今年も半分が過ぎ、折り返し地点を迎えた。年始の時点で、2014年は携帯電話の料金プランが一新され、業界全体が大きく変化する年になると予想した人は、ほとんどいなかったに違いない。通信費の節約策として、MVNO(仮想移動体通信事業者)が提供する「格安SIM」も注目を集めている。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、スマートフォンの月間販売台数は、3月をピークに急落し、4月以降、3か月連続で前年を下回っている。販売台数自体は、4月を底に、5月、6月と増加し、ややもち直しつつあるが、OS、キャリアを問わず、全体的に低迷している状況に変わりはない。例年通り次期iPhoneの噂が流れはじめ、主要3キャリアの新料金プランが出揃った6月は、嵐の前の静けさといった状態だった。

月額2700円または2200円の定額で、時間や回数の制限なく、国内音声通話が無料でかけられる基本プラン(音声通話プラン)と、通信量の上限を細分化した新たなデータ通信プランを組み合わせた新料金プランは、ドコモが真っ先に発表し、ソフトバンクモバイル、KDDI(au)もこれを追いかけた。ソフトバンクモバイルは、二番手として7月1日に「スマ放題」を開始。「カケホとデジラ」として最後に発表したauは、8月13日の提供開始前に通話定額サービスを先行して体験できるキャンペーンを実施し、事実上、7月1日に「国内音声通話定額」の時代がスタートしたことになる。基本使用料に相当する音声通話プランの月額料金が同額なので、3社横並びの印象が強いが、データ通信プランや長期継続利用者向けの割引・優遇の内容はキャリアによって異なり、以前よりも料金に関する比較は難しくなっている。

●根強い人気の「iPhone 5s」 上位にはau・ドコモの機種が多くランクイン

2014年6月の携帯電話の販売台数1位は、前月に引き続いてソフトバンクモバイルの「iPhone 5s」だった。シェアは5月から0.3ポイント上昇し、連続1位記録を8か月に伸ばした。3位まではすべて「iPhone 5s」だが、5位以下は昨年秋発売の「P-01F」「GRATINA」を含め、ドコモ、auのスマートフォン・従来型携帯電話が占めた。

キャリアを区別せずに集計すると、21.6%の「iPhone 5s」、11.6%の「iPhone 5c」、5.1%の「Xperia Z2 SO-03F」の順になり、依然として「iPhone 5s」がトップだ。2014年6月30日までの累計販売台数は、歴代iPhoneのなかで、12年9月発売の「iPhone 5」が最も多いが、同時に発売した「iPhone 5s」と「iPhone 5c」を合算すると「iPhone 5」を超える。2モデル展開は、日本市場に限ってはプラスに働いたといえるだろう。

次に、キャリアごとのトップ10をみていこう。ドコモは、「iPhone 5s」に続き、夏モデルの「Xperia Z2 SO-03F」が2位、「GALAXY S5 SC-04F」が3位に入った。「Xperia Z2 SO-03F」は、キャリア・容量ごとに別々にカウントする機種別集計では、5月は2位、6月は1位を獲得し、夏モデルのなかではダントツの売れ行きだ。

auは、前月は5位だった「iPhone 5c」が2位に、8位だった「Xperia ZL2 SOL25」が「GRATINA」と並んで3位に浮上し、狭額縁デザイン「EDGEST(エッジスト)」を採用した6月13日発売の「AQUOS SERIE SHL25」が8位にランクインした。ソフトバンクモバイルは、前月と順位はほとんど同じ。ただし、「iPhone 5c」の販売台数が増えたことで、5月にいったん5割を切った携帯電話全体の販売台数に占めるiPhoneの割合(iPhone率)は、再び6割近くに上昇した。

●衝撃のiPhone日本上陸から6年 3キャリアに広がったアップル製品

国内初代モデル「iPhone 3G」からiPhoneを取り扱っているソフトバンクモバイルは、3キャリアのなかで最もiPhone率が高く、「iPhoneに依存している」という厳しい見方もある。これに対して最後発のドコモは、Android搭載スマートフォンのラインアップが豊富で、他社よりiPhone率は低い。直近の5月、6月は約2割にとどまっている。そのドコモは、6月から、iPhoneに続いてiPad Wi-Fi + Cellularモデルの取扱いを開始した。iPadの主力はWi-Fiモデルなので、販売面でのドコモ参入の影響は小さいと思われるが、主要3キャリアのショップにiPhone/iPadが並ぶ光景には感慨を覚える。この6年間、じわりじわりと浸透し続け、もはやアップル製品抜きには携帯電話市場は成り立たなくなった。

前述の通り、最新機種「iPhone 5s」は、まだ前機種「iPhone 5」の累計販売台数に達していない。昨年と一昨年は、発売から8か月程度が経過した時点で、当時の最新機種が「日本で一番売れたスマートフォン」の座を手にしていた(詳しくは<日本で最も売れたスマートフォンは「iPhone 5」 歴代最速の販売ペース><「iPhone 4S」が「日本で一番売れたスマートフォン」に、発売から約8か月で>を参照)。しかし、現時点での差とモデルチェンジの時期を考えると、最終的に追い抜く可能性は高そうな感触だ。

次期iPhoneでは、特別な配慮が図られない限り、購入時に、おそらく従来プランから新料金プランに切り替えざるを得ないだろう。賛否の分かれる各キャリアの新料金プランに対する評価は、モデルチェンジのたびにヒットしてきたiPhoneの売れ行きにも影響を及ぼすことになりそうだ。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベース(パソコンの場合)で、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。