝ち取った"モンスター田嶋"のレースの模様を、臨場感たっぷりにレポート!
 

コロラドスプリングス 6月30日(晴れのち雨)

24日から始まった「第91回パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」のレースウィークもいよいよフィナーレを迎えた。決勝はバイク部門からスタート。四輪は午後からの走行だが、すでに前日から天候の崩れが心配され、チームではウェーザーマップとレースの進行状況を見ながら準備をすすめた。
 

モンスター田嶋は、20年以上におよぶパイクスピーク・ヒルクライムへの参戦の中で何度か同じ状況を経験してきた。その結果、用意してあったカットスリックを選択。さらに追加でカットを施した。チームは慌ただしくタイヤの準備をし、マシンをスタートラインに並べた。

天気予報は当たり、エレクトリック・ディビジョンの走行を前に雨が路面を濡らし始めた。一部雨足が強い部分があり出走はディレイとなったが、雨雲は早い速度で移動しながら始めにトップセクションを濡らし、スタート地点に雨粒が落ちるころにはトップセクションの雨は降り止んでいた。問題は、どれほどの雨が路面に残っているかだ。それによってタイヤ選択が、レインかカットスリックか変わってくる。
 

エレクトリック・ディビジョン最初の走者となったのは、予選トップ、三菱のトレイシー選手。タイムは10分23秒649を記録し、ひとまず、このタイムがベンチマークになる。続いてスタートしたのは、三菱の増岡選手。トレイシー選手を2秒弱逆転する10分21秒866で暫定首位に立った。

そして、モンスター田嶋がスタート。区間タイムでは前走の二人の記録を次々に塗り替えて行く。明らかに、そして圧倒的に速い! モンスター田嶋は、E-RUNNERパイクスピークスペシャルを手足の様に操り、場所によってグリップが違う難しい路面をクリアして行く。タイムは9分46秒530! ウェット混在路面でありながら、ドライだった昨年の優勝者に並ぶ驚異的なタイムでフィニッシュしたのだ。続いてミレン選手がアタック。しかし、モンスター田嶋のタイムには及ばずフィニッシュラインを通過。この瞬間、チームに歓喜の輪が広がった。
 

今大会がスタートすると三菱勢が速く、3日間のプラクティスではその一角を崩すに止まり、決勝の闘いは全く予想のつかないものとなっていた。しかしながら、チームスタッフは最後まで努力を惜しまず働き、マシンを仕上げてきた。そして、特筆すべきは、モンスター田嶋の経験とテクニックだろう。これなくして今大会の勝利は無かったとさえ言える。

また来年、ライバル達はより強力なマシンを持ち込んでくるだろう。そして、より一層高いレベルの闘いになる。しかし、それこそが電気自動車の未来を切り開いて行くのだ。
 

【ドライバー モンスター田嶋 コメント】
「今日は朝から天気が良く、行けると思っていたのですが、セバスチャン・ローブ選手が素晴らしいタイムをだしたあとからの雨で、記録への挑戦は終わってしまいました。そこからは、エレクトリック部門の中で1位を取る事に集中しました。

路面は滑りやすく、多くのアクシデントが発生した厳しいコンディションでした。しかし、エンジニアと相談して決めたセッティング内容が良く、結果的に、2011年に自分がガソリンカーで出したコースレコードを電気自動車で超えられたことは大きな喜びです。今後もさらに熟成を進めて。究極の電気自動車を目指します。応援ありがとうございました」

【ファイナル(決勝)リザルト】
エレクトリック・ディビジョン
(Pos. No. Driver Car. LapTime)
1 1 Nobuhiro Tajima TAJIMA  9:46.530
2 32 Hiroshi Masuoka MITSUBISHI 10:21.866
3 34 Greg Tracy MITSUBISHI 10:23.649
4 76 Rod Millen TOYOTA  10:24.301
5 24 Roy Richards eO  17:30.614
6 8 Ikuo Hanawa SUMMIT  DNF
7 100 Janis Horeliks HONDA  DNF