昨年末は、多くのAndroid搭載スマートフォンの新製品が登場した。なかでも、NTTドコモ(ドコモ)の「AQUOS PHONE SH-01D」「ARROWS X LTE F-05D」と「GALAXY S II LTE SC-03D」、auの「ARROWS Z ISW11F」は、大いに売れた。「GALAXY S II LTE」以外は、国内メーカーが開発し、ワンセグやおサイフケータイなど、従来の携帯電話と同様の機能を搭載する日本仕様のスマートフォンだ。これらは、海外メーカー製のグローバルモデルと区別するために、一部では「ガラスマ」とも呼ばれている。「iPhone 4S」の好調な売れ行きも加わり、量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、2011年12月の月間携帯電話販売台数に占めるスマートフォンの割合は、過去最高だった2011年10月を7ポイント上回る77.0%に達した。新規購入に限ると、もはやほとんどがスマートフォンだ。

●ドコモのAndroid搭載機がスマートフォンの過半数を占める

スマートフォンの販売比率が8割近くまで上昇した要因は、ドコモとauのスマートフォンの販売台数が、前月に比べて大幅に増加したことにある。従来型携帯電話(フィーチャーフォン)の販売台数は前月比115.8%の微増にとどまったが、スマートフォンは187.1%と大幅に伸び、特にドコモは302.6%と、直前の11月の3倍に膨らんだ。その結果、スマートフォンに限った2011年12月のキャリア別販売台数シェアは、ドコモがほぼ過半数の51.7%を占め、9月以来、久しぶりにトップに立った。どうやら既存のドコモユーザーが、新製品待ちの買い控えから一転、購入に動いたようだ。

iPhoneを含むスマートフォンの販売台数は、従来型の携帯電話がまだ全体の7割弱を占めていた2010年10月の3.5倍、日本での初代iPhoneである「iPhone 3G」が発売された2008年7月の10.8倍に拡大。集計開始以来、最大を記録した。

その一方で、国民生活センターによると、「修理に出しても不具合が続く」「すぐに電池がなくなる」などのクレームが増えているという(2011年12月1日公表『急増するスマートフォンのトラブル』)。昨年末には、iモードのメールアドレスをスマートフォンでも使い続けたいユーザーにとっては欠かせない「spモードメール」で、一部ユーザーのメールアドレスが別のユーザーのアドレスに置き換わってしまうというトラブルも発生した。今のところ、売れ行きに明確な影響は出ていないが、長期的な視点では、不具合を起こしたドコモや、スマートフォンそのものに対する不信感が増す恐れがある。

●予想外の人気!? 月間1位はドコモの「AQUOS PHONE SH-01D」

前置きが長くなってしまったが、2011年12月の機種別の月間ランキングをみていこう。量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、SIMフリー端末を含む携帯電話全体の12月の販売台数1位は、シェア8.9%で、ドコモのシャープ製Android搭載スマートフォン「AQUOS PHONE SH-01D」だった。

現時点まで、発売日を含む2011年11月第4週(11月28日~12月4日)、12月第1週(12月5日~11日)、2012年1月第1週(1月2日~8日)、1月第2週(1月9日~15日)の4度にわたって1位を獲得。ドコモの2011-2012冬春モデルのなかで、いまのところ最も多く売れている。防水・防塵、デュアルコアCPU、有効約1210万画素のカメラなどの高いスペックと、ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信の定番3機能が入った安心感、バランスのよさが好評のようだ。

2位には、同じくドコモの富士通製のAndroid搭載スマートフォン「ARROWS X LTE F-05D」が入った。週間ランキングでは、2011年12月第3週(12月19日~25日)と12月第4週(12月26日~2012年1月1日)の2回、1位を獲得。特に12月第4週は、ソフトバンクモバイルの「iPhone 4S」の販売台数の合計を上回るほどの売れ行きだった。

学校や勤務先、よく出かけるスポットなどが、すでにドコモのLTEサービス「Xi(クロッシィ)」対応エリアになっており、データ通信の速度が速いほうがいいという人は、「ARROWS X LTE」などの「Xi」対応モデルを選んだほうが満足できるはず。同じ「ARROWS」ブランドで、LTEとは別方式の高速データ通信サービス「WiMAX」に対応するauの「ARROWS Z ISW11F」も、2011年12月第2週(12月12日~18日)の週間ランキングで1位を獲得し、月間でも5位につけている。

今後、ハイエンド機種を中心に、「Xi」や「WiMAX」などの高速データ通信対応モデルのラインアップが増えてくる。端末選びのポイントとして、デザインや基本性能だけではなく、後から追加できず、キャリアによる差が大きい「高速データ通信サービス」の対応の有無やその速度、対応エリアなども、購入前にチェックするようにしたい。

●実質1位はSB版「iPhone 4S」、シェアは2位と4.8ポイント差の13.7%

「BCNランキング」では、キャリア・容量ごとに「iPhone 4S」を6機種に分けて集計しているが、ここからは、「iPhone 4S/4」は、わかりやすくキャリアごとに容量を合算し、1機種としてカウントした順位をみていこう。

容量を合算したときの1位は、ソフトバンクモバイル(SB)の「iPhone 4S」。販売台数シェアは、2位の「AQUOS PHONE SH-01D」を4.8ポイント上回る13.7%だった。一方、auの「iPhone 4S」は、「AQUOS PHONE SH-01D」「ARROWS X LTE F-05D」に続く4位にとどまった。SB版、au版を合算すると「iPhone 4S」の販売台数シェアは19.9%。SB版、au版ともに、前月より販売台数は増えたものの、シェアは9.1ポイント下がった。ただし、スマートフォンの販売比率が急上昇した2010年12月の「iPhone 4」のシェアより、2011年12月の「iPhone 4S」のシェアのほうが若干高く、販売台数もかなり多い。直近のランキングの順位だけを見て、「iPhone失速」と判断するのは早計だろう。

●auは引き続き「iPhone 4S」が1位、“全部入り”の「ARROWS Z」も2位につける

続いて、主要3キャリア、ドコモ・KDDI(au)・ソフトバンクモバイルの12月のキャリア別月間トップ10を紹介しよう。ドコモは8位の「P-07B」以外はすべてスマートフォンで、発売されたばかりの最新モデルがほとんどを占めた。

auは2010年10月、11月に続き、「iPhone 4S」がトップ。しかし、シェアは月を追うごとに下がっており、「選べるラインアップの一つ」のポジションに落ちつきつつある。一方、ソフトバンクモバイルは、「iPhone 4S」が1位という点はauと同じだが、そのシェアは66.0%と非常に高く、iPhoneに偏った販売状況になっている。キャリア別に「iPhone 4S」の累計販売台数シェアを集計するとほぼ6対4で、auを上回っているとはいえ、その差はもっと広げたいところだろう。

KDDIは、1月16日、ブランドロゴの変更や、FTTHなどの指定の固定通信サービスと組み合わせると利用料金を割り引く「auスマートバリュー」などの新しいサービス・キャンペーンを一挙に発表した。「マルチデバイス」「マルチネットワーク」「マルチユース」の三つの頭文字から取った「3M戦略」を掲げるKDDIの発表を受け、ドコモやソフトバンクモバイルも新たな策を打ち出してくるはず。また、今年は、最初に買ったスマートフォンから別のスマートフォンへの買い替えの動きも出てくるだろう。目が離せない年になりそうだ。(BCN・嵯峨野 芙美)

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