夏の定番フェス『a-nation』が去年から大幅に変わったのを知っていますか?

昨年より、従来の全国縦断スタジアムツアー形式から東京・大阪の二大都市でのスタジアムフェス、そして渋谷を中心とした都市型フェスという2つのフェスを軸に大きく変化した『a-nation』。そして今年も大きく進化するとのこと。

全容をつかむためには、やはり主催のエイベックスの方に聞かなきゃわからない。ということで、『a-nation』を統括するエイベックス・ライヴ・クリエイティヴ株式会社の制作事業本部 第2制作部長の小川貴詩氏にお話をお伺いすることに。

「2002年から始まった『a-nation』は、出演するアーティストもエイベックス所属で、あくまでエイベックスのファンの方に対する感謝という部分を込めたイベントでした」

そう語る小川氏。それが昨年11年目を迎えるにあたって、単なるライヴのツアーではなく、まったく新しいものを作ろうと思い立った。ここでエイベックスは大きく舵を切る。エイベックスという自社の枠を外してしまおうという前代未聞の決断をしたのだ。いわゆる”エイベックスファンのための『a-nation』”から、”すべての人のための『a-nation』”へと、方向を大きく転進したのだ。
 

しかしこれまでも『a-nation』は、毎年チケットは完売状態。なぜ方向性を大幅に変更したのかがわからなかった。

現実に帰れば、この数年で数えきれないほど膨れ上がった夏フェスは淘汰されつつある状況。今年も開催の休止や終了が相次いでいる。そのような逆風の中で、『a-nation』はJ-POPにベクトルを振り切った独自のコンセプトで、他のロックフェスとは一線を画し成功を収めてきた。

そんな中での昨年の方向性変更、これにはエイベックスの壮大な構想が隠されていた。

「『a-nation』も10年間やってきて、この先の10年を考えたときに、このままで良いのか?と感じていたんです。ライヴだけじゃ無い、エンタテインメントのプラットフォームを作りたかった!『a-nation』を変化させた理由は、その一心です」

その変化の過程で生まれた課題が、新たな形の『a-nation』を以前の全国縦断形式でやるのは不可能だということ。そこで思い切って昨年から、コンテンツを東京の国立代々木競技場を中心とした・渋谷(一部大阪)に集約して、集中投資する作戦に切り替えたのだという。

しかしひと言で「エンタテインメントのプラットフォーム」と言っても、そう簡単に作れるものではない。実際、去年の『a-nation』ではあと一息と思われる要素も出たという。総合ブランディングに力を入れすぎて、個々のコンテンツのブランディングにスキができてしまったのだ。

「昨年は、一昨年(2011)から180度とまではいかないまでも、かなりの角度で『a-nation』をライヴだけでない総合エンタテインメントとしての夏フェスに変化させることができました。ただブランディングに力を入れすぎて、中身のコンテンツの告知が十分にできなかったのです」

例えば代々木の会場では特設のプールをかなり苦労して作ったそうだが、観客の認知度は伸び悩んだ。『a-nation』自体が開催していることは認知されても、あくまでライヴイベントとしてしか認知されなかったのだ。「ロゴマークにある”a”は、今までは”avexのa”という意味だったのですが、去年からは”アーティストのa”、”オーディエンスのa”、”アジアのa”と様々な意味を込めました」と語る小川氏。しかし昨年の段階では、ライヴ以外のコンテンツは消化不良に終わった面もあった。しかし今年は違う。何が違うのか?