多種多様なモバイルバッテリ。左から、Ankerの「Astro M3」、エレコムの「DE-M02L-3010BK」、日立マクセルの「MPC-C2500WH」

スマートフォンの普及とともに、販売数が増えているモバイルバッテリ。外出中の使用時間が長く、バッテリのもちが心配なスマートフォンユーザーにとって、必携のアイテムになっている。ここでは、家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」をもとに、まだ持っていない人や、より大容量で使い勝手のいいものを望んでいる人向けに、バッテリ容量5000mAh未満のスタンダードタイプと、5000mAh以上の大容量タイプのランキングを紹介しよう。

●意外にバリエーションの多いモバイルバッテリ 目的に合ったものを選ぼう

iPhoneのバッテリ容量は非公開だが、Android搭載スマートフォンの多くは、スペック情報としてバッテリの容量を公開している。例えば、約5インチの大画面モデル「Xperia Z1 SO-01F」は3000mAh、約4.3インチのコンパクトモデル「Xperia Z1 f SO-02F」は2300mAhのバッテリを搭載し、5000mAhのモバイルバッテリなら、満充電の状態から「Xperia Z1」は約1.6回、「Xperia Z1 f」は約2.1回、充電できる計算だ。バッテリ容量非公開のiPhone/iPadについては、メーカーの実測値にもとづいて、「およそ○回充電できる」と記載されているケースが多い。実際には、充電時のロスなどの影響で差異があり、充電できる容量/回数は公称より少なくなるが、この数値を目安にするといい。

USBポート数が2ポート以上なら、スマートフォンを2台同時に充電でき、「2A出力」に対応していれば、スマートフォンだけではなく、iPadなどのタブレット端末や他のUSB機器を充電することもできる。つないだスマートフォンやモバイルバッテリ本体の急速充電に対応するものもあって、バリエーションは意外に多い。利用シーンや目的に合わせて選ぼう。

ワゴンに山積みになっているような特価品・セール品は、バッテリ容量が少なく、大容量バッテリを搭載する最新スマートフォンだとフルに充電できないかもしれない。ただし、そのぶん軽くコンパクトなので、持ち運びやすく、携帯性を重視するならオススメだ。逆に、停電時など、万が一の際に利用したいなら、できるだけ大容量のものを選んだほうが安心できる。PCのUSBポート経由だと意外に時間がかかる本体の充電時間にも気をつけたい。

●スマートフォンもモバイルバッテリも好調 3月の月間販売数は過去最多

モバイルバッテリが注目を集めるようになったきっかけは、2011年3月11日に発生した東日本大震災だ。それまではややニッチな存在だったが、必要性・利便性が一般にも認知され、11年3月を境に販売数量が急増した。それ以降も、スマートフォンの普及に合わせて伸び続けていたが、13年夏頃から徐々に鈍化。13年9月から今年2月まで、販売数量はずっと前年を下回って推移している。スマートフォン本体を買い替えても、モバイルバッテリは継続して使えるので、購入者が減少したと考えられる。

「BCNランキング」によると、今年3月のスマートフォンの販売台数は過去3年間で最も多く、史上最高の水準だった。その影響で、モバイルバッテリも好調。月間販売数量は3年前の11年3月の5.3倍に達し、これまで最大だった12年12月を上回り、過去3年間で最多となった。税別平均単価は約2500円で、3年前より300円ほど下がった。価格はそれほど変わらないが、バッテリ容量が増え、値頃感は高まっている。

●一番人気は「5000mAh以上6000mAh未満」、大容量の「1mAh以上」も約1割

容量によって、スタンダード/大容量の二つに分け、カラーバリエーションを別々に集計した製品別のトップ10を紹介しよう。5000mAh未満のスタンダードタイプは、3000mAhのエレコム「DE-M02L-3010BK(ブラック)」がシェア9.4%で1位。2位は3000mAhの日立マクセル「MPC-C2500WH(ホワイト)」、3・4位は4700mAhのエレコム「DE-M02L-4710」のブラック・ホワイトだった。これらはいずれもUSBポート数1、出力電流1Aのスマートフォン用モバイルバッテリだ。

5000mAh以上の大容量タイプは、Ankerの「Astro M3(Amazon限定セット・ハイパワー電源アダプタ付属モデル)」がシェア15.9%で1位。1万3000mAhという大容量ながら厚さ22mmと薄く、価格も手頃で、コストパフォーマンスが高いモデルだ。モバイルバッテリ全体でも、「DE-M02L-3010BK」を抑えてトップだった。2・3位は、5200mAhのエレコム「DE-M01L-1920」のブラック・ホワイトで、4位にはAnkerの7800mAhモデル「Astro M2」が入った。

バッテリ容量帯別の販売数量構成比は、以前は7~8割を占めていた「5000mAh未満」が50.2%、「5000mAh以上」が49.8%と、ほぼ半々。細かくみると、「5000mAh以上6000mAh未満」が34.0%で最も多く、次が29.7%の「2000mAh以上3000mAh未満」。中間の「3000mAh以上5000mAh未満」は17.2%とやや少なく、「6000mAh以上1万mAh未満」は1.3%、「1万mAh以上」は10.1%だった。

「1万mAh以上」は、12年の年末から販売数が増加し、13年10月以降、全体の1割前後を占めるようになった。代わりに、3年前は全体の6~7割を占め、主流だった「2000mAh未満」の構成比は低下している。USBポート数は、「1」が61.3%、「2」が38.0%、「3」が0.7%で、「4以上」はわずか0.04%。5000mAh以上の大容量タイプでも、ほとんどが「2」だ。

価格帯別の販売数量構成比を集計すると、平均単価以下の「2000円未満」が35.3%、平均単価と同程度の「2000円以上3000円未満」が41.6%と、それぞれ4割前後を占めた。平均単価よりやや高い「3000円以上4000円未満」も16.7%で、価格だけではなく、バッテリ容量などのスペックやデザインを重視して選ぶ傾向になっていることがわかる。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベース(パソコンの場合)で、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。