5月半ばから、「Xperia Z2」や「GALAXY S5」など、夏モデルの注目機種が発売されている。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、スマートフォンの販売台数は4月に入って急落。2月、3月に発生した空前の駆込みの反動――具体的には、一部の機種を除いてMNP向けキャッシュバックがなくなった影響だろう。5月は、4月より販売台数自体は増えたものの、前年同月比は4月の61.5%を下回る59.0%。従来型携帯電話を含む携帯電話全体でも、販売台数は前年の約6割にとどまった。

数字の上では「深刻な販売不振」としかいいようがない状況だが、料金プランや新サービスなど、話題にはこと欠かない。ドコモは、iPhoneに続いてiPadの取扱いを開始。ソフトバンクモバイルは、「国内音声通話無料」を打ち出したドコモの新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」を追いかけるかたちで、当初の内容を一新した新料金プラン「スマ放題」を発表し、7月1日に開始する。KDDI(au)は、夏モデルと同時に大々的に発表した「au ID」と連携した新しい電子マネーサービス「au WALLET」を5月23日に開始。そのお得感から、申込みが殺到しているそうだ。これまでやや手薄だった長期継続利用者の満足度アップや他社との差異化のため、三社三様の取り組みを進めている。

●「iPhone 5s」がトップを守る、新Xperiaも上位に

2014年5月の携帯電話の販売台数1位は、前月に引き続き、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5s」だった。しかし、販売台数シェアは、初めて1位を獲得した13年11月以降最も低く、かろうじてトップを守った格好だ。「iPhone 5s」のキャリア別累計販売台数はソフトバンクモバイルが最も多いが、5月に限ると、シェアは、ソフトバンクモバイル34.8%、au34.3%、ドコモ30.8%と接近し、ドコモだけやや低かった。しかし、6月に入ると状況は一転。現時点ではドコモがシェア35%超を占め、一歩リードしている。

5位には、5月21日発売のドコモの夏モデル「Xperia Z2 SO-03F」がランクイン。トップ10は、アップルのiPhone3機種、ソニーモバイルコミュニケーションズの新旧「Xperia」3機種、シャープの「AQUOS PHONE」2機種(夏モデルからブランド名を「AQUOS PHONE」から「AQUOS」に変更)、そして従来型携帯電話2機種と、多彩な顔ぶれになった。

auの「Xperia Z1 SOL23」とドコモの「Xperia Z1 SO-01F」を同一機種とみなして合算すると、トップ3は、「iPhone 5s」(21.7%)、「iPhone 5c」(5.7%)、「Xperia Z1」(5.6%)。依然として「iPhone 5s」がトップだ。iPhone全体の月間販売台数は、「iPhone 5s/5c」発売以降では、4月に次いで2番目に少なかったが、他の機種/ブランドとの差はまだ大きい。

●「Xperia Z2」以外の夏モデルはやや低調な滑り出し

続けて、キャリアごとのトップ10をみていこう。ドコモは、「iPhone 5s」に続き、夏モデルの「Xperia Z2 SO-03F」が2位、「GALAXY S5 SC-04F」が7位に入った。従来型携帯電話の「P-01F」「N-01F」も4位、9位につけ、新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」の「カケホーダイ」の反響の大きさがうかがえる。

auは、8位に5月23日発売の夏モデル「Xperia ZL2 SOL25」がランクインした以外、前月とほとんど同じだった。夏モデルの多くは、LTEサービス「4G LTE」に加えて、UQコミュニケーションズが提供する受信最大110Mbpsの高速データ通信サービス「WiMAX 2+」に対応し、指定のプランを契約していれば追加料金なしで「WiMAX 2+」を利用できる。ただし、発売済みの夏モデルの売れ行きをみると、このメリットがユーザーに広く伝わっているかどうかは、やや疑問だ。

ソフトバンクモバイルも、2位と3位が入れ替わり、6位に5月23日発売の唯一の夏モデル「AQUOS Xx 304SH」がランクインした以外、前月とほぼ同じだった。「AQUOS Xx 304SH」をはじめとする最新のシャープ製スマートフォンは、ディスプレイ面の3辺の縁を細くした狭額縁スタイル「EDGEST(エッジスト)」を採用し、デザイン限界まで広い画面になっている。

夏モデルがまだ出揃っていないこともあって、6月に入ってもスマートフォンの販売台数は前年を下回り、以前の水準には戻っていない。ドコモの「Xperia Z2 SO-03F」は、週次集計で、発売以来4週連続で機種別1位を獲得するなど好調だが、発売から3週間の累計販売台数は、「ドコモのツートップ」として価格や宣伝面で優遇され、大ヒットした昨年5月発売の「Xperia A SO-04E」に比べるとだいぶ少ない。振り返ると、ここ数年はイメージとキャッシュバック施策に支えられた「バブル」だったようだ。(BCN・嵯峨野 芙美)

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