ほっこりとしたストーリー性から、軽快なロックンロールを思い付いた

撮影/西村彩子

――そうですね。“タイアップ曲”ということについてお聞きしていきたいのですが、今回、1月11日にリリースされた「ないしょダンス」は、滝藤賢一さんが映画初主演を務める『ひみつのなっちゃん。』(公開中)の主題歌として作られた楽曲だったそうですね。

はい。映画の主題歌というのは初めてだったので、お話を頂いたときはすごく嬉しかったし、ビックリしました。何を求めてもらってるのかな?って考えましたし。でも、台本を頂いて、読んで、なんか、すごく求められてる感じが分かった気がしたというか。

“オネエ”仲間である“なっちゃん”の突然の死をキッカケに、バージン(滝藤賢一)、モリリン(渡部秀)、ズブ子(前野朋哉)の3人のドラァグクイーンが、お葬式に参列する為に、なっちゃんの地元である岐阜県・郡上八幡へと向かうロードムービーという、ほっこりとしたストーリー性から、軽快なロックンロールを思い付いたんです。

“生き方”についての反骨心と、いろんな人たちとの関係性のあたたかさが台本を読ませて頂いたときに、すごく伝わって来たんです。シーンごとの情景が頭にハッキリと見えたのもありましたし、監督とお話しして、この映画の舞台になっている監督の故郷である郡上八幡を、監督がすごく愛しているんだなっていうことが伝わって来たことも、すごく大きくて。

最後に元気になってくれる様な曲を作れたらいいなって思ったんです。

――映画の主題歌としては「ないしょダンス」が初になりますが、2021年には、JRA(日本中央競馬会)春のGⅠ『天皇賞(春)』のタイアップソング「塊」を作詞作曲されていますよね。これは“物語”ではないものへのタイアップソングということだったと思いますが、そういう場合、どういう視点から広げていく感じですか?

「塊」を書かせてもらったときは、『天皇賞(春)』ということで、いろいろと資料を貰って、競馬場での景色を頭の中で想像したんです。頑張って走る馬の姿や、その馬に乗って一緒に走る騎士の想いとか、その日に勝負をかけて集まって来た人たちの盛り上がってる感じとか、そこに存在する欲望とか情熱とか、広い場所や広い空や、その場の情景を頭に描いたところから広げていったんです。

そんなことを想いながら書いたんです、「塊」は。今思うと、馬だったと思うんだけど、黒い塊みたいなものが、すごい勢いでぶつかり合ってる感じを頭の中でイメージしたんです。その熱を曲にしようって思ったんですよね。

撮影/西村彩子

――渋谷さんの中で、曲は景色と繋がりが深いんですね。

そう。全部景色があるかも。景色が浮かんで来て、そこから音が生まれていく感じかも。映像と音はセットだなぁって思う。

――歌詞もですか?

いや、歌詞はまた違う。歌詞はまた景色というより、そこにあるいろんな想いや感情を重ねていく感じというか。競馬のタイアップのときは、映画と違って、そこに台本で描かれた物語はないけど、やっぱりそこにはドラマがあるなぁと思いながら書いたかな。でも、「塊」の歌詞は形にするのがすごく難しかった記憶がありますね。

――なるほど。でも、たしかに、人生って俯瞰して見たら、壮大なドラマですもんね。よく、いろんなことがある度に“うわっ。ドラマみたいな展開だなこれ!”って思ったりします、自分の人生なのに他人事みたいに(笑)。良いときも悪いときも。

たしかにね(笑)。今、話してて思ったんですけど、普段曲を作るときも、いろいろと情景やそこにある景色を思い浮かべながら書くことが多いかも。

すごく古い話になるけど、昔、ウォークマンで音楽聴いてた頃から、外で音楽聴くのが大好きやってん。外に行くとき音楽が無いと出掛けられない感じというか。景色と音がセットじゃないと聴けない、みたいな。風景の中で、景色を見ながらしか音楽聴けない感覚があって。電車の中で音楽を聴くのが大好きだったんですよね。BGMみたいな感覚。