映画『トラック野郎』のデコトラを装飾した店だった

「トラックショップなかむら」の中村社長
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「元々は、父が青木橋(神奈川区)で中古の車部品を扱う塚本屋中村商店という店をやっていたんですよ」と中村秀夫社長。

中村さんが店を手伝うようになったころ、車部品に加えトラックのアクセサリーも扱い始めたところ、それ目当てのお客さんが増えていった。

塚本屋中村商店はトラックアクセサリーショップとして日本の草分け的な存在となり、トラック運転手たちの口コミで徐々に人気が広がっていった。

そのうちテレビなどで「派手に飾られたトラック」が紹介されるようになる。そこからヒントを得て制作された映画『トラック野郎』が大ヒット。デコレーションされたトラックは、「デコトラ」と呼ばれ、幅広い世代に知られるようになっていく。

 
現在のデコトラ。これでも当時に比べるとかなり控えめ(写真提供:トラックショップなかむら)
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『トラック野郎』の目玉であるデコトラの装飾を行ったのが塚本屋中村商店。

「3作目くらいまでの装飾をウチでやったんだよ」と、中村さんが1枚の写真を見せてくれた。

 
『トラック野郎』シリーズの鈴木監督たちが現在の店舗を訪れたときのもの(写真提供:トラックショップなかむら)
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写真は右から、鈴木監督、映画『トラック野郎』の研究をされている桜美林大学の小川准教授、星桃次郎のモデルとなった高田氏、中村さん、そして、映画に出演協力した「哥麿会(うたまろかい)」の会長でトラック野郎のカリスマ的存在である宮崎氏。

映画のヒットがデコトラ人気に拍車をかけ、デコトラ文化は日本を席巻し、高速道路を走ればきらびやかなトラックばかり。デコトラ人気は小中学生にも及び、デコトラ模型やラジコンが発売されるだけではなく、自転車をデコレーションしたデコチャリまで登場し、社会現象ともいえるほどだった。

しかし、その後、映画シリーズが終了してデコトラ人気がひと段落すると、今度はデコトラでの運送や納品に難色を示す取引先が増えるなどし、派手なデコトラは徐々に姿を消していく。

現在お店によく訪れるお客様のトラック。デコレーションはほとんどない(写真提供:トラックショップなかむら)
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中村さんが現在の場所にトラックアクセサリー専門の「トラックショップなかむら」をオープンしたのは、1989(平成元)年。みなとみらい21地区の再開発を機会に店舗を移した。

「今では時代に逆行しているお店かもしれないね。でもドライバーさんは車の中で過ごす時間がすごく長いから、自分好みの内装にすることでリラックスして楽しく仕事をしたいという方が多いんだよ。だから、内装に凝る方は多い。そういう方がいる限り、求められるものを提供していくのがこのお店の役割なんだと思ってやっている」

そう中村さんが言う通り、店の中にはデコトラをイメージさせるド派手な外装品は少ない。

内装パーツが多い店内
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軽トラのデコトラ。現在ではイベント用の趣味の世界になっている(写真提供:トラックショップなかむら)
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現在もデコトラ専門の雑誌が2誌あり、デコトライベントが行われるときらびやかなトラックが集まるが、お店のお客さんの大多数は外側から見えない内装に凝って楽しんでいる。派手なデコトラは営業用ではなく、ほぼ完全に趣味の世界になっているそう。