次に登場したのが、「北海道産未経産牛もも肉(赤身)のタリアータ」(3,200円)。ステーキを薄く切ったイタリア料理がタリアータだ。

塩コショウをした牛もも肉にオリーブオイルをかけ、グリル後、オーブンで焼く。繊維に沿ってカットしたものにミニトマトやルッコラ、パルミジャーノ・レッジャーノを盛り付けえてある。アクセントにバルサミコが添えられていた。

赤身肉なので噛みごたえもあり、噛めば噛むほど肉の旨みを感じる。サシが入った牛肉がもてはやされているが、近年歯ごたえがある肉のほうが旨いと思う人が増えてきた。エグミのあるルッコラと一緒に食べると、赤身肉の旨みをガツンと感じる。

この店はピッツァがメインだが、パスタや肉料理も食べてほしいという思いもあり、イタリア料理全般を提供している。

オーナーの坂本さんは、ピッツァ職人になりたくて18歳の時、料理人の道を歩み始めた。途中でフランス料理の修業もし、その後、リストランテの名店「アルポルト」の門を叩いた。

イタリア料理の場合、ピッツァはピッツエリアで、一般的な料理はリストランテやオステリアなどで食べるケースが多い。けれど、坂本さんは、ピッツエリアだけでなく、リストランテでも修業したことで、イタリア料理全般を提供できるテクニックと知識をマスターした。

そんな坂本さんが右腕に選んだのが、佐々木勝晴シェフだ。佐々木シェフはフランス料理とスペイン料理を修業した持ち主。これまで身につけた南欧料理の技に、坂本さんから伝授されたピッツァを焼く技術やイタリア料理のセンスを融合させた。

この日、佐々木さんが北海道産未経産牛もも肉(赤身)のタリアータを焼いてくれた。焼き加減も盛り付けも完の璧。肉を喰らう喜びを五感で体感させてくれた。

 

 

先ごろ、日本ナポリピッツァ職人協会が、ピッツァ職人日本一を競う大会をフーデックスの会場で開催した。坂本さんも参戦したものの、残念ながら今回は日本一になれなかった。

その2日後、愛弟子の宮本沙矢香さんが師匠の雪辱を果たした。宮本さんが焼いた「フォルテ」(イタリア語で強い、という意味)が優勝したのだ。宮本さんは、世界初の女性だけのピッツァ職人大会で見事日本一に輝いた。

写真提供:Jaffaさん

長年修業を積んできた坂本さんが独立し、「ピッツェリア ダ・グランツァ洗足本店」を開業したのは2016年暮れのこと。店もシェフもピッツァ職人もまだ若いが、今後も研さんを続け、ますます美味しいピッツァやイタリア料理を提供してくれるはずだ。

【ピッツェリア ダ・グランツァ洗足池店】
住所/東京都大田区 上池台2-37-6 鈴木ビル1F
電話/03-6421-9696
営業/11:30~15:00(LO14:30)、18:00~22:30(LO21:30)。土日祝は17:30~22:00(LO21:00)

ランチは1,200円~。ディナーは3,000円~。ビスマルクは1,600円(ランチの場合プラス300円)。ランチ時でもタリアータのようなアラカルトもオーダー可能。

東京五輪開催前の3歳の時、亀戸天神の側にあった田久保精肉店のコロッケと出会い、食に目覚める。以来コロッケの買い食いに明け暮れる人生を謳歌。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』、『自家菜園のあるレストラン』、『一流シェフの味を10分で作る! 男の料理』などの他、『笠原将弘のおやつまみ』の企画・構成を担当。