お金の使い方を「ウェルビーイング」を基準に考えてみよう

お金のウェルビーイング向上を考えてみたとき、ポイントとなるのは、

・しっかり稼ぐこと、ただし楽しく働くこと
・無理なくムダなく出費し日常生活を楽しむこと
・未来のお金の不安を明らかにし、備える準備をすること
・収支の余裕を、貯蓄や投資に回し資産形成すること

というお金の流れをしっかり整え、資産形成にサイクルを回していくことになります。

といってもあまり難しく考えることはありません。

例えばお金を使うとき、「ウェルビーイング」を意識してみます。最近の言葉ではコスパ、が近いニュアンスかもしれません。

コスパというとケチケチしているイメージですが、同じことを「幸せを買えているか」と考えてみます。

使ったお金に見合う満足や幸福感、できれば使った金額以上の幸せをそこから手に入れることができるかを、お金を使う基準として考えてみるのです。

そうすると、たくさんの無感動な出費があぶり出されてきます。

あるいはお金をかけて感動や興奮が得られた出費もあることに気がつきます。

どうせ無感動な出費なら、より低コストで実現したほうがいいでしょう。これこそ節約のポイントです。

買わなくてもすむものは買い控えすれば出費がゼロになります。より安い商品で置き換えできるなら差額が手元に残ります。

一方で、友人や家族との旅行、好きな俳優の観劇やアーティストのライブ参加などは、高額出費になるかもしれませんが、お値段以上の感動が手に入る「幸せな出費」かもしれません。

だとすれば、他の出費をやりくりして予算はキープしてもいいでしょう。

同じ日々を過ごすのなら、たくさん楽しみや喜びを感じられるほうがいいはずです。

お金についても気持ちよく使い、また不安を軽くするように用いたいものです。

今までの節約術は「ムダは禁止」「高い買い物は禁止」とガマンばかり考えてきました。

これからは「たくさんウェルビーイングを手に入れるお金の使い方」として考えてみてください。

未来のお金の不安軽減は資産形成が重要になる

前半で少し紹介したOECD(経済協力開発機構)のウェルビーイングの定義ですが、現在のウェルビーイングと将来のウェルビーイングに分けて分析をしていることも注目に値します。

未来のウェルビーイングというのは、今現在だけではなく将来も幸せな人生を歩むことができるようにすることです。そのためにどのようなリソースを確保できるか、が問われます。

これもまた、「ファイナンシャル・ウェルビーイング」目線が役に立ちます。

将来の経済的な不安を解消すること、つまり計画的な資産形成を行うことは、私たちの未来の不安を軽減させる力となるからです。

未来に必要なお金はどれくらいか考え(例えば「老後に2000万円」)、そのために今行われている準備がどれくらいか確認し(日常生活費は公的年金制度でおおむね確保され、また退職金制度があるならそこで2000万円の一定部分は準備されている)、さらに不足する分について安心を手に入れるための行動をします。

NISAやiDeCoに加入し、毎月一定額を積み立て、投資をする人が増えています。

実はこれ、未来のウェルビーイングを獲得していくために今できる大切なステップと整理することができるわけです。

それは同時に、目の前のウェルビーイングを高めることにもなります。

なぜなら、将来に対する漠然とした不安は今現在のウェルビーイングを下げてしまう要素であり、経済的備えがこうした不安を解消してくれる力となるからです。

あなたもぜひ、お金と幸せの関係について考えてみてください。考えれば考えるほど、誰でも幸せのヒントがある、ということに気がつくはずです。

お金との付き合い方を少し見直してみるだけで、あなたのウェルビーイングはもっと高められるかもしれません。

――お金と幸せの関係について、「ファイナンシャル・ウェルビーイング」という本を書いてみました。よろしければお手にとっていただければ幸いです。

やまさき・しゅんすけ 「人生の幸せの問題は、たいていはお金の問題である」という考えのもと、お金と幸せについて考えるファイナンシャル・プランナー(FP)。公的年金制度・退職金制度、投資教育が専門。Twitterでは毎日一言「お金の知恵」をツイートしてます。副業はオタクで、まちあるき、アニメとコミック、ゲーム好き。所属学会は東京スリバチ学会と日本年金学会