『花子とアン』公式サイトより

現在放送されているNHK連続テレビ小説「花子とアン」はご覧になっていますか?
「花子とアン」は『赤毛のアン』をはじめ、多くの英米文学を名翻訳で届けた村岡花子さんの、波乱万丈の半生を描いたドラマです。

ドラマの原案は、村岡花子さんの孫に当たる村岡恵理さんが執筆された評伝『アンのゆりかご 村岡花子の生涯』(新潮文庫/平成23年)。
村岡花子さんは関東大震災、太平洋戦争と続いた激動の時代を生きた女性で、生涯に刊行した翻訳書は、モンゴメリの「アン・シリーズ」をはじめ、のべ400冊を超えています。

『赤毛のアン』は翻訳家である村岡さんが昭和14年、戦争へと向かう不穏な時勢に、カナダ人宣教師から友情の証として贈られたルーシー・モード・モンゴメリ著の『Anne of Green Gables』という本を翻訳したものです。空襲が続く戦火の中、彼女は命がけで原書と原稿用紙を守り「多くの人に明日への希望がわく物語を届けたい」と、翻訳を続けました。

今回はそんな、「花子とアン」に関係する人々を少しだけ、ご紹介したいと思います!

 

アンの作者モンゴメリと、村岡花子の「孤独と魅力」

まず『赤毛のアン』の作者である「ルーシー・モード・モンゴメリ」(1874~1942)をご存知ですか?

モンゴメリは小説を22冊出版しているのですが、彼女の生き方は、物語の主人公たちに、度々投影されています。
とがったあご、青白い顔、そばかす、やせた体、時に濃い色に変わる灰色の瞳――これらはいずれも少女時代のモンゴメリと「赤毛のアン」の主役であるアン・シャーリーに共通する特徴です。

モンゴメリは9歳の時に初めて詩を書いて以来、たゆまぬ創作を続け、常に作家への道を目指してひたすら突き進んだ女性です。他の仕事に従事していても、牧師の妻になっても、子どもが生まれても、作家として成功するための勉強を怠ることはありませんでした。

しかし同様に、家族に縁の薄い人でもありました。母とは幼い頃に死別、厳格な祖父母に引き取られ、育てられる。10代の一時期、父の再婚家庭で過ごしてみるものの、しっくりいかない。モンゴメリもアンも悲しい小説を好み、王女や殺人や溺死が出てくるお話を書いていたことも共通しています。そして、とても豊かな感受性や美しいものを愛でる心を持ち、愛にあふれる家庭に憧れていました。