鈍化するスマートフォンの売れ行き、競争軸は端末からネットワーク・サービスへ

2014.8.8 18:46配信

これまで何度かお伝えしている通り、家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、スマートフォンの月間販売台数は、過去最高の水準を記録した今年3月を境に急落している。4~6月は前年度を下回り、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイルの主要3キャリアが揃って国内音声通話定額サービスを開始した7月も、前年同月比83.5%と低調に終わった。2月下旬から3月末にかけての駆込み購入の反動が大きかった4月に比べると、6~7月はだいぶ持ち直したが、スマートフォンの販売が鈍化しているのは間違いない。

従来型携帯電話に至っては、すでに3年以上も前年割れが続いている。ただ、ここにきて、ようやく下げ止まり感が出てきた。根強いニーズに加え、スマートフォンより毎月の通信料金を抑えられる料金体系(既存プラン)や、基本使用料だけで、回数や時間の制限なく国内音声通話が利用できる新料金プランが支持されているようだ。

ここ数年、各社が年間で最も力を入れる時期は、iPhoneのモデルチェンジにあわせた秋から冬にかけて。販売台数は、学生の買替え・新規契約が増える3月が最も多い。こうした商戦期の変化の影響もあって、従来型携帯電話を含めた携帯電話全体の7月の月間販売台数は、過去3年間で最も少なかった。スマートフォンに限っても過去3年間で最も少なく、3年前の約8割にとどまる。今年4月以降のスマートフォンの販売不振は、キャッシュバック施策の終了や消費増税といった外部的な要因に加え、「iPhone 4」の発売後、本格的に人気が火がつき、急ピッチで進んでいたスマートフォンの普及が一段落した現れといえるだろう。

●「iPhone 5s」のトップは変わらず シェアは2割前後まで低下

2014年7月の携帯電話の販売台数1位は、前月同様、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5s」だった。au、ドコモの「iPhone 5s」に続き、4位にはソフトバンクモバイルの「iPhone 5c」がつけ、Android搭載スマートフォンは、5位に入ったドコモの「Xperia Z2 SO-03F」が最上位だった。

キャリアを区別せずに集計すると、1位は「iPhone 5s」(19.3%)、2位は「iPhone 5c」(9.3%)、3位は「Xperia Z2 SO-03F」(4.1%)となり、1位と2位、2位と3位の差はだいぶ開いている。「iPhone 5s」の人気は根強く、春までのように、1台あたり3~5万円といった高額キャッシュバックがつかなくなってもトップの座を守っているが、シェアは、2~3月の40%台から低下した。販売台数の減少に伴って、ここ3か月はシェアは2割前後にとどまっている。例年とは異なって、今年は発売以来ずっと在庫過剰感のある「iPhone 5c」しか、モデルチェンジに伴う安売りの対象にならないかもしれない。

●3キャリアとも1・2位は前月と同じ auは「Xperia ZL2」が伸びる

続いて主要3キャリアについて、キャリアごとのトップ10をみていこう。ドコモは、他の2キャリアに比べ、iPhoneの割合が低く、しかも人気は「iPhone 5s」に偏っている。1位は前月同様「iPhone 5s」で、2位には夏モデルの「Xperia Z2 SO-03F」が入った。3位以下には、最新の夏モデルのほか、「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」や「GALAXY Note 3 SC-01F」「GALAXY J SC-02F」など、値下げされた昨年秋発売の旧機種や、基本的な機能に絞ったシンプルケータイ「P-01F」が並ぶ。

auは、1位から3位までは前月と同じだが、3位の「Xperia ZL2 SOL25」のシェアは前月より2ポイントアップし、2ケタに乗った。夏モデルから採用した新しい通信技術「キャリアアグリゲーション」と、「WiMAX 2+」に対応した最新機種にもかかわらず、新規契約・MNP向けに早くも値下げされ、前月に比べて販売台数が増加したからだ。ソフトバンクモバイルは、トップ10のうち、4・7・10位以外は、前月とまったく同じで、1位の「iPhone 5s」と2位の「iPhone 5c」だけで約5割を占める。

●SIMロックの解除が義務化!? わかりにくい料金や販売方法に見直しの動き

「国内音声通話定額」を打ち出した各社の新料金プランをきっかけに、携帯電話の通信料金や販売方法を見直す動きが強まっている。総務省は、7月、「SIMロック解除の義務化」や「クーリングオフ制度の導入」の方針を打ち出した。8月に取りまとめられた中間整理案でも、同様の方針が確認された。まだ正式決定ではないが、実施されると、現在の販売方法は否応なく変わることになる。今ですら高額と感じる人が多い端末の価格がさらに上昇する可能性も危惧される。

こうした一連の報道を受け、通称「格安SIM」と呼ばれるMVNO(仮想移動体通信事業者)が提供する割安な通信サービスや、この「格安SIM」と安価なSIMロックフリーのAndroid搭載スマートフォンをセットにした「格安スマートフォン」がにわかに注目を集めている。MVNO事業者は、アーリーアダプタや主要キャリアの新料金プランに不満を持つ層を取り込もうと、音声通話つきプランの追加や料金値下げ、スマートフォンとのセット販売などを行い、MVNO間の競争も激しくなっている。

また、8月1日には、旧イー・アクセス(イー・モバイル)とPHSの旧ウィルコムが合併して誕生した新会社、ワイモバイルによる新ブランド「Y!mobile」がスタートした。「STREAM S 302HW」など、スマートフォン向けの新料金プラン「スマホプラン」は、通話時間や回数の制限がある「国内音声通話定額」と「データ通信」をセットにしたパックで、主要3キャリアの新料金プランやMVNOの各プランよりシンプルでわかりやすい。第4のキャリアとして、7月の時点では3%にも満たないシェアをどこまで拡大するのか、今後に注目したい。

ドコモは、6月24日、LTEネットワークを利用した「VoLTE(ボルテ)」による通話サービスをいち早く開始し、VoLTE対応機種同士ではより高音質で通話できるようにした。対応機種が増えると、大きなアドバンテージになるだろう。auは、5月に開始した新サービス「au WALLET」が好評で、申込みは順調に増えているという。「安さ」を最大のウリにするMVNOサービスが注目を集めるなかで、同じiPhoneを取り扱う3キャリアの競争軸は、端末からネットワーク・サービスへ切り替わりつつある。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベース(パソコンの場合)で、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。

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