アップルの「iPhone 4S」

11月半ばから、クリスマス・年末年始商戦に向けたスマートフォンの発売ラッシュが始まった。NTTドコモの主役は、女性向けや「Xi」対応モデルなど、バリエーションに富んだAndroid搭載スマートフォンだ。もちろん、従来型の携帯電話の新製品も登場している。

KDDI(au)、ソフトバンクモバイルは、ワンセグやおサイフケータイに対応するAndroid搭載スマートフォンもあれば、それらに対応していないiPhoneもあって、選択の幅は広い。今回は、新製品の発売ラッシュが本格化する前の2011年11月の月間ランキングと、最新の週間ランキングをあわせて紹介しよう。

●「iPhone 4S」SB版16GBモデルが初の1位に

まず、機種別の月間ランキングからみていこう。量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、SIMフリー端末を含む携帯電話全体の11月の販売台数1位は、シェア8.6%でソフトバンクモバイル(SB)の「iPhone 4S」16GBモデルだった。前月1位だった「iPhone 4S」SB版32GBモデルは2位に、同じく2位だった「iPhone 4S」au版32GBモデルは5位にダウン。キャリア・容量の異なる「iPhone 4S」に挟まれるかたちで、NTTドコモの「GALAXY S II SC-02C」が3位に、11月24日発売のLTEサービス「Xi(クロッシィ)」対応モデル「GALAXY S II LTE SC-03D」が6位に入った。

1位のSB版16モデルから12位のau版64GBモデルまですべて合算すると、「iPhone 4S」のシェアは29.0%。10月よりシェアは7ポイントほど下がったものの、依然としてダントツのトップだ。キャリア別に分けて集計すると、SB版の19.3%に対し、au版は9.8%にとどまった。実質的な1位は、ソフトバンクモバイルが販売する「iPhone 4S」ということになる。

11月の携帯電話全体の月間販売台数に占めるスマートフォンの割合は67.6%。過去最高の70.0%を記録した10月に次ぐ高い水準だった。原動力は、最新モデルの「iPhone 4S」と8GBモデルも加わった「iPhone 4」。この2機種だけで、スマートフォンの販売台数の約半数、50.9%を占め、「iPhone 4S」1機種でも42.9%を占めた。日本上陸から3年がたち、スマートフォンのブランドとしてすっかり定着したiPhoneの根強い人気がうかがえる。

●注目の「iPhone 4S」キャリア別シェア対決は、6対4でソフトバンクが優勢

しかし、「iPhone 4S」のSB版とau版の売れ行きを比較すると、au版はやや失速気味だ。需要が一巡したのか、量販店ではなく、auショップで購入する人が増えたのか、au版の販売台数は前月の半分以下に落ち込んだ。対してSB版は、10月中の予約分が11月に入って売れたとみられ、前月比8割程度の落ち込みに収まった。「iPhone 4S」全体でみると、前月比6割程度なので、au版の販売台数減が響いている。その結果、11月の「iPhone 4S」に限ったキャリア別シェアは、ソフトバンクモバイル66.4%、au33.6%となり、キャリア間のシェアの差は、10月の6.0ポイントから32.7ポイントへと大幅に拡大した。

とはいえ、発売直後に売れたぶんの「貯金」があるため、12月8日までの累計では、ソフトバンクモバイル59.3%、au40.7%と、そこまで差は広がらず、比率はおよそ6対4。「FaceTime」など一部の機能が使えない、国際ローミング中のキャリア選択ができないなど、制約のあるau版の機能改善の対応時期などによっては、まだ逆転の可能性もあるだろう。先日、「NTTドコモがiPhoneの取り扱いを開始する」という報道があった。NTTドコモ側は否定したものの、この報道を目にしてiPhoneの購入を見合わせた人もいるかもしれない。「iPhone 4S」のキャリア対決の行方は、ドコモの今後の動向にも左右されそうだ。

●ドコモは「GALAXY」がワンツー・フィニッシュ、バラエティ豊かな顔ぶれに

続いて、主要3キャリア、NTTドコモ・KDDI(au)・ソフトバンクモバイルの11月のキャリア別月間トップ10を紹介しよう。なお、ここでは「iPhone 4S」「iPhone 4」はすべての容量を合算して1機種としてカウントしている。

NTTドコモは、サムスン電子製の「GALAXY S II SC-02C」と「GALAXY S II LTE SC-03D」が1位・2位に入った。3位の「Xperia acro SO-02C」まで、シェアは9%を超え、人気はランキング上位の機種に分散している。トップ10の顔ぶれは、従来型の携帯電話や、11月25日発売の女性向けスマートフォン「ARROWS Kiss F-03D」、コンパクトスマートフォン「Xperia raySO-03C」など、バラエティ豊かだ。

auは、前月に引き続いて「iPhone 4S」がトップ。しかし、シェアは45.9%から31.2%に大幅に低下した。トップ10のうち、2位・3位・8位はAndroid搭載スマートフォン、それ以外は従来型の携帯電話で、5位には、2011年秋冬モデルとして発表された新モデル「URBANO AFFARE」もランクインしている。

ソフトバンクモバイルも、auと同じく「iPhone 4S」がトップだが、そのシェアは61.3%に達し、「iPhone 4」を加えると、iPhoneだけで全体の8割近くを占めた。スマートフォンの販売台数は、NTTドコモ(31.9%)、au(27.7%)よりも多く、スマートフォンに限ったキャリア別シェア39.0%だった。

●週間ランキングは激戦期に突入 真の「iPhoneキラー」はどれ?

10月14日の発売以来、「iPhone 4S」のいずれかの機種が、携帯電話の週間ランキングで1位を獲得してきた。しかし、11月第4週(2011年11月28日~12月4日)は、12月2日発売のNTTドコモのシャープ製Android搭載スマートフォン「AQUOS PHONE SH-01D」が1位を獲得。10月第2週(10月10日~16日)から11月第3週まで、7週続いた「iPhone 4S」の連続1位記録はストップした。

キャリア、容量で分けてカウントしている6機種を合計すると、「iPhone 4S」がトップに立つ。ただ、シェアは23.0%にとどまり、11月の値に比べ、下がっている。「iPhone 4S」をキャリアごとに分けてカウントすると、シェア15.7%で「iPhone 4S」SB版がトップ。以下、「AQUOS PHONE SH-01D」(10.6%)、「GALAXY S II LTE SC-03D」(7.6%)、「iPhone 4S」au版(7.3%)と続く。

Android 4.0搭載した「GALAXY NEXUS SC-04D」はシェア1.9%で13位、不具合で発売初日に販売停止になり、12月2日から販売を再開した「REGZA Phone T-01D」は2.9%で9位、京セラ初のスマートフォンで、WiMAX対応の全部入りモデル「DIGNO ISW11K」は1.4%で21位だった。さらに今後、ドコモの「ARROWS X LTE F-05D」、auの「ARROWS Z ISW11F」「MEDIAS BR IS11N」など、話題の新製品の発売が控えている。

スマートフォンは、発売初日から数日間に大量に売れる傾向がある。新製品の発売ラッシュの間、週間ランキングは、1位をはじめ、上位陣の順位が大きく入れ変わる変動期が続くだろう。12月の月間ランキングが楽しみだ。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。