2月上旬から本格化した今年の携帯電話春商戦。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、2014年2月のスマートフォンの販売台数は前年を上回り、3月も前年を超える水準で推移している。MNP(番号ポータビリティ)向けの高額キャッシュバック・端末代割引や、一部機種の値下げがプラスに働いているようだ。

●3キャリアとも「iPhone 5s」を猛プッシュ 月間販売台数は過去最高

キャリアごとに容量を合算すると、2014年2月の携帯電話の販売台数1位は、前月に引き続き、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5s」だった。2位のauの「iPhone 5s」とはわずか0.2ポイント差で、ほぼ同率1位といっていいだろう。ドコモの「iPhone 5s」は、シェアは前月の2倍近くに跳ね上がったものの、順位は前月と同じ3位のままだった。

ドコモ、au、ソフトバンクモバイルがMNP向けの目玉機種としてプッシュしたことで、「iPhone 5s」の月間販売台数は発売以来最も多く、携帯電話全体に占める販売台数シェアも44.5%と、発売以来最も高かった。スマートフォンに限ると54.3%を占め、2月に販売されたスマートフォンのほぼ2台に1台が「iPhone 5s」だった計算になる。容量別では16GB/32GBだけで約9割となり、発売直後とは異なり、価格の安い16GBモデルが人気を集めている。

iPhoneの割合(iPhone率)は、3キャリアすべて3割以上。iPhone率が他社よりも低かった後発のドコモですら4割近い39.5%に達し、auも前月の47.6%から55.2%に上昇した。対して、ディスプレイいっぱいに画面が広がった狭額縁デザインのAndroid搭載スマートフォン「AQUOS PHONE Xx 302SH」「AQUOS PHONE Xx mini 303SH」が売れたソフトバンクは63.7%と、前月とほぼ同じ水準だった。

●auのファブレットは低調 iPhone以外のコンパクトモデルに隠れたニーズ?

続いて、キャリアごとのランキングをみていこう。ドコモは、「P-01F」をはじめ、3位・4位・8位・10位に、従来型携帯電話がランクインした。<iPhone好調の裏で縮小するケータイ 3年間で販売台数は半分以下に>でも触れた通り、従来型携帯電話は年々販売台数が減少し、普及率や実際の利用率を考慮せず、販売データだけで判断すると、とても「復権」とはいい難い。ただ、製品数が減ったことでランキングの上位に入りやすくなり、一時より存在感は高まっている。

auは、1位~3位は前月と変わらず、4位以下は順位に動きがあった。1~2月に発売した2014年春モデルは、アジアを中心とした海外で人気の「ファブレット」に分類される約6.4インチの大画面スマートフォン「Xperia Z Ultra SOL24」の10位が最上位。日本初の曲面ディスプレイを採用した「G Flex LGL23」は22位にとどまった。

「ファブレット」を含むAndroid搭載スマートフォンは、5インチ以上の大画面、長時間の電池もちを実現する大容量バッテリ、高性能クアッドコアCPU、明るいレンズを採用したカメラ、フルセグ(地上デジタル放送)/ワンセグ、便利なNFC(近距離無線通信)など、「ハイスペック」をウリにする機種が多く、ドコモの「Xperia Z1 SO-01F」や、ソフトバンクモバイルの「AQUOS PHONE Xx mini 303SH」のようなコンパクトモデルは、主流から外れた存在。それでも、キャリアごとのランキングではともに上位に食い込み、隠れたヒットといえるだろう。

●過熱するキャッシュバック 2月はアップルの「一人勝ち」

たった1機種で約4割というシェアが示す通り、2月はアップルの一人勝ちに終わった。キャリア別では3社ほぼ横並びで、携帯電話全体の約8割を占めるスマートフォンに限ると、au34.9%、ドコモ33.0%、ソフトバンクモバイル28.9%(ソフトバンクグループ32.0%)と、わずかにauが優勢だった。 今回の「iPhone 5s」のキャッシュバック合戦の火つけ役はドコモ。しかし、その攻めの戦略が、競合を焚きつけてしまった感は否めない(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベース(パソコンの場合)で、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。