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2012年4月2日から放送されていた、第86シリーズとなるNHK朝の連続テレビ小説『梅ちゃん先生』が、9月29日に最終回を迎えた。平均視聴率は20.7%(ビデオリサーチ社調べ・関東地区)。この人気を受け、10月13日(土)と20日(土)には、BSプレミアムでスペシャル版が放送されることも決まっている。
ただ、その一方で、内容に関する不満や批判も、ネットを中心に番組開始当初からかなり噴出していた。2012年を代表するヒット作でありながら、不出来という声も多かったのだ。ということで、今回はスペシャル放送を前に、極端な賛否両論が巻き起こった『梅ちゃん先生』の成功と失敗を振り返ってみよう。
朝ドラでは9年ぶりの視聴率20%超え
戦後の東京・蒲田を舞台に、ヒロインとその家族、そして地域の人々が、明るく前向きに生きる姿を描いた『梅ちゃん先生』は、平均視聴率20.7%という高い支持を得て終了した。朝ドラの平均視聴率が20%を超えたのは、2003年3月末から9月末まで放送された『こころ』以来、9年ぶり。『ゲゲゲの女房』『おひさま』『カーネーション』も超える高視聴率だった。ヒロインの梅子を演じたのは堀北真希。その梅子が、医学部教授である父・建造(高橋克実)の医師としての姿を見て医学を志すようになり、やがて地域医療に専心していく、というのが作品のメインストーリーだった。
このドラマが一番支持されたポイントは、やはり堀北真希が演じた梅子の穏やかなキャラクターにあったと思う。梅子はドジで、勉強が苦手で、優秀な姉・松子(ミムラ)や兄・竹夫(小出恵介)と比べられることも多く、劣等感のかたまりのような女の子だった。
こういうまだ未熟な若いヒロインが、頑張って成長していくという話は朝ドラの王道だが、梅子はヒステリックになったり、何がなんでも這い上がろうと気合が空回りしたりすることはなかった。いつも明るく、穏やかで、まわりの人間に助けられながら、少しずつ前へ進んでいくタイプだった。そういうほのぼのとした雰囲気が、慌ただしい現実の朝に受け入れられたような気がする。
この不景気な時代、みんな頑張って生きているのに、朝ドラのヒロインまでガツガツされては気の休まるところがない。苦労や悩みにぶつかっても、とにかく笑顔を絶やさず、前向きに生きていく──。そんなヒロインの頑張り過ぎない感じが、かえって見る者を癒したんじゃないだろうか。梅子の家族や地域の人たちにしても、堅物でほとんど笑わない建造や、口の悪い隣人・幸吉(片岡鶴太郎)などがいたものの、基本的にはさわやかで、本当の悪人は誰ひとりいなかった。そんな作品全体の穏やかな雰囲気が、肩肘張らずに楽しめるテイストにつながり、多くの支持を得たんだと思う。