気がつけばもうすぐクリスマス。外はすっかり寒くなり、何かと人恋しい季節になりました。今回はそんなさむ~い冬にこそぜひ読んで頂きたい、おススメの「恋愛小説」をご紹介します。

まるでうさぎのようにラブラブすぎるカップルの話から、片思い、禁断の愛、同性愛、究極の愛が描かれているものまで個性あふれる恋愛小説を4つ、選んでみました。

カタチにとらわれず、全力で愛し、愛される登場人物たちに、あなたもきっと勇気をもらえるはず! それではどうぞ、お楽しみください。

 

「依存」は本当に悪いこと?旅とお酒と音楽好き必見!

『月光町ブルース』(武田久生/リトル・ガリヴァー社)

皆さん、旅やお酒や音楽は好きですか?
最初にご紹介したい小説は、本からとても濃い~お酒や煙草の匂いが漂ってきそうな、期待の新人作家である武田久生さん作の『月光町ブルース』という小説です。武田さんは20代前半から東南アジア・南アジアを中心に十数か国を放浪されたそうで、旅人の描写はとてもリアルで、身に迫るようなものがあります!

本書『月光町ブルース』は「月光町ブルース」と「ホラ吹き松吉」の2作が収録されています。

「月光町ブルース」は、お酒と煙草が大好きなストリートミュージシャンの「プロ」が、心臓疾患を持つ少女の、ある約束を叶えてあげるために奔走するストーリーです。二人が音楽を通して交流し、命がけでライブを楽しむ様子は、一度読むと忘れることができません。

また「ホラ吹き松吉」は、人が当たり前に信じている価値観を、根底からグラグラと揺らしてくる、ちょっと不安になるお話です(笑)。人の心が読める、不思議な力を持った「松吉」は、色々な国を旅している間、とても奇妙な体験をたくさん体験するのですが、それを俗世間に戻ってきてから周囲の人々に話すと、皆は松吉を恐れ、徐々に彼から距離を置いて行きます……。やがて「ホラ吹き松吉」と呼ばれるようになった彼は、人里離れた山の中で、自給自足の生活を始めるのですが……!?というストーリーです。

このお話に出てくる人々は、例えば多重人格の青年も、塾を抜け出して「松吉」に会いに行く少年も、皆が皆、素敵な所も、そしてものすごく弱い部分も持っていました。ですが、登場人物たちは良くも悪くも、自分なりにこの世の中での「生き方」をちゃんと確立していた所がとても印象的でした。
「俺は夜の側の人間だ」「人間、何かに依存しないと生きていけないというのも事実なんだ」
こんなセリフを言う人物が出てくるのですが。
私は「あぁ、そうだよなあ……ちゃんと社会に溶け込んで、まっとうに生きているように見える人たちだって、誰だってやっかいな問題を抱えていて、良くも悪くも自分なりの生き方や、息の抜き方を確立して、ようやく生きているんだよなあ……」と考えさせられました。

私は「依存」はあまり良くないことだと信じていたのですが、誰かを傷つけたりしなければ、自分なりの生き方やずるさを身につけることは、そんなに悪いことでもないでしょう! と感じることができた素敵な一冊でした。

最後に、筆者の武田さんからのメッセージを紹介します。
「『月光町ブルース』の作者、武田久生です。「月光町ブルース」は、「プロ」と少女の切ない恋物語を一つのテイストとして推し出した作品です。稚拙なところも多いかもしれませんが、並録作品の「ホラ吹き松吉」と共に楽しんで頂ければ、作者冥利に尽きます。どうぞよろしくお願い致します。」

繰り返される日常から少し距離を起きたくなった時、そして生きることが辛くなったとき、新たな道を考えるきっかけになるお話しだと思います。とてもおススメです!ぜひ、読んでみてくださいね。